今シーズンでキャリアに区切り、ファラー選手がRuntripに語った今後の生活は
Oct 25, 2017 / MOTIVATION
Apr 26, 2019 Updated
10月6日、都内でのイベントの為に来日したモハメド(モー)・ファラー選手(英国)。日中は東洋大学陸上部のトレーニングに参加、夕方はメディア各社の取材、そしてイベントと、なだれ込むようなスケジュールを分単位でこなしていました。
勝ち続ける秘訣とは?
為末大氏がファシリテータを務め、モハメド(モー)・ファラー選手と設楽悠太選手のトークセッションが行われた『ナイキ BREAK THROUGH ラウンジ』の様子はこちらから。
2011年シーズンからトラック長距離種目において世界最強の名をほしいままにし、今年のロンドン世界陸上においても1万メートルを制覇。5千メートルはM・エドリス選手(エチオピア)に僅差の2位と敗れはしましたが、直後のダイヤモンドリーグ・チューリヒ大会では、同選手に同種目でしっかりと雪辱を果たしました。自身最後となる2017年のトラックレースシーズンを勝利と共に終え、来年のロンドンマラソンにフォーカスを合わせ、ロードレースという新たな旅路へと舵を切ります。
左胸にユニオン・ジャックが縫い付けられた、純白のナイキ製ジャージを身に纏い、各メディアの取材に対応していたファラー選手。多忙の合間を縫ってRuntripのインタビューにも応じて頂きました。
(聞き手・吉田直人)
——今まで、世界中のレースを転戦する間、街中を走ったりなどはされていましたか?
実は、あまりないんです……。素敵な観光名所に行けますけど、基本的には仕事(レース)が終わったら帰るだけ。自宅に戻って、家族に「何してきたの?」って言われても、「うーん、あまりできなかった……」とかそういうことばかりですね(苦笑)。でも、ランニングのキャリアが終わったら、家族と一緒にそういったこともしたいです。時にはゆっくりしたり。でも今でも、色々な人々と世界中に行って、地元のカルチャーを理解するのも楽しいことです。各地の食べ物も楽しめますしね。
——因みに、各国のスタジアムでレースに出場される中で、人々の声援も含めて、印象に残っている国や場所はありますか?
私はイギリス人なので、今年に関しては、やはり地元の世界陸上でメダルを獲るということを目標にやっていましたけれど、最後にチューリヒでのトラックレースがあり、そこで、もの凄い声援が私を後押ししてくれた。これにはとても驚きましたね。
——今はロンドンと米国のオレゴンを拠点とされているかと思います。ファラー選手のホームタウンに行くトリッパーが、ランニングをするとしたら、オススメのコースや特徴はありますか?
ロンドンに関して言えば、オックスフォードストリート、オックスフォードサーカス、テムズ川沿いは良いですね。それからタワーブリッジ。ロンドンマラソンのルートもとても良いと思います。あと、ハイド・パークからバッキンガム宮殿の辺りもキレイなスポットです。エリートランナーであれば、私はテディントンという場所が好きですね。確か以前、日本の五輪チームがその辺りに滞在して、トレーニングキャンプとして使っていた場所だと思います。私が通っていた大学も近いんですが、とても良いトレーニング場所ですよ!ロンドンの人々にはジョガーも多いですが、ランニングの環境としては素晴らしい街ですね(※)。
※テディントン:英国・ロンドン中心部から南西方面に位置する街。テムズ川上下流の分岐点にあたる。同街には英国発祥のランニングコミュニティ『Park Run』が最初に開催された公園『Bushy Park』もある。
※ファラー選手は2001年から、ナイキオレゴンプロジェクトに参加するまでの約10年間、テディントンにスポーツ施設を持つ『St Mary’s University, Twickenham』でトレーニングを積んでいた。
——改めてですが、今シーズンをもってトラックレースのキャリアに区切りをつけ、ロードレースに移行されると思います。キャリアチェンジの理由として、ご家族との時間を大切にされたいという話も伺っておりますが?
そうですね。子供が4人いて、凄く成長が早いので、やはりちゃんと守ってあげたいし、サポートしてあげたい。それは父親としての義務だと思うんです。トラックレースでは、良いレースもでき、これ以上にない結果を得られました。これからは遠征の回数も少なくなると思います。ハーフマラソンや、10キロ、5キロのロードレースにも出ますけれど、トラックよりは少なくなるのではないでしょうか。
——陸上にとどまらず、人生というものはしばしば〝旅〟に例えられることもあります。これからは新しい船出かと思いますが、どのような旅にしていきたいですか?
素敵な勲章もたくさん貰って、キラキラしたような旅にしたいですね。そうはいっても、何の保証もありませんし、やはり、来る日を1日ずつ楽しみながら過ごしていきたいです。苦難もあると思いますけれど、何よりも挑戦を楽しみたい。何かが起きたら起きたでしょうがない、とね。勿論、そんなに簡単に言えることでもありませんがね(笑)
——常に道を作り続けていきたい、と
そうですね。人間として、他の皆と同じように、どのような運命が私の人生を導いてくれるのか、楽しみにしています。
終始穏やかな声色ながらも、時にジェスチャーを交え、チャーミングな一面も見せながら、表情豊かに語ってくれました。
最後に、「ランニングに最適な気候」を聞くと……?
「Too Hot! 暑いのが好きですね。でも、湿度は低めが良いです。寒いと、こうなってしまうので(身体をブルブルすぼめながら)。そうなるとウォームアップもなかなか難しいんです。だから、乾燥していて暑いところが好きですね」
2020年8月に実施予定となっている東京オリンピック・マラソン競技の会場では、ロードランナーとして来日したファラー選手の姿を観ることができるかもしれません。湿度の高い日本の夏は、ファラー選手にとってやや苦手なコンディションになるかもしれませんが、トラックレースで展開してきたような傑出したレースセンスと、お馴染みの〝Mo ポーズ〟を、東京の沿道でも見せてくれることでしょう。