50歳ランナーがマンモス・レイクスで高地トレーニングをした結果

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選手たちは毎回の練習が競争だ。スタートも真剣。

息子が初めてこの合宿に参加した2年前に、ぼくも初めてこのマンモス・レイクスを訪れた。と言っても、昨年や今年のように7日間フル参加したわけではない。クロスカントリー走部の合宿というものがどんな様子か興味があったので、1泊だけして、翌朝のランにも参加させてもらったのだ。

そのときのぼくは、高地で走るということがどんなことかよくわかっていなかった。もちろん、酸素が薄いと呼吸が苦しくなるというぐらいの一般知識はあったけど、それを実際に経験したことはなかった。物事を深く考えないで、何とかなるだろうと高をくくって痛い目にあうのは、子供の頃から変わらないぼくの悪い癖だ。そしてそのフィジカルな痛みがないと知識が身につかない。つまりは馬鹿だ。

その日のメニューは、15キロぐらいのトレイル・ランだった。ぼくはそれまでにフルマラソンを何回も走っているし、100キロのウルトラマラソンだって完走したことがある。いくら酸素が薄くたって、15キロぐらいは何でもない。そう思った。

スタートの前にコーチがこの馬鹿を心配して、わざわざ「大丈夫? 無理しないで半分ぐらいの距離にしたら」と言いに来てくれた。馬鹿は馬鹿なりに気を使って、「大丈夫、大丈夫。遅れるかもしれないけど、気にしないで選手たちを見ていて」と答えた。

スタートしてたったの500メートルぐらいで息が上がって、それ以上走れなくなってしまった。ジョギングくらいのペースで走っているのに、まるで100メートル走をしたみたいに、呼吸が苦しくなるのだ。こんなはずはないと思って走り続けようとすると、今度は脚がまるでマラソン30キロ付近のように重くなってくる。思わず膝に手をついて立ち止まってしまった。

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快走するトップランナーたち。中央が息子だ。

選手たちの姿は、とっくに見えなくなっていた。仕方がなく、とぼとぼ歩いていると、前方に先回りをしたコーチが待っていた。こうなることは予想していたのだろう。そこからは、歩いたり走ったりの繰り返しだ。コーチが教えてくれたショートカットしたコースを通り、約半分の距離をなんとか終わらせたときには、選手たちは既にクールダウンも済ませていた。

後から知ったのだけど、低酸素に適応するまでの時間には個人差があるものの大抵は3~4日ぐらいはかかるらしい。だから合宿の前半はペースを意識して落とし、徐々に距離とペースを上げていく。それでも低地と同じペースでは走れない。その日は5日目だったから、選手たちは既に高地順応がかなり進んでいた。着いた翌日にいきなり走ろうとした馬鹿がついて行けるはずはなかったのだ。

それにしても情けなかった。体力だけは自信があったのに、なんという様だろう。これでは何の取柄もない、ただのイケメンではないか。来年こそはちゃんと準備をして、彼らと同じ距離を走ってやろう。それが2年前にぼくが決心したことだ。

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