シーズンオフのメジャー球団のキャンプ施設を走ってみた
Dec 30, 2018 / SPOT
Apr 26, 2019 Updated
フィールドに入り込み、外野の芝生も走ってみた。きれいに刈り込んだ天然芝からは野球の匂いがするようだ。この上で多くのマイナーリーガー達がメジャー昇格を夢見て、汗を流したのだろう。
メジャーリーガーたちの何十億円という想像を絶するような巨額契約が連日のように報じられる一方で、そのピラミッドの頂点を目指すマイナーリーガーたちの過酷な環境はよく知られている。彼らの平均的な年収は、100万円以下だと言われ、しかも給料が支給されるのはシーズンがある4月から9月までの間のみ。約160日間のシーズンで140ゲームをこなし、長距離バスや格安航空便での過酷な移動にも耐えなくてはいけない。
そんな元マイナーリーガーの1人に話を聞いたことがある。選手の殆どがシーズンオフに別の仕事に就き、配偶者や恋人の収入に頼る選手も多いとのこと。野球の実力云々の前に、現役を続けるうえで最大の難関は生活苦なのだそうだ。メジャー昇格を果たすのはマイナーリーガー全体のおよそ10% 程度だと言う。それ以外の大多数の選手が知られることなく消えていく。
何となく、夏草や兵どもが 夢の跡、と頭に浮かぶ。
駐車場まで戻り、さらに施設の周辺も少しだけ走ってみた。赤茶けた地面にサボテンが点在する、いかにもアリゾナともいうべき風景と、あとは不愛想な倉庫街に囲まれている。選手達は長いキャンプ期間中、野球以外に一体何をして過ごしているのだろうか。
そんなことをぼんやり考えながら、1時間ほどのんびり走った。途中すれ違ったのは、フィールド整備をしているらしき電動カート数台のみ。誰にも邪魔されないジョギングは、考えことをするには最適な時間だ。
フェニックス近辺には、このようなメジャー施設がいくつも点在する。どこも球場は収容観客数が1万人程度のサイズであることが多く、ファンと選手の間の距離も短く、親密なものとなる。熱心な野球ファンの多くが公式戦よりむしろ春季キャンプ地を訪れることを楽しみにする理由がわかる。次は賑やかな春季キャンプ期間中に来てみたいが、そうなると野球は存分に見ることは出来ても、こんな風にのんびりと走る贅沢は望むべくもないだろう。