新発見! 抗酸化だけではない?ランナーの誰もが喜ぶ「アサイー」の隠れた秘密

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ブラジルのアマゾンを原産とし、スーパーフードとして名高い『アサイー』。アサイーは赤道直下の過酷な環境下を生き抜くために、他の植物とは全く異なる力を秘め、それが私たちの貴重な栄養源となってきました。ここ数年、健康志向の方を中心にブームを巻き起こしていましたが、最近はその面影が薄れてきつつあります。

先日、ブラジル大使館にて『アサイーの機能性発表会』(株式会社フルッタフルッタ 主催)が行われました。そこで明らかにされた『アサイー』の新たな秘密 をお伝えします。

ブームが去ってもアスリートは飲んでいた

アサイーについて、どのようなイメージを持っていますか? アサイーボウルなど、インスタ映えする食べ物として脚光を浴びていました。しかし、ブームには廃りが来るもので、最近は目にする機会が減っているように思えます。

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株式会社フルッタフルッタ 代表取締役 社長執行役員/ CEO長澤 誠氏

今回、発表会を開いた『フルッタフルッタ』はアサイーを日本で初めて取り扱い、販売を始めた “パイオニア” 。「ブームのころに比べると売り上げは1/3までに減少した」と、社長の長澤氏は言います。しかし、今もアサイーを愛食し続けている人たちがいるのです。 それは、“アスリート”。

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スポーツ栄養アドバイザー 石川 三知氏

アサイーとアスリートを結び付けた仲人は、スポーツ栄養アドバイザーの石川三知さん。石川さんは山梨学院大学の陸上競技部(短距離・フィールドブロック)をサポートし、その中でアサイーを活用するようになったと言います。

石川さんは「食事で貧血の改善が見られなかった選手の症状が良好になってきた」「栄養成分では説明しがたい効能があるのでは?」と、サポートしていたアスリートの反応で、アサイーの魅力を実感したそう。

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帝京大学ラグビー部 監督 岩出 雅之氏

アサイーを取り入れるアスリートは、大学ラグビー界のトップに君臨する帝京大学にもいました。今でこそ、帝京大学は大学ラグビーの王者と言われる大学に成長しましたが、数年前までは優勝経験のない大学でした。その頃から指揮を執っていたのは、岩出監督でした。2008年、チーム内の血液検査で『貧血』の選手がいることが明らかになったのをきっかけに、栄養改善の一環でアサイーを摂取するようになったそう。
「アサイーで、レギュラー選手の貧血症状が改善し、その年の帝京大学リーグ初優勝にも貢献した」と岩出監督は話します。今では、選手の間で「プロテインは飲まなくてもアサイードリンクだけは飲む」というアサイー争奪戦がグラウンド外でも繰り広げられているようです。

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レーシングドライバー選手 横溝直輝氏

レーシングドライバーの横溝直輝選手は、チームメイトのブラジル人選手が “謎の紫色パウダー” を飲んでいると聞き、それがアサイーだと知ったそうです。横溝選手はアサイーを取り扱うフルッタフルッタに直接連絡し、アサイーを摂取し始めた1人。

レーシングドライバーは、スタート直前の心拍数が、ほぼ最大心拍数に値する200bpmまで上昇し、1時間のレース中は平均でも150bpmを越えるため、ハーフ~フルマラソンに相当する負荷がかかるそう。レーシングカーは、高速でカーブを曲がるため、とてつもないG(重量)がかかり、その重さは最大3.5Gに上ることも。また、車内の温度は70~80℃の“サウナ状態”になるため、レース後は体重が5㎏も減少することもあるようです。大量の発汗により血液量が減少する(血液が濃くなる)と循環不良になり、心拍数を上げて無理やり血液を送るようになります。血液がうまく循環しないため、酸欠状態、つまり一過性の貧血に陥ることになるのだそうです。

レースを終えて、脱水状態の横溝選手。「表彰台で立っていられないほどの貧血になる。そのようなときにアサイーを摂取することで、アサイーの秘めたる力を体感してきた」と話していたのが印象的でした。

Let’s Check  貧血とは?

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ブームが始まる前から今日まで、アサイーは貧血に悩むアスリートの間で長く愛されてきました。ここで、貧血について簡単にチェックしておきましょう!

貧血の症状

・貧血とは、体の組織の酸素が足りていない状態
・症状は、めまいや吐き気など。ランナーの走力低下・伸び悩みの原因にも
・原因として考えられる要素
・鉄・エネルギーなどの材料不足
・赤血球が壊れる(溶血)
・出血(生理・腸・便などから)
・造血ホルモン(EPO:エリスロポエチン)の分泌不良
・ヘモグロビン値が男性で14g/㎗以下、女性で12g/㎗以下になると、深刻な鉄欠乏性貧血
・治療には3~6ヵ月もの期間を要する

貧血はゆっくりと悪化の道をたどり、症状が顕著になる頃には深刻な状態になっていることがあります。未然に防ぐためにも、定期的に血液検査をして、チェックすることをオススメします。また、日頃から貧血予防に効果的な食材を摂取しているか。 是非、下記の記事を参考にしてみて下さい。

ブルーベリーとは似て非なるもの

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“抗酸化” “スーパーフード” としてのイメージが強い『アサイー』。果実の形はブルーベリーとよく似ていますが、似て非なるもの。まずは見た目。果肉となる部分は5%しかありません。また、栄養成分にも特徴があり、植物であるのに “良質な油” を多く含んでいます。オリーブオイルにも多く含まれるオレイン酸が脂質全体の61.2%と多く、n-6系不飽和脂肪酸で必須脂肪酸のリノール酸も10.6%と多く含まれています。

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そして、もう1つの違いが今回明らかになった “アサイーの秘密” 。

鉄分を多く含んでいるわけでもないし、非ヘム鉄なのに、なぜ貧血の改善が見られるのか?

アスリートをサポートしていた石川さんは、疑問に思っていたそう。フルッタフルッタの代表の長澤さんは、白澤抗加齢医学研究所所長の白澤卓二先生に問い合わせました。

秘密は赤血球を “作らせる” !

質問を受けた白澤先生は 、同僚だった清水先生と相談し、貧血が改善する『メカニズム』に着目して研究を始めました。

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国立長寿医療研究センター・老化ストレス応答研究プロジェクトチーム・プロジェクトリーダー 清水 孝彦氏

前述のように、貧血の原因の1つとして造血ホルモン(EPO)の分泌不良がある(=腎性貧血)。ヒトは酸欠の危機にさらされると、また酸欠を起こさないように、体を変化させるメカニズムがあります。血液をろ過して老廃物を排出したり、尿を作る機能を持つ腎臓には、酸欠状態を感知する“スイッチ”が存在します。その“スイッチ”がオンになると、EPOが分泌され、新たな赤血球が作られます。

このメカニズムに着目して研究(未発表データ)を進め、アサイーが赤血球を“作らせる”という機能を発見しましたアサイーは腎臓に「酸素が少ないよ!」というシグナルを届け、腎臓がそれに反応してEPOを分泌します。EPOは赤血球を作る骨(骨髄)に作用し、赤血球の増加が促され、貧血が改善していくというメカニズムです。

とはいえ、この研究は、まだマウス実験の段階。ヒトとマウスの造血メカニズムは同じとされていますが、ヒトへの臨床研究はまだ行われていません。例えば、トマトに含まれるリコぺンは何千もの論文があるのに、アサイーに関する論文数は7月30日時点で243本と、まだまだ研究は発展途上なのです。通常、研究のレベルは細胞→マウス→ヒト→研究の統合(レビュー)という段階を踏んで、ようやく “真の効果” が認められます。今回の発表データはマウスの研究になるため、今後はヒトを対象にして臨床研究を行い、更に効果の検証を進める必要があります。

現段階で “健常マウスでも造血反応がみられたことから『作り過ぎてしまうリスク』”  “ブラジル人と日本人との体質の違い” から、リスクも考えられると、清水先生は最後に付け加えました。

みんなで “ALL WIN” に

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「植物の“力”は計り知れない」

どんな食材でも、研究で分かっていることのほかに、未だ解明されていない “秘密” があるものだと思います。今回の発表で、アサイーは抗酸化だけでなく、造血についても効果が期待できることが見えてきました。どのように摂取すれば効果が期待できるのか、今後の研究結果を待つばかりです。

ブラジルでは、アグロフォレストリーと呼ばれる農法でアサイーを生産しています。アグロフォレストリーとは、アグリカルチャー(agriculture:農業)とフォレスト(forest:森林)を組み合わせた言葉。この農法によって、多様性に満ちた、持続可能な農業が可能になり、森の再生にもつながり、地球環境に良い影響を与えます。

アサイーを積極的に摂取することで健康になる私たち、アサイー生産で再生するブラジル、温暖化抑制になる地球、という “ALL WIN” の関係が生まれるのではないでしょうか

エシカル(ethical:倫理的、道徳的)な農業を通じて、アサイーは日本とブラジル、そして地球の橋渡しになります。そんなアサイーを日頃の果物のレパートリーの1つとして、加えてみてはいかがでしょうか。

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