食べるはトレーニング……DF長友選手専属シェフの「ランナー向け持久力につながる食生活」

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最近よく耳にする『食トレ』。アスリートの世界では、“食べることもトレーニング”という認識がすっかり浸透しているようだ。

長い距離を走るランナーにとっても、毎日の食事は重要だ。リカバリーを促し、エネルギーを高めてくれる食事を心がければ、走りも変わってくるだろう。

では、具体的にどんな食事を取ればいいのか?

2月9日、都内・千代田区で、サッカー日本代表・長友佑都選手(ガラタサライ)の専属シェフを務める加藤超也(たつや)氏が『ランナー向け持久力につながる食生活』をテーマに特別講義を行った。これは『#amex run for 東京マラソン2019』の第2弾として開催されたもの。第1弾記事はこちら

今回は、この特別講義の内容をお伝えしたい。

『ファットアダプテーション』の実践で、長友選手のケガが激減

加藤シェフが講義で最初に触れたのは、ともに取り組んで3年になる、長友選手との『食トレ』についてだった。

長友選手というと、体は大きくないものの強靭なフィジカルを持つ選手として知られている。それを支えているのが体幹トレーニングで、長友選手は本も出している。ケガには無縁のタフな印象があるが、実は加藤氏と出会うまでは、肉離れなど筋肉系のケガが少なくなかったという。「サッカー選手だから、ケガをするのは当たり前と思っていたようです」と加藤シェフは話す。

当時、長友選手は食生活に頓着していなかった。
「彼は甘いものが大好きで、あんパンやメロンパンをよく買いだめして食べていたそうです」

一方で、「次のカタールW杯に出場するため、選手寿命を延ばすため、ケガをしない体を作りたい」と考えていた。

加藤氏が、長友選手と縁ができたのはそんなとき。長友選手の専属シェフとなり、北里大学北里研究所病院・糖尿病センター長の山田悟先生に助言を仰ぎながら、食材から調味料までグラム単位で管理していく。

そして、実践したのが『ファットアダプテーション』という食事法だった。『ファットアダプテーション』とは、PFCバランスが『P』(タンパク質): 3、『F』(糖質): 3、『C』(脂質): 4の割合になるメニューを取り入れること。

糖質をエネルギーとするのが基本だが、「糖質はどれだけ摂取してもエネルギーになる量が決まっている」ことから、「糖質を消費した後に、イワシやサバ、マグロなどに含まれる良質な脂質を使ってエネルギーを補うことが大切」だという。

長友選手は、食事法を『ファットアダプテーション』にしてから、ほとんどケガをしなくなった。

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長友選手の専属シェフを務める加藤氏が特別講義を行った

ランナーにオススメなのは手軽に食べられる『魚定食』

長友選手が取り入れている『ファットアダプテーション』は、ランナーにとっても有効な食事法だという。

「長友選手は、これによって90分間走り切る体力が培われました。ランナーなら、フルマラソンを走り切る持久力を手に入れられると思います」

とはいえ、一般的なランナーがコンスタントに『ファットアダプテーション』を実践するのは、なかなか難しい。

そこで、加藤氏がランナーに勧めてくれたのは、『魚定食』だった。前述の通り、イワシやサバ、マグロといった魚には、良質な栄養素が豊富に含まれているからだ。おまけに、日本では手軽に食べられる。ベストは、加熱調理を行わない “生” の状態で食べること。長友選手は試合後、マグロの『鉄火丼』を食べて、身体のリカバリーをすることもあるとか。

「マグロの刺身なら、たいていのスーパーにありますし、鉄火巻きならコンビニでも売っているので、ランの後にすぐに食べることもできると思います」

運動後のリカバリーのためには、なるべく早く食べた方がいいそうで、できれば30分以内、遅くとも1時間以内に食事をするのが望ましい。

また、定食であれば、主菜を1品追加し、白米の量を少なめにすると『ファットアダプテーション』に。NGなのは、白米を大盛にしたり、何杯もおかわりをすること。「ドカ食いは禁物です。栄養として補給できる量は決まっているので、余分なものは体脂肪になってしまうのです」。

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参加者は熱心に加藤氏の講義に耳を傾けていた

講義の後には、加藤氏が作った特製スープの試食が行われた。参加者全員に振る舞われたのは、長友選手も好んで食べているという『鶏肉のトマトクリームポタージュ』と『エビとパプリカのポタージュスープ』の2品。いずれも『ファットアダプテーション』に基づいたものだ。レシピについては “マル秘” のようで明かされなかったが、鶏肉のトマトクリームポタージュは、グリルした鶏肉とヨーグルトを使っているのがポイント。このスープでタンパク質が30グラム(豚肉のロースなら100グラムに含まれる)摂れるそうだ。そして、パプリカは苦手という人でも、これなら食べられそうなエビとパプリカのポタージュスープ。エビの殻でダシをとっているのがポイントだという。

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講義の後には、加藤氏が作った特製スープが参加者全員に振る舞われた

筆者も賞味させてもらった。拙い『食レポ』で伝えるなら、2品ともコクがあり、素材の良さが凝縮されたような味。とても美味しく、お腹にたまった。

加藤氏によると、体を温めるという点においても、スープはランナーに適しているとのこと。ただ、スープにこだわる必要はなく「味噌汁でも、鳥団子を入れれば、タンパク質が摂れるでしょう」。

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長友選手も好んで食す『鶏肉のトマトクリームポタージュ』(左)と『エビとパプリカのポタージュスープ』(右)

質疑応答でも垣間見られたが、参加者は、食に対する意識が高いランナーが多かった。「加藤シェフの話はとても参考になりました」と言う森田裕子さんもその1人。
UTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン。走行距離169.4km 、累積標高差9,889mを制限時間46時間30分で走るトレイルランニングのレース)に出場したお兄さんの食のサポートを現地で行った経験があり、アスリートフードマイスターの資格を持つ。ふだんの食生活は和食中心で、栄養バランスを大事にしているそうだ。ランでのモットーは「ムリをしない」。「過度に走り込むと、その分リカバリーに時間を要すなど、デメリットが生じてしまうので」と話していた。

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特別講義の感想を話してくれた参加者の森田さん

加藤氏は特別講義の締めの言葉として「(講義を聴いたからといって)今の食生活を全部崩す必要はありません。長友選手のエッセンスを1パーセントでも2パーセントでも持ち帰ってもらえば」と伝えていた。この稿で『ファットアダプテーション』に興味を持たれたなら、まずは魚の摂取をこれまでより少し多くしてみてはいかがだろうか。

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