「1人で走ること」「仲間と走ること」どちらがメリットは大きい? 心理学から見たそれぞれのメリットとは

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1人でも楽しめる、そして仲間と一緒でも楽しめる……。ランニングの魅力としてさまざまな境遇・シチュエーションで楽しめる点が挙げられます。ただ1人で黙々と走ることと、誰かと話ながら走ること、果たしてどちらの方がメリットは大きいのでしょうか。

今回は心と体のカウンセラー・ぱつこさんをお招きし、心理学の観点から1人で走ること・仲間と走ることのメリットについて解説していただきました。

仲間と走ることで得られる『社会的促進』『群れ効果』

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(左から)ぱつこさん、スポーツMC・岡田拓海さん

岡田:Runtripの公式Instagramで「1人で走ること」と「仲間と走ること」どちらの方がが好きかといったアンケートを実施。結果として「1人で走ること」が492票で全体の59%、「仲間と走ること」が337票で全体の41%となりました。

もちろん1人で走ること、仲間と走ることの両方にそれぞれ楽しさがあると思いますが、果たして心理学的に見ると両者にはどのようなメリットがあるのか、ぱつこさんに教えていただきたいと思います。

ぱつこ:まず仲間と走ることのメリットは、大きく分けて2つあります。1つは他者の力を借りられる『社会的促進』。同じような力・目標を持っている人が周りにいるだけで、自分のパフォーマンスを高める効果が期待できるといったものです。

たとえば私はフルマラソンを3時間10分を切ることが目標なのですが、目標の近い人と一緒に走るだけで自分の実力以上の力が発揮しやすくなります。

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ぱつこ:もう1つは『群れ効果』。集団に属しているだけでパフォーマンスの向上を見込めるといったものです。ランニングチームに属してトレーニングをすると、自分のパフォーマンスが上がりやすくなります。

チームに属してるということは、自分の居場所があるということでもあります。その安心感がパフォーマンスに良い影響を与えるのです。

岡田:たしかに仲間と走ったり、みんなで同じチームウェアを着ると安心感や楽しさが生まれます。

ぱつこ:安心感があると自己実現への欲求がさらに高まるので、仲間と走ることはパフォーマンスや目標達成といった観点から見てもメリットが大きいでしょう。

また多角的な視点を得ることができる点も大きな魅力ですね。自分と違う考え方、多様な能力を持つ人たちとふれあい、情報交換をしていくうちに、さまざまな物事を多角的に見られるようになります。

岡田:1人でトレーニングをしていると決まった練習ばかりしてしまうことが多いと思います。他の人のトレーニング方法を知ると、よりトレーニングを多角的に、効率の良いものにすることができそうです。

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ぱつこ:ただ仲間と走ることのデメリットもあります。先ほどは社会的促進を魅力として挙げましたが、似た言葉で『社会的手抜き』という用語もあります。同じような能力・目標を持つ人たちが集まると実力以上の力が発揮しやすくなることと対照的に、自分のレベルと大きくかけ離れた集団では力の発揮を抑えようとする心理が働いてしまうのです。

フルマラソンで4時間以内で走れる能力を持った方が、3時間以内で走れる人たちの集団でトレーニングすると「自分には無理だ」と思い実力を発揮できなくなってしまうことが多いです。もちろん、その逆のパターンもあるでしょう。

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ぱつこ:また『群れ効果』は『同調圧力』になってしまう場合もあります。体調が悪い日でも定例の練習会に参加しなきゃと思ったり、自分ではなく周りの事情に合わせ上手く走れなくなってしまったり……。良くも悪くも、集団の特性に自分が引っ張られてしまうことがメリットにも、デメリットにも成り得てしまうのです。

仲間と走ることには大きなメリットがありますが、1人で走る時間も大切なことだと思います。

1人で走ることで得られる『自己制御』『認知的没入』

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岡田:仲間と走ることとは対照的に、1人で走ることのメリットとは?

ぱつこ:マイペースに物事を進めることができる『自己制御』がメリットの1つとして挙げられます。他人に縛られず、周りの影響を受けないことで、自分でペースをコントロールしながら走ることができること。自分のやりたいことを、自分の好きにできることは1人で走ることの大きなメリットでしょう。

岡田:体調に合わせて走ることを止めてもいい、自分で好きなペースで走ってもいい、音楽を聴きながら黙々と走れる……会社で働いている人や家族で暮らしている人は、1人で走る時間はすごく貴重だと思います。

ぱつこ:もう1つのメリットは集中力を維持できる『認知的没入』です。誰かと一緒に走っている「周りにペースを合わせなきゃいけない」とか「静かにしなきゃいけない、なにか話さなきゃいけない」など、相手に気を遣ってしまうことは多いでしょう。すると自分のランニングに集中することがむずかしくなってしまいます。

1人で走ることで、走ることだけに集中し、自分の世界に没入できることができるーー。これは仲間と走ることでは得にくいメリットだと思います。

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ぱつこ:もちろん1人で走ることのデメリットもあります。その1つが『認知的閉塞・主観的バイアス』が表れやすい点です。バイアスとは自分だけで物事を捉える際に、偏った視点で捉えてしまう現象を指します。1人で走る際には周りの視点、新しい考え方を得ることがむずかしいので、自分の視野が狭くなってしまいやすいです。

たとえば目標達成のためにスタミナの強化が大切だと思っているランナーが、実は客観的に見ると速いスピードで走る能力が不足していた……その際に1人ではスピードが足りない事実に気づきにくいですが、客観的にその人を分析し他者の意見を聞き入れることで、達成したい目標に近づけるかもしれません。

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ぱつこ:もう1つが走ることへのやる気に関与する動機付けがむずかしい『無動機』です。仲間の存在がモチベーションの源となることは多く、一方で1人で走るなかで孤独感を覚えやすい人はいると思います。とくに孤独感はモチベーションに負の影響を与えてしまうため、1人で走ることはモチベーションの維持が課題になりやすいです。

孤独感を払拭するためには、決してランニングチームに所属しなければいけないというわけではありません。家族やランニングに関係のない友人など、自分が安心できる居場所があるだけで安心感を得ることができます。

岡田:1人で走ること、仲間と走ること……その両方にメリット・デメリットがあるのですね。

ぱつこ:心理士としてみなさんにお伝えしたいことは、メリット・デメリットを理解した上で、今の自分が置かれている状況・コンディションを自身で見つめ、1人で走ることと仲間と走ることを使い分けていくことが大切だということです。

「これだけがいいに決まってる」「これが絶対いい」と思うのではなくて、いろいろなものをうまく取り入れたり、使い分けながら、今回話した内容をランニングに活かしていただきたいです。

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1人で走ること・仲間と走ること、その両方にメリット・デメリットがあることを解説いただいた本記事。1人で走ることが多い人は親しい友人と、仲間と走ることが多い人は1人でじっくりと走ってみると、新たなランニングの世界への1歩を踏み出せるかもしれません。

【動画からご覧の方はこちら】


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