ランナーが気になる『貧血』 、 不足しがちな鉄分を含む食材と料理例
May 20, 2019 / FOOD
May 11, 2020 Updated
「最近、疲れやすくなってきたな……」それは鉄分不足が原因かもしれません。
鉄分は主に赤血球の材料になり、酸素を体内の隅々まで巡らせる役割を持ちます。鉄分の摂取不足によって起こる鉄欠乏性貧血では、疲れやすくなったりや立ちくらみが生じたりします。ランナーでは貧血の有無に関わらず、鉄分の不足は筋肉の機能やトレーニングして得られる成長、パフォーマンスにマイナスの影響をもたすことも*¹*²。
日本全体でどのような食事や栄養素の量を摂っているかを調査する国民健康・栄養調査では、鉄分の摂取量も調査しています。2017年の最新版で20歳以上の鉄分の平均摂取量は、男性で約8.2㎎/日、女性で約7.5㎎/日となっています*³。2015年の食事摂取基準では18歳以上の推奨量が男性で7.0~7.5㎎/日、女性で6.0~10.5㎎/日(年齢区分により差があり、女性は月経周期によっても変動)とされています。男性の平均値は推奨量を越えているものの、女性は月経期に、やや不足してしまいます。平均摂取量を年代別で見ると、男女とも50代以上に比べて20~40代は低い摂取量でした。上記の平均摂取量も比較的多く摂取している50代以降の方の調査人数が多いため、その分多く摂取しているように見えています。また、ランナーは発汗や溶血などの影響を考慮すると、この量よりも多く摂取する方が良いともされています*²。
意識して食材のチョイスをしないと、なかなか摂りずらいのが鉄分。では、どんな食材に含まれているのでしょうか? 鉄分を含む食材とオススメの料理例をご紹介していきます。上記の食事摂取基準の数値を頭の片隅に置いておきながら、参考にしてみてください。
主菜:赤身の魚・肉
赤身の魚や肉が『赤く見える』のは、筋肉内に『ミオグロビン』という鉄と結合したタンパク質が存在するためです。ミオグロビンは、筋肉内で酸素を一時的に貯蔵しておく役割を果たします。そのため、赤身の魚や肉は鉄分を多く含む傾向にあります。
<魚類で鉄分が多い種類>
- 秋刀魚(サンマ) 1.3㎎/100g
- 鰤(ブリ) 1.3㎎/100g
- 鯖(サバ) 1.2~1.6㎎/100g
- 鰹(カツオ) 1.9㎎/100g
- 鮪(マグロ) 0.9~2.0㎎/100g
魚は、シンプルにお刺身や焼き魚もいいですが、ひと手間加えて味噌煮などの煮魚にすると、忙しい毎日の作り置き食材として時短にもなりますね。
肉類では、豚や鶏よりも牛が最も鉄分を多く含み、牛は部位などによりますが1.0~2.0㎎強/100gの鉄分を含みます。「牛肉は価格が高くて……」という方には、豚・鶏のもも肉がオススメ。0.6㎎/100g前後で他の部位よりも多く鉄分を摂取できます。
肉類は焼く・煮る・炒める、様々な料理に応用しやすく、また保存しやすい食材。日頃からちょい足しで牛肉を食べたい場合は、牛肉のしぐれ煮がオススメです。細切れの牛肉(冷えると脂が浮いてくるので、できる限り脂身が少ないものがオススメ)と千切りのショウガ・玉ねぎと一緒に煮ておくと、おかずが物足りない時やおにぎり・お弁当の具材に重宝します。
また、鉄分の宝庫で、ビタミンAなどの他の栄養素も豊富に含むのがレバー(肝臓)。レバーでは豚が最も鉄分が多く、13.0㎎/100g含みます。鶏では9.0㎎/100g、牛では4.0㎎/100g。月に2~3度はレバニラなどの炒め物にしたり、また常備菜としてレバーの味噌煮を作っておくと、牛肉のしぐれ煮同様に小まめな鉄分補給がしやすくなりますね。
副菜:小松菜・ほうれん草・ブロッコリー
野菜などの植物由来の鉄分は、体内への吸収率が低い非ヘム鉄という形で含まれていますが*⁴、栄養バランスを考えると、ヘム鉄に偏らずに摂りたいものです。
<野菜類でオススメの食材>
- 小松菜 2.8㎎/100g
- ほうれん草 2.0㎎/100g
- ブロッコリー 1.0㎎/100g
小松菜・ほうれん草などの葉野菜は傷みも早いので、買い物の際に毎回買っておきたい食材の1つ。大抵は写真のように束で売っているので、一人暮らしの方には量が多いかもしれませんが、サッと茹でるだけのお浸しや、他の具材と一緒に卵炒めにしたり、お味噌汁の具材にすると、嵩が小さくなり、ペロリと美味しく食べられます。お浸しで胡麻和えにしたり、卵炒めにすることで、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)の吸収率も高められます。こうすることでバランスよく、かつ効率的に栄養素を摂れるのでオススメです。
ブロッコリーに含まれる鉄分は、100g当たりでは他の小松菜・ほうれん草よりも劣りますが、非ヘム鉄の吸収率を上げるビタミンCが100g当たりで1日の推奨量以上(120㎎/100g)が含まれます。これは野菜の中でもトップクラス。また、料理のバリエーションやその他の栄養素量の観点から、とてもオススメ食材です。ビタミンCは水に溶けやすい水溶性ビタミンのため、その損失をなるべく抑えるためにも1分程でサッと茹で上げたり、蒸し器を用いるとより効果的に摂れます。そのままで温野菜、冷やしてサラダの具材や主菜の付け合わせにしたり、卵炒めにするなどのバリエーションをつけると摂りやすいですね。
オールラウンダー:大豆製品・その他の豆類
最近、健康志向の方に何かと注目されているのが大豆。その所以は、質の高い栄養価にあります。大豆は鉄分のみならず、”畑の肉” と言われるほどの質の高いたんぱく質や、鉄分同様に不足しがちな食物繊維・マグネシウムも一緒に摂れます。また、栄養面だけでなく主菜・副菜の料理面でも幅広く活用できるのが良いですね。
<大豆製品・その他の豆類>
- 納豆 3.3㎎/100g *1パック 四角型で約40~50g、丸型で30~40g
- 豆腐 0.9㎎/100g *1丁約300g、冷奴1人前約150g
- 豆乳 1.2㎎/100g
- きな粉 7.9㎎/100g *大さじ1杯で約7g
- 大豆 1.9㎎/100g *茹で重量
- レンズ豆 4.3㎎/100g *茹で重量
- ひよこ豆 1.2㎎/100g *茹で重量
ほとんどの大豆製品は、そのまま手軽に食べられるのが嬉しいポイント。きな粉は砂糖を含まないものなら、ヨーグルトのトッピングや野菜の和え物としても相性が良いですね。
そのまま豆として食べる際は、大豆やレンズ豆、ひよこ豆などを混ぜた豆カレー(ダール)にすると作り置き・冷凍保存できます。また、バケットに豆カレーを乗せてオーブンで温めると、美味しい”カレーパン” を作れますよ!
主食:玄米
ほぼ毎日、そして比較的たくさん食べるのがご飯。精白した白米は、精白により美味しさが増す反面、玄米の外皮に含まれる豊富な栄養素を失ってしまいます。鉄分の場合、その差は白米で0.2㎎/150g(1膳)、玄米で0.9㎎/150g(1膳)と4.5倍もの差になります。100%玄米だと食べずらいという方は、まず白米と玄米の割合を少量にしてから始められると、無理なく毎日続けられると思います。
果物:プルーン・レーズン・ラズベリー
最後に果物類から。果物には体内で中性脂肪になりやすい果糖を多く含むため、食べ過ぎに注意する必要がありますが、そのマイナス面を補うだけの魅力があります。
<果物類のオススメ>
- レーズン 2.3㎎/100g
- プルーン 1.0㎎/100g
- ラズベリー 0.7㎎/100g
1度に食べる量が少ないため鉄分を多く摂ることは難しいですが、これらの食材はリンゴやバナナなどの他の果物と違い、家に長期間ストックしておける食材であることがポイント。レーズン、プルーンはそのままでも美味しく、ラズベリーは酸味が強いのでヨーグルトなどにトッピングすると食べやすくなります。なるべく毎日、小まめに摂って、鉄分摂取のベース食材にしたいですね。
なかなか摂りずらいと思われる鉄分ですが、身近な食材で摂取できます。これらの食材を買い物リストに入れておき、ぜひ次回のお買い物の際に手に取ってみてくださいね。
■参考文献
*¹ Lukaski, Henry C. “Vitamin and mineral status: effects on physical performance.” Nutrition 20.7-8 (2004): 632-644.
*² Wolinsky, Ira, and Judy A. Driskell, eds. Sports nutrition: vitamins and trace elements. CRC Press, 2005.
*³ 厚生労働省, 平成29年「国民健康・栄養調査」の結果より集計
*⁴ 張替秀郎. (2015). III. 鉄代謝と鉄欠乏性貧血―最近の知見―. 日本内科学会雑誌, 104(7), 1383-1388.