「のどの渇きで」ランニングパフォーマンスが落ちるリスクあり?

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自己ベスト更新、フルマラソン完走などの目標は、己の限界のその先に設定するもの。つまり“自分の限界に近づく走り”を身につけるということにつながります。

ランニングは持久力や耐久力が必要なスポーツで、ラン中の体内ではエネルギーが燃焼し、酸素や水分が全身をめぐっています。この代謝や循環がスムーズにいかなくなった場合、思うように走れなくなり、目標から遠ざかる恐れがあるのです。

書籍『限界は何が決めるのか? 持久系アスリートのための耐久力(エンデュアランス)の科学』(アレックス・ハッチンソン著、TAC出版)は、持久系アスリートや登山家のパフォーマンスを例に挙げながら、科学的知見で運動中の肉体のメカニズムに迫る一冊。さまざまな研究実績をもとに、運動パフォーマンスとその限界を論じています。なかでも全てのランナーに知ってほしいのが、『酸素』と『水分』に関する考察です。

まずは酸素。走り始めた体では、全身に指令を出す脳内の酸素濃度が上昇します。ただし、脳の酸素濃度が変化することに注意が必要です。

「酸素濃度は一定の状態を保つようになるが、それは限界が近づくまでの話だ。呼吸が激しくなるにつれ、血中の二酸化炭素濃度が低下し、脳に通じる血管が収縮する。その結果として生じる脳の酸素不足が、筋肉の動員を直接阻害したり、 “スピードを下げろ”  “止まれ” と信号を送る疲労感の原因になったりするのだという」(『限界は何が決めるのか?』より)

脳が機能するためには、十分な量の酸素が不可欠。無理にスピードを上げて走ると、途端に息苦しくなってしまい、体が思うように動かなくなってしまいます。酸素をしっかりと体内に取り込む呼吸法や、循環器系の健康管理を取り入れてみると良いでしょう。

また、ランニング中は多くの水分が体内から失われています。日本では、部活中に水を飲まないというスタイルが長らく続いていましたが、それはもう常識ではありません。

同書は「脱水状態でものどが渇くとは限らない。脱水状態でなおかつのどが渇いていれば、比較的軽いものでもパフォーマンスは落ちる」とし、さらに「飲むという行為は、のどの渇き、感じ方、心理状態、モチベーションに影響をおよぼします」という環境生理学者の説を挙げています。

医学的に、体内の水分量が不足している脱水状態だけが危険なのではなく、のどの渇きを感じただけでも、ランニングパフォーマンスが落ちるリスクがあるのです。レース中に水を飲むタイミングに迷うランナーは、「のどが渇いたな」と思ったら飲んでみると良いかもしれません。

目標に向かって走ることは、モチベーションアップには欠かせません。ただし酸素と水分が不足したとき、パフォーマンスが下がるリスクに要注意。体内の巡りを意識した走りで、自分の限界に近づいていきましょう。

書籍情報

『限界は何が決めるのか?持久系アスリートのための耐久力(エンデュアランス)の科学』アレックス・ハッチンソン著、TAC出版

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