高校クロスカントリー走のシーズン終了。改めて考える高校生が走る意味
Dec 05, 2019 / COLUMN
Dec 05, 2019 Updated
クロスカントリー走と駅伝の違い
どちらも長距離走の団体競技であるという意味で、クロスカントリー走は日本で人気がある駅伝と共通点が多い。クロスカントリー走に出場するのは1チーム7人(補欠選手5人)で、箱根駅伝は10人(補欠選手6人)だから、参加する人数も似ている。
だが、駅伝がリレー形式であるのに対して、クロスカントリーでは全員が「よ~いどん」で一斉に同じコースを走る。だから、クロスカントリーの競技時間は駅伝に比べると圧倒的に短い。高校クロスカントリーは3マイル(約4.8キロ)の距離がほとんどだから、速いランナーのレースは15分ぐらいで終わってしまう。高校生の部活だから、中には30分以上かかる子も毎年必ず混じっているわけだけど、それでも箱根駅伝のように2日かかるなんてことはない。
両者のもっとも大きな違いは、団体の順位を決める方式だろう。クロスカントリー走では、チーム7名のうち上位5人の順位を合計した数字でチームの成績が決まる。個人総合1位だと1ポイント、10位だと10ポイント、という具合にポイントを計算し、合計ポイント数が最も少ないチームが勝つ。仮に2チーム以上が上位5人までの合計ポイントで同点になった場合は、チーム6位同士のタイムで順位が決まる。
たすきをリレー形式で受け渡していく駅伝は、チーム内の誰かが1人でもアクシデントで走れなくなったらチーム全体が負けてしまう。だから、ケガをしたランナーが這ってでもたすきを次のランナーに渡そうとする、みたいなことが起きる。クロスカントリー走では1人が棄権してもチームの成績には影響がないから、選手には過大なプレッシャーはかからない。見る分には駅伝の方がドラマチックだろう。だけど、選手の安全を考えるならクロスカントリー走の方がはるかに良いと思う。日本の陸連も、駅伝やマラソンだけではなく、もっとクロスカントリー走に目を向けてほしいものだ。
高校生が部活で走ることの意味を考える
クロスカントリー走は、地味な部活だ。どこの高校にもあるし、トライアウトなどなく誰でも入れるから参加人数は多いが、入部してくる新入生の殆どは素人だ。米国の中学校には部活というものがないので、民間のランニングクラブに所属していたほんの少数を除いて長距離走の経験者はいない。それどころか、特に走ることが好きなわけでもなく、体育の単位を取ることが目的の子だっている。
いざ入部しても、練習は基本的には毎日走るだけの単調で退屈なものだ。もちろん、インターバル走やペース走など様々なやり方をするわけだけど、走るってことには変わりはない。それに素人のような新入生には、ペースやテンポの違いなんてものを説いても、ほとんど意味はない。何しろレース中に歩かずに最後まで走るってところから目標にしないといけないのだ。普通の人が健康やダイエットのために走るのとレベルは変わらない。それでも辞めずに続けてさえいれば、高校生たちの走力は必ず伸びてくる。若いとはそういうことなのだ。
キロ6~7分ぐらいのランナー、マラソンで言えば4~5時間の素人レベルだった子が、1シーズンが終わるころにはキロ5分ぐらいで走れるようになる。そのペースでマラソンを走ればサブ3.5ぐらいだ。競技選手とは呼べなくても、一般のジョガーとしては速い方になる。そして2年、3年と続けていくうちにキロ4分から3分の世界に入ってくる子もいる。こうなると、もはや市民ランナーのレベルではなくなる。マラソンならサブ3、下手をすれば2時間前半のペースだ。もちろん、そこまで行けずに途中で辞めてしまう子の方が多数なのだけど。
長距離走には、ボールゲームのような楽しみはない。続けてさえいれば成長はするけど、1日で大きく変わるようなものではない。レースだって大失敗はありえても、まぐれや奇跡は起こらない。ぼくは息子にも指導する生徒たちにも、そう言い続けてきた。「頑張れ」って言うのは易しいけど、モチベーションは彼らが自分の中に見つけてくれないと、頑張りようがないからだ。