2016年5月30日

“走る“フリーライター・三河の本棚:vol.5『BEYOND TRAIL』

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ランニング業界の中でも、熱烈なファンを持つ『トレイルランニング』(以下、トレラン)。UTMFやハセツネCUPなどの有名大会をはじめ、毎年各地でトレラン大会が開催されています。トレランといえば、美しい景色や澄んだ空気など、雄大な自然との触れ合いが楽しみの1つでしょう。

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今回ご紹介する1冊は、そんなトレランの世界が凝縮された『BEYOND TRAIL』。11名の写真家によって制作されたという、非常に珍しい写真集です。しかし実はこの写真集、あるトレイルランナーに向けた多くの人々の“思い”が詰まっています。

トレイルランナー・相馬剛氏を

本著を販売しているのは、富士山周辺のアウトドアガイドを行う『Fuji Trailhead』。そしてその代表を務めるのは、トレイルランナーの相馬剛氏です。黎明期からトレランに取り組み、ハセツネCUPでの優勝など素晴らしい経歴を持つ相馬氏。周囲からの人望も厚く、2014年に『Fuji Trailhead』をスタートしたと言います。

しかし相馬氏は、同年にマッターホルンへ入山後、その消息を絶ってしまったのです。現在も捜索が継続されており、本著の販売収益については、相馬氏を含む山岳遭難の捜索活動に向けて関係団体へ寄付されます。写真集として非常に素晴らしい1冊ですが、ぜひ、まずはその背景を知ってページをめくってみてください。そこには制作に手を挙げた写真家の方々はもちろん、相馬氏と親しいトレイルランナーの強い思いが感じられるはずです。

美しい写真からトレランの全てを感じ取る

本著は相馬氏やその出場大会、そしてその他トレイルランナーの姿を写真におさめたもの。そびえ立つ山々や緑に溢れた山道、切り立った岩場など、圧倒されるような景色が広がっています。さらに大会のスタートやゴールシーンなどは、その状況をイメージして鳥肌が立つほど。トレランに取り組むからこそ感じられる楽しさ、達成感、そして苛酷さといったものが、写真を通じて感じ取れることでしょう。

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トレイルランナーであれば、思わず走り出したくなってくるかもしれません。それ以外の方でも、地球あるいは自然の雄大さに心打たれ、

「行ってみたい」

「走ってみたい」

という気持ちが湧き上がってくるのではないでしょうか。そんなトレランの世界を作り上げてきた歴史を、写真集として完成させたのが、この『BEYOND TRAIL』です。

トレイルランナーからのメッセージ

写真集では、13名のトレイルランナーの写真も掲載されています。そして写真と共に添えられているのが、トレイルランナー、そして相馬氏に向けた各人からのメッセージです。

トレイルランナーへ向けたメッセージからは、それぞれが感じているトレランの楽しさや魅力を感じ取れるでしょう。「トレラン、いつかは挑戦してみたいな」なんて思っている方ならば、その背中をそっと優しく押してくれるかもしれません。そして相馬氏へ向けたメッセージからは、いかに相馬氏が周囲から愛されていたのかが分かります。

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私はロードレースが中心ながら、トレラン大会にも出走することがあります。トレランにはロードとは違った楽しさがあるのは間違いありません。どんなに苦しくても、ふと顔を上げて自然に目を向けると、スッと疲れが吹き飛ぶ…なんて体験も。美しい景色に出会ったときは、

「いつまでも、ここに居続けたい」

と思うことさえあるものです。しかし同時に、環境ゆえの苛酷さや危険もあります。この『BEYOND TRAIL』は相馬氏へ向けた1冊でありながら、そうした苛酷さを含むトレランの“すべて”を、全トレイルランナーに伝えようとしているのではないでしょうか。

トレランという世界、そしてその歴史に触れたいという方は、ぜひ本著を手にとってみてください。ページを開くたび、きっと何かを感じ取れるはずです。

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三河賢文が執筆した記事

Runtrip via Hakubavalley

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