人間の体は「フルマラソン2時間切り」が可能か!! スタンフォード大学教授が限界値を割り出す
Aug 17, 2016 / COLUMN
Jun 02, 2017 Updated
今週末の21日に開催されるリオオリンピックの男子マラソン。日本からは、佐々木悟、北島寿典、石川末広の3人がレースに挑みます。2時間8分台の記録を持つ佐々木悟に期待がかかるところですが、現実的な目標としては、メダルよりも入賞といったところでしょうか。現在の世界記録は2時間2分57秒(デニス・キメット選手)とその差は大きく、今回もアフリカ勢が表彰台を独占しそうです。
さて、この世界記録をふり返ると、1965年には日本人選手の重松森雄さんが2時間12分0秒で走り、当時の世界一に。1967年には、デレク・クレイトンさんが2時間9分36秒を出し、その後、ハーリド・ハヌーシさんが1999年に2時間5分42秒を達成しました。この3分近くのタイムを縮めるために30年ほどの年月かかっています。
また、このハヌーシさんのタイムから現在の2時間2分57秒までの約3分間は、15年で縮めることができました。この調子でいけば人類初の2時間切りが達成できるのかと胸を躍らせてしまいますが、実際に2時間切りは可能なのでしょうか。
書籍『スポーツを10倍楽しむ統計学 データで一変するスポーツ観戦』では、「マラソンの記録はどこまで伸びるか?」というテーマにふれており、ある論文が紹介されています。スタンフォード大学のマーク・デニー教授は、陸上競技各種目の過去100年に及ぶ各年の世界最高記録を極値解析し、回帰分析と呼ばれる統計手法によって限界値を割り出しました。
そんなマーク・デニー教授の分析では、フルマラソンでは「2時間切りは難しいのでは」という結論が出ています。記録の限界値は、2時間0分47秒と、いま以上に記録は伸びるものの、2時間切りとはいきません(それでも実現すればすごいことです)。
また、同様に「The science of sport」というサイトでは、2013年のベルリンマラソン(2時間3分23秒)の後に、生理学的に2時間切りは不可能なのではという理論が掲載されました。この根拠を見てみると、その当時の世界記録から2時間を切るためには204秒を縮める必要がありました。つまりこれは、1kmあたり4.83秒も速く走る必要があるのです。これは肉体的に可能なのかを考えると、それには耐えきれないという結論だったのです。
もちろん、世の中には「2時間切りは可能」といった見解もあるので、必ずしも不可能というわけではありませんが、この目標達成に関してはかなり難しいチャレンジになることは間違いありません。
ペースランナーを併走させることで、ペースメーカーという役割と共に、前後で挟ませることで空気抵抗が9分の1にまで減ると、同書で紹介されています。また、気候の良い季節に行われるレースや、高低差の少ないコースを走ることで、少しずつではありますが、2時間切りが近づきそうですね。
まずは、今大会の男子マラソンに期待してみましょう。