50歳ランナーがマンモス・レイクスで高地トレーニングをした結果
Sep 03, 2019 / COLUMN
Sep 03, 2019 Updated
そのようなわけで、この合宿に来るのは3回目、フルで参加するのは2回目となった。高地で走るペースも大体つかめるようになった。要はいつもよりペースを抑えたらいいのだ。きつくなることに変わりはないけど、それがどれだけきつくなるかが分かってさえいれば、少なくともパニックに陥ることはない。競争をする選手たちはそうはいかないだろうが、ぼくのようにただ完走を目指すだけのランナーは、ただひたすら自分のペースを守ればよい。
そのおかげで、今年は毎朝走る10~20キロを、途中で止まらずに走れた。もちろん、トップ選手たちには遠く及ばないが、一番遅い新入生となら良い勝負になることもあった。コーチがふざけて『The Most Improved Runner』(もっとも成長したランナー)とぼくを呼んだくらいだ。
昨年は、午後の山歩きを2回ほど参加しなかった。朝のランで疲れ果てて、どうしても体が動かなかったのだ。今年は、すべてに参加できるだけの余裕もあった。少しは体も慣れてきたのだろう。そして嬉しいことに、今年のマンモス・レイクスは今までで一番美しかった。
ここには、カリフォルニアでも最大規模のスキー場がある。今年の冬は記録的とも言われるほどに積雪量が多く、ぼくらが合宿に行くたった1週間前の7月28日(!)までゲレンデのリフトが営業していた。遠くに万年雪が見える風景はマンモス・レイクスではお馴染みなのだが、今年はキャンプ場から1時間ほど歩いただけで、その万年雪で雪合戦をして遊べるくらいに残っていた。滝の水量も昨年に比べてはるかに多い。
湖や川も雪解け水が流れ込み、足を漬けると痛いぐらいに冷たい。アイシングには格好ではあるのだけど、ぼくなどは1分も水の中にはいられない。それなのに、次々と高い岩から湖に飛び込んではしゃぐ高校生ランナーたち。どうかしているのではないか。
風景が美しいだけではなく、今年は野生動物に遭遇する機会も多かった。雪が多いと、動物たちもエサが見つけにくいのだろうか。鹿を毎日のように見かけるのはよいとして、キャンプ場にはクマまでやってくる。昨年は1回しか見なかったが、今年はほぼ毎晩だ。1度などはクマがクーラーボックスを開けて、中に入っていたプロテイン・バーの包みを破いて、食べているところにまで出くわした。こうなると、まるで放し飼いのペットのようだが、やはりクマはクマなので、近くで見るとやはりそれなりにびびる。
キャンプ場では携帯電話の電波がほぼ届かない。勿論テレビもない。高校生ランナーたちは1つのテントに5,6人が押し込まれ、食事は慣れない野外料理を自分たちで作る。量はともかく、控えめに表現しても、ろくなモノは食べていない。有料シャワーは一応あるけど、せいぜい2日に1回がいいところで、毎日入る子はいない。走るだけでも過酷なうえに、こうしたキャンプ生活には、やはり馴染める子とそうでない子がいる。息子は幸い、馴染むどころか大好きな方だ。ぼくもそうだ。夢のように楽しい1週間だったが、息子は今年で高校3年生。この合宿に来るのもこれが最後だ。来年からは何を1年間の目標にするべきか、ぼくは今決めかねているところだ。