9月27日発売!アシックス『GLIDERIDE』を履いて白銀の世界をラントリップ
Sep 25, 2019 / SHOES
Sep 27, 2019 Updated
アシックスは、走行効率を高めた新しいランニングシューズの『GLIDERIDE(グライドライド)』を9月27日から発売します。
その発売を前にアメリカ・ユタ州で開催されたグローバルローンチイベント『ETERNAL RUN』に、参加しました。今回はこのシューズの特徴や履き心地、実際に走ってみた感想、イベントの様子などをレポートします。
METARIDEに続くライドシリーズ第2弾
アシックスの70年にわたるイノベーションの集大成ともいえるシューズ『METARIDE(メタライド)』は、今年3月の東京マラソンEXPOで話題になり、瞬く間に売り切れるなど話題をさらいました。今回発売される『GLIDERIDE』は靴底前部にカーブを設けることで走行効率の向上を生み出すGUIDESOLE(ガイドソール)を採用したライドシリーズ第2弾のシューズで、METARIDEの普及モデルといえます。
その特徴は、ゆりかごのようなカーブによって足がスッと前に出るその独特なライド感を維持しながらも、軽量化に加えてクッション性を持たせているという点です。
「METARIDEよりもエナジーセービング(エネルギー消費の節約)をマイルドにしながらもクッション性を上げました」
こう話すのは、アシックススポーツ工学研究所(ISS)の原野健一所長です。
「METARIDEはエナジーセービングの頂点で、ターゲットはサブ5〜サブ7。そして、GLIDERIDEは多くのランナーにとって身近なシューズとなります。このシューズの良さを多くの人に味わってもらいたいですね」
GLIDERIDEのターゲットはサブ4〜サブ5といったボリュームゾーン。それに加えてランニングを毎日しない人やこれから走り始める人にもオススメだと原野所長は話します。販売価格も16,000円(税抜)と、METARIDEよりもお手頃。多くの人にライドシリーズ独特のライド感を届ける1足となるでしょう。
アシックスの壮大なグローバルイベント
GLIDERIDEリリース前というタイミングで、グローバルローンチイベントの『ETERNAL RUN』がアメリカ・ユタ州で開催されました。エターナルとは英語で『永遠の・果てしない』という意味の形容詞です。
舞台はユタ州北西部のボンネビル・ソルトフラッツ。2002年冬季五輪が開催されたユタ州北部のソルトレークシティから車で2時間の場所にある、塩湖(ソルトレーク)の跡にできた260平方キロメートルの真っ白な平原です。一見すると雪のようなこの白銀の世界はその全てが“塩”。ハリウッド映画の撮影にも使用された場所です。
この場所に世界中から著名人やメディア関係者が招待されました。なかには、アメリカ・ランナーズワールド誌の編集者やアメリカンフットボールのNFLプレーヤー、オリンピックメダリストにサッカーの元イングランド代表選手などが参加していました。
さて、アシックスが今回これまでに壮大なイベントを行うのはなぜでしょうか……。
今回のディレクターを務めたフィオナ・バーウィック(アシックスストラジテック・プランナー)は、ETERNAL RUNについてこのように話します。
「“GLIDERIDEの良さをより多くの人に楽しんでもらいたい”という気持ちで企画しました。そして、このシューズの『長く、楽に走る』という利点をより理解してもらえる場所を世界中で検討し、南アフリカ、南米、ユタ州の3つまで候補地を絞り、9月は涼しくて走りやすい気候のボンネビル・ソルトフラッツに最終的に決定しました」
その中でも以下の3つのテーマを重視したといいます。
- 『ゴールラインがない(NO FINISH LINE)』
- 『自分自身のペースで(PACE YOURSELF)』
- 『壮大なスケールで(BIG SCALE)』
ボンネビル・ソルトフラッツで見える景色はこの3つのテーマや『白銀の世界』以外にも、夜は素晴らしい星空、朝は最高のグラデーションを眺めることができる、まるでテレビの画面の向こう側のような非日常的な世界。
そして、ハラハラドキドキのETERNAL RUNが始まりました。
『楽しく、長く走り続ける』
ETERNAL RUNのルールは、事前にそれぞれの走力に対して設定されたペースでできるだけ長く走る、というシンプルなもので、まさにゴールラインがなく、ペースは自分自身に委ねられ、壮大なスケールで行われました。
「あの山の方向に向かっていくと2つだけエイドステーションがある」
とスタート前に大まかに説明されるも、ゴールラインがないどころかコースもないのです。ハイドレーションを入れたバックパックとガーミンのウォッチを装着した参加者は、エイドに行くのも自由、どの方向に進んでも良い状況の中で走り出しました。
位置情報はGPSで全てリアルタイムに監視され、緊急時やペースが保てない時にはすぐさま車が迎えに来るというエターナルなイベント。今までの概念を打ち破って新しい世界に飛び込むということは、もしかしたらモンゴルの大草原、アフリカの砂漠地帯、南極大陸に足を踏み入れることに似ているのかもしれません。
GLIDERIDEの『楽しく、長く走り続ける』というメッセージは、GUIDESOLEのテクノロジーが生み出すものです。私は10km過ぎでペースを落としてその後に車に回収されましたが、これまでに感じたことのないような“ランナーズハイ”を体験したのです。
ゆりかごのようにスッと足が前に出るGLIDERIDEの感覚。そして、程よいクッション性も感じることができました。私はこの秋に控える自身5年ぶりのマラソンに向けて久しぶりに走り始めたばかりですが、今回のETERNAL RUNでは楽しく走ることができました。
今回のETERNAL RUNで1番長い距離の約38kmを走ったのは女子10000mで1988年ソウル五輪で銀メダル、1991年東京世界選手権で金メダルを獲得したリズ・マッコルガン(イギリス)。現在55歳の彼女は、
「最近は何年間も8km以上走ったことがなくて、今回は16kmぐらいは走れると思っていましたが、人生で初めて4時間以上走っていました」
と語り、このETERNAL RUNにおいてのGLIDERIDEとの体験を『ウルトラマラソンへの誘い』と表現しました。
そのマッコルガンがゴール後に讃えたのは、参加中で2番目に多い約34kmを走った元イギリス代表のサッカー選手、ウェイン・ブリッジ(イギリス)。かつて、プレミアリーグのチェルシーでリーグ制覇を経験した男は、世界一過酷といわれるサハラ砂漠250キロ横断マラソンの完走を目指しています。
新しい体験はランニングを面白くさせる
ゴールがないということや、塩の上で走るということはおそらく参加者全員にとって、新しい体験であったはず。そして、彼らにとって、このGLIDERIDEで初めて走った時の感覚もまたそのような新しい体験であったことでしょう。
ETERNAL RUNに現役トップアスリートとして唯一参加したのは、今年の全米学生選手権男子10000mを制し、その後アシックス契約選手となったクレイトン・ヤング(アメリカ)。翌週にフィラデルフィアでの初ハーフマラソンを控えていた彼は練習の一環として32kmほどを走り、レース後にこう話しました。
「職業やレベルに関係なく、今回様々な人と一緒に走れてよかったです。競争もなく、ピースフルなイベントでした。シューズについては、履き慣らしていくうちにだんだんとエナジーセービングを感じるようになりました。このシューズのデザインもカッコ良くて気に入ってます」
GLIDERIDEは彼のようなエリートランナーにとっても、その利点を感じるシューズだといえます。
新しい体験との出会い。それはまるでラントリップのような世界観なのかもしれません。そして、ランニングもまた、終わりのないエターナルな旅なのでしょう。
ISSの原野所長は、これまでのアシックスの歴史を振り返りながらこう話します。
「アシックスとして、ゲルカヤノなどのシリーズをアップグレートしていくことに加えて、今までに無いものを作ったり、今までに無い体験を提供することを考えた時に、ライドシリーズのイノベーションはアシックスの機能軸を増やしました。ライドシリーズの開発はアシックス70年の歴史上で大きな転換点でした」
ライドシリーズ第2弾のGLIDERIDEは、METARIDEの開発当初は構想になかったといいます。しかし、第2弾のリリースとなれば、今後の展開に期待せずにはいられないでしょう。
この『ETRENAL RUN』という壮大なスケールのイベントの成功もそうでしたが、新たな体験の提供こそがアシックスのライドシリーズの醍醐味であり、それがまたランニングを楽しく、面白くさせるのではないでしょうか。
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