村山紘太がペーサーに抜擢!キプチョゲの“サブ2挑戦”が10月12日に開催
Oct 11, 2019 / COLUMN
Oct 16, 2019 Updated
男子マラソン世界記録保持者のエリウド・キプチョゲによるフルマラソン2時間切りへの挑戦『イネオス1:59チャレンジ』が10月12日の土曜日にオーストリアのウィーンで開催されることが決定した。
大会開催日が正式に決定
レースが10月開催と発表されたのが今年の5月。その時点では開催予定日を10月12日とし、もしもの悪天候のために10月13〜20日の予備期間を設けていた。しかし、レース3日前を迎えて大会ディレクターや、キプチョゲのマネージャー、チームイネオスのコーチなどからなるイネオス1:59のパフォーマンスチーム、そして気象予報チームは開催予定日の天候が良いことから、10月12日開催を正式に決定。
パフォーマンスチームはレースの理想の気象条件として気温7〜14℃、湿度80%未満、風が強くないことを掲げていた。直近の天気予報では10月12日朝のスタート地点の気温が5〜9℃、風速2メートル未満で湿度も高くなく雨も降らないことから、気象予報チームは理想に近いコンディションが見込めると判断した。
ロジャー・バニスターの1マイル走サブ4達成から65年、そして前回のサブ2挑戦の『Breaking2』から889日。世界中が注目するレースのスタート時間は前日まで見極められ、レースの16時間前に“午前8時15分スタート”(日本時間午後3時15分)と発表された。
村山紘太を含むペーサー41名がスタンバイ
前回のBreaking2ではナイキ契約の8ヶ国29名のペーサーが3名の選手をアシスト。それに対して今回はナイキ契約の10ヶ国41名のペーサーが選抜された。その中には五輪メダリスト3名、先日のドーハ世界選手権男子5000m銀メダリストのセレモン・バレガ(エチオピア)などが含まれている。
また日本からは村山紘太(旭化成)が夢のサブ2の瞬間をアシストすべく日本人で唯一選抜された。ChiMa Sports Promotion Japan代表で、代理人業務を務める柳田主税氏のサポートのもと村山はレース4日前にウィーンに到着。
村山はリラックスした様子で各国を代表するペーサーとコミュニケーションをとりながら、レースでのフォーメーションを確認。その他にもミーティングや撮影等のスケジュールを終えた。41名のペーサーが現地入りしているが、実際に走るのが35名(7人×5チーム)、補欠の選手が6名としてスタンバイしている。
現地入りした精鋭達の様子
今回の主役であるキプチョゲは10月7日の夜にケニアのエルドレット国際空港からウィーンに向けてプライベートジェットで飛び立った。ウィーンに到着後、レース4日前の10月8日にはペーサーたちとコースを確認。
3日前の10月9日からは炭水化物中心の食事に切り替え、いよいよ本番に向けて集中力を高めていった。
そして、2日前の記者会見では落ち着いた様子でこう述べた。
「調子は良い。ベルリンで走ることとウィーンで走ることは異なること。ベルリンでは世界記録を破ることが目標で実際に達成した。ウィーンでは“月面着陸”のような新しい歴史築き、壁を破るために走る」
また、キプチョゲはロジャー・バニスターの1マイル走サブ4達成の偉業を例に挙げて「なぜ走るのか?」という哲学的な話題に触れた。
「バニスター氏の1マイル走サブ4達成から65年が経った。当時、誰もが1マイル走でサブ4ができると思っていなかったが、その後多くの選手がそれを達成した。昨年私はマラソンを2時間1分台で走ったが、それまではこの記録が達成されると人々は思ってもいなかった。それでも、今年にベケレがそれを達成した。これは人間に限界が無いことを意味する。それこそが私が走る理由だ」
一方、日本の村山はドーハ世界選手権5000m銀メダリストのセレモン・バレガらのペーサーたちとコミュニケーションを図り、誰がどの位置を走るか、前や後ろとの距離、合流や交代のタイミングなど綿密に組まれたペーサーのフォーメーションを確認した。
【ペーサーのフォーメーション】
X ____ X
__X X
___X
キプチョゲ
__ X X
フォーメーションはこのように前から2人・2人・1人・キプチョゲ・2人(ペーサー7名+キプチョゲ)で構成され、キプチョゲは前方5名・後方2名のペーサーに挟まれる。
フォーメーションを確認するペーサー ©︎2019 Chikara Yanada
レース前日、電話での取材に応じた村山は「このような素晴らしいレースにペーサーとして参加できて光栄。日本人では唯一自分だけが走るので、“日本代表”という気持ちで走りたい」と、夢の瞬間に向かってワクワクした様子で話した。
村山はペーサーの1人として13kmと33kmからの2回、それぞれ5km弱の距離を先導する予定である。
YouTubeでのライブ配信
レース当日はYouTubeでのライブ配信があり、レース終了後はNHKと日経CNBCがレースハイライトを放映する。前回のBeaking2は2017年のゴールデンウィークに開催され、多くのマラソンファンがライブ配信で観戦した。今回も日本での3連休の初日にこのレースが行われることから、多くの人々がライブ配信に釘付けになることだろう。
レースの見所は何といっても、キプチョゲが1km2分50秒、5km14分13秒のサブ2ペースを『約1時間59分間維持できるか』ということ。また、ペーサーたちのフォーメーションやチームワーク、ウィーンのプラーター公園に駆けつける観客との一体感の様子も見逃せない。モンツァのサーキットよりも多い観客の声援という“追い風”をキプチョゲが受け続けることは間違いないだろう。
そのほか、キプチョゲが新しいシューズ(Next%のプロトタイプ)を履くことがナイキから公式に発表された。レース当日はキプチョゲの足元にも注目が集まる。
コースはウィーンのライヒス橋(Reichsbrücke)からスタートし、長い直線のハウプトアレーに入って両端のロータリーを周りながら4往復走り、最後には中央のフィニッシュ地点に向かっていく42.195km。レースではペーサーの前方に自動運転の電光掲示車が先導し、1kmあたり2分50秒の一定ペースで進んでいく。
Twitterでキプチョゲの結果予想をしてみたところ、レース1日前の時点で610票の回答があった。4つの回答に対して「1時間59分30秒〜1時間59分59秒でサブ2達成」を選択した人が37%と1番多く、サブ2達成と考えている人が全体の84%にのぼった。Breaking2での記録は2時間00分25秒。キプチョゲは1マイルあたりあと1秒速く走れば夢のサブ2を達成できる。
(※)最新情報:(レースの先導車は1時間59分50秒ペース=5km14分12秒ペースで先導する予定)
人類の夢、マラソンサブ2。レース当日は日本からも多くの人がライブ配信に夢中になるだろう。たとえネット上であったとしても、あなたの声援がもしかしたら、ウィーンの街やキプチョゲの耳に届くかもしれない。