設楽悠太が2時間07分50秒の大会新で優勝。2019ゴールドコーストマラソンレポート

海外マラソンと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、1番人気のあるホノルルマラソン。日本からの参加者が2番目に多いのは、同じくハワイのハパルアハーフ。その他にもベルリン、ロンドン、シカゴ、ニューヨーク、ボストンのシックスメジャーズ、近くて気軽に行ける韓国、台湾のレースなど、その好みは各々によって分かれるだろう。

そして、3番人気の座を争っているのは、2013年から始まったユナイテッド・グアムマラソン(旧グアムインターナショナルマラソン)と、今年で41回目のゴールドコーストマラソンである。どちらも1,000人ほどの日本人が参加する。今回は、ゴールドコーストマラソンの様子を探るべくオーストラリアへ。

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色彩の変化が楽めるアシックスハーフ

亜熱帯性気候のゴールドコーストは年間を通じて温暖で、毎年ゴールドコーストマラソンが開催される7月は冬季にあたる。レースが行われる朝方は10℃代前半とマラソンに最適な気候。日本が暑くなり始める7月初旬、時差1時間のゴールドコーストで記録を狙えるのは、日本人ランナーにとって嬉しい。

大会は2日間。7月6日の土曜日に5.7km、10km、ジュニアの部、翌日の日曜日にハーフとマラソンが開催された。同大会のメインスポンサーは、アシックス。エキスポでは、廃盤となったターサージールシリーズの後継モデル “ターサーエッジ” が販売されていた(日本での発売は8月上旬予定)。

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アシックスハーフはマラソンよりも参加者が多い

日曜日の最初のレースは、メインスポンサーの名を冠した “アシックスハーフ” で、9,837人がエントリーした。6,613人がエントリーしたマラソンよりも参加者が多い。レースは午前6時スタート。コースはスタートから10.5km北に上り、折り返して行きの道を南に下るシンプルなフラットコースだ。

コースの両端にある街の灯りが印象的な序盤に始まり、晴れていれば中盤から終盤にかけて鮮やかな朝焼けを見ながら走ることができる。今年はレース中に雨が降って雲に隠れてしまったが、それでも夜明けの街は色鮮やかで、多くのランナーにとって新鮮な景色である。

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フィニッシュ地点には、地元オーストラリアのジャック・ライナーが先頭でやってきた。今大会は日本の実業団選手や大学生も多数出場していたが、それらを退けて1:02:30で2連覇を達成。今年のロンドンマラソンで東京オリンピック参加標準記録(2:11:30)をクリアしているライナーは、虎視眈々と来年の8月に狙いを定めている。

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佐藤悠基(日清食品グループ)が1:02:36の2位、その3秒後に服部勇馬(トヨタ自動車)が1:02:39の3位でフィニッシュ。勝負には敗れたものの、両者ともに15km以降の大幅なペースアップに成功し、9月15日に行われるMGCに向けて視界良好。その他、MGC出場者では藤本拓(トヨタ自動車)が1:03:44の6位、福田穣(西鉄)が1:03:49の7位に入った。

雨と風の難しいコンディション

例年、ゴールドコーストマラソンは快適なコンディションで行われるが、この日は午前7時20分のマラソンスタート直前に豪雨がランナーを襲った。次第に雨は止んだものの湿度が上がり、始まった序盤。日本人選手では2012年から同大会8年連続出場の川内優輝と、前マラソン日本記録保持者の設楽悠太(Honda)が前に出た。

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次第に集団はばらけ始め、川内は後続の集団に下げ、設楽は先頭集団でレースを進める。後続の一般選手も続々とゴールドコーストの濡れた路面を駆け抜けた。

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現地では大会の前々日、前日と強風で、この日も少し弱くなったとはいえ南からの風が吹いていた。コースはスタートから16kmまで南下、そこで折り返してからは37kmまで北上し、最後の5kmは南下する42.195km。スタート〜16kmまで向かい風、16〜37kmが追い風、37km〜フィニッシュまでは向かい風というコンディションだった。

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32.5km地点。設楽の表情には余裕がある。

先頭集団は16kmで折り返してから追い風になってペースが上がり、次第に先頭集団は設楽を含む4人に絞られたが、ペーサーが安定したラップを刻んで30kmを1:30:12の2:06分台ペースで通過。その後もペーサーが走り続けるも先頭が頻繁に入れ替わり、それぞれ一歩も引かない状況となった。

設楽悠太が2:07:50の大会新で優勝

序盤こそ雨が降るシーンが見られたが、レースの終盤からは晴れ間が見られ、強い日差しとともに気温が上昇。加えて37kmからは向かい風が吹くなど、変動の激しい難しいコンディションが多くのランナーを苦しめた。37kmで折り返してから先頭の2人がペースを上げて、設楽は一時3位に落ちたが、リズムを大きく崩さなかった。

その数分後には再び先頭の2人に追いつき、3人の勝負に。そして、設楽はそのしなやかなフォームを維持し、2人を引き離していった。

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終盤に大きく崩れなかった設楽が、大会新記録となる2:07:50の好記録でマラソン初優勝。後続は、ケニアのバーナバス・キプタムが2:08:02の2位、ニュージーランドのゼーン・ロバートソンがニュージーランド新記録となる2:08:19で3位に入った。

設楽の記録は、これまでのオーストラリアのレースでの最速記録であったが、3位までの記録もこれまでの大会記録を上回るハイレベルなレースとなった。設楽は「良い練習ができていたので、その成果が出た。優勝できて自信になった」とレースを振り返り、MGCに向けてその順調ぶりをアピールした。

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アメリカの44歳バーナード・ラガト(写真左)は、全米マスターズ新記録(M40)の2:12:10で7位。フィニッシュ後は、息子と喜びを分かち合った。ラガトは2000年のシドニーオリンピックから5大会連続でオリンピック出場を果たしたレジェンド(メダルは2個獲得)。そして、6大会連続のオリンピックの舞台をマラソンで目指す。

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また、2013年のゴールドコーストマラソン覇者の川内は2:15:32の13位に終わったものの、90回目のサブ2:20で自身の持つサブ2:20達成回数の世界最高を更新した。

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そして、後続のランナーも続々とやってくる。フィニッシュエリアでは、歓喜とともにランナーを労う人々の姿が多く見られた。

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岡山県から初海外レースに臨んだ、岡山のランクルー “UDC” 代表の仲原佑樹さん(写真左)は、レースを振り返ってこう話す。

「時差は1時間で、7月でも涼しくて、初海外レースとして文句なしのレースでした。1番良かったのは、現地のオージーの方々の暖かい応援。後半の辛い場面で背中を押してくれました」

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真剣にレースに取り組む人や楽しく走る人、多くの沿道の声援、精力的な大会スタッフの姿などを見ることができ、日本人ランナーの間で年々この大会の人気が上がっている理由がわかったような気がした。そこにいる人々の熱意が良き大会を作り上げていくのだ。

“サーファーズパラダイスビーチ” でビーチラン

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後日、ゴールドコーストの滞在先からすぐのサーファーズパラダイスビーチでジョギングを楽しんだ。メインビーチ、ブロードビーチ、マーメイドビーチと1直線に続くビーチだ。多くの観光客も朝早くからビーチを散歩。そして、たくさんのカモメも一緒になって、ビーチの朝を共に過ごす。

こういった場面に遭遇するのも、旅先でのランニングの魅力の一つ。

文・写真:Sushiman Photography

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