ケニアで57泊58日合宿の神野、“青学らしさ”でMGC挑戦へ
Jul 27, 2019 / COLUMN
Jul 27, 2019 Updated
1年後の東京オリンピックの男子マラソンのスタート地点に立っているのは誰か。9月15日開催の選考会「グランドチャンピオンシップ(MGC)」上位にオリンピック参加資格が与えられることで、誰がそれを手にするのか注目が集まっています。MGC参加の選手は大迫傑、設楽悠太、井上大仁、今井正人……と、強者ばかり。
そして、この人も忘れてはいけません。神野大地選手です。
中京大学附属中京高等学校から青山学院大学へ進学した神野選手を全国区にしたのは、3年生時の箱根駅伝。往路5区で区間新記録を樹立すると、“3代目山の神”として認知されるようになりました。同大学の総合優勝に貢献するなど、今後の活躍が期待できる選手の1人に。そんな神野選手は、大学卒業後は一度実業団に入るものの、2018年5月にプロランナーへ転向。来年の東京オリンピック出場を目指しています。
神野選手の取り組みはこれまでのマラソン選手とは一線を画したもの。というのも、積極的にケニア合宿(57泊58日)を取り入れるなど独自の活動を行なっているのです。
青山学院大学の原晋監督は書籍『青学駅伝選手たちが実践!勝てるメンタル』の中で、こう語っています。
「これまで、『ケニアは強い。学ぶことがあるはずだ』と、私を含め、日本の陸上界の誰もがそうしたことを思ってきました。ところが、アクションを起こすまでには至らなかった。実業団のチームがまとめてケニアで合宿を行ったという歴史はないわけです(書籍『青学駅伝選手たちが実践!勝てるメンタル』より)」
ケニアには何かがあるはず。そう思うマラソン関係者は少なくなかったのですが、大学を卒業して数年しか経っていない神野選手が、勇気を持ってそこに飛び込んだのです。そこに続いてケニアを訪れる仲間が増えつつあるそうです。
そのまま実業団に所属していれば、毎月安心して給料を受け取れることができたでしょう。でも、それでは思いきった行動はなかなかできません。退路を経ってプロランナーに転向。活動するための資金は自分たちで探さなくてはならないのですから、そう簡単なことでありませが、大学時代から自分のあるべき姿を目指す原監督の教えが浸透したのでしょう、前例にとらわれない勇気ある選択ができたのです。
そんな神野選手を原監督も応援しており、このような活動が広まることを期待しているようです。そのために必要なのは神野選手の結果。結果が伴わなければ、世の中は肯定的に捉えてくれません。そんな中、原監督は同書にてこのように言葉を残しています。
「神野にはなんとか結果を出してほしいと願っています。ただし、それは近視眼的なものではなく、2024年のパリ・オリンピックや、2028年のロサンゼルス・オリンピックを含めた中長期的な視点でいいと私は思っています(書籍『青学駅伝選手たちが実践!勝てるメンタル』より)」
実際にプロランナーとして扉を開いていくことの難しさを知っている原監督だからこそのアドバイス。新しい取り組みだからこそ、短期的な結果で評価したくないもの。とは言え、今回のMGCで「ひょっとすると……」と考えてしまうのもファン心理かもしれません。とにもかくにも、神野選手もMGCの主役になれる選手の1人であるということは、間違いないでしょう。