「復興はスピードが命!」ランナーを取り戻す熊本の仕掛け人、佐藤雄一郎さんにインタビュー

故郷・熊本のために――

2016年4月14日、熊本県を中心に震度7(マグニチュード6.5)の大地震が発生しました。その2日後にもマグニチュード7.3の地震が襲い、死者120名、負傷者2000人以上、住家8000棟以上が全壊(消防庁応急対策室公表資料より)。被害総額は4兆円を超えると推測されており、甚大な被害を受けました。

現在ではメディアで取り上げられる機会も減りましたが、今なお避難所生活を余儀なくされている方も多く、〝風評被害〟による観光客の減少も深刻化されているようです。

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写真は震災直後の熊本

熊本復興へ――。

そんな想いを胸に、今日も故郷・熊本を走り回っている人がいます。ラントリップのコースディレクターでもあり、「有限会社ユニバーサルフィールド」熊本支社・熊本プロジェクト担当を務める佐藤雄一郎さんです。

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同社は宮崎県宮崎市に本社を持ち、2012年1月に法人化したばかりの新しい会社です。主な事業内容は、

  • スポーツイベントの企画・運営
  • 大会記録計測業務 等

「~スポーツを通して地域に新たな魅力を創造する~」という会社のスローガンのもと、熊本プロジェクト担当である佐藤さんは『キタクマ・ヤッホートレイル』、『金栗四三翁マラソン大会』など〝ランニング〟にまつわる大会を担当してきました。

震災後は大会開催が難しい状況だったそうですが、7月9日には『熊本復興支援・阿蘇クロスカントリー駅伝&ハーフマラソン』を開催。最需要期の夏休み前に復興をPRしたいことから「40日」という超短期間で大会を開催したそうですが、290名ものランナーが参加。阿蘇市の特産品を詰め合わせた「阿蘇支援パック」も目標を大きく上回る販売個数を記録し、〝復興祈念大会〟は大成功に終わりました。

「復興はスピードが大事。時間を掛ければ街は元に戻りますが、観光地の熊本にとって、〝風評被害〟で去って行ったランナーの方や観光客に戻ってきてもらうことは必須です。阿蘇のクロカンコースはほとんど直接的な被害はありませんでしたし、その状況を早く知ってもらいたかったんです。イベントは〝スポット〟でしかありませんが、実施により沢山のメディアに露出することが可能となります。今回100万人以上にリーチが出来たので、少なからず復興PRが出来たと感じています」

陸上競技に没頭した学生時代から、商品のプロモーションを手掛けるビジネスマンへ

佐藤さんは熊本県立鹿本高校から帝京大学へ進学。高校時代は「駅伝部」に所属し、同じ先生が教えていたという「陸上競技部」の1学年後輩にはロンドン五輪陸上男子100m代表の江里口匡史選手(大阪ガス)も在籍。現在でも交流は続いているようで、「夫婦同士で食事をする」ほどの仲だそうです。

帝京大学時代は学生三大駅伝を目指し、「駅伝競走部」に所属。〝箱根駅伝シード校〟のレギュラーにはなれなかったそうですが、現在佐藤さんが手がけている大会のゲストランナーには、当時学生駅伝で活躍した熊本出身選手が多く招かれています。

「学生時代のつながりは感じますね。直接お会いしたことのない人でも、『陸上をやってきた』という経験でご縁をいただくこともありますから。本当に感謝です」

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帝京大駅伝競走部時代の佐藤さん(ゼッケン393番)

大学を卒業後は、「株式会社CDG」というプロモーション会社に入社し、商品のブランディングや販路拡大などを担当。ここで「ゼロからビジネスを作るノウハウを叩き込まれた」そうで、100円~数千万円する商品のプロモーションを経験。5年半の勤務で東京、大阪、京都、大阪と4回もの引っ越しをしたとか。

大学4年間を含め、ちょうど故郷を離れて10年。「大都会で学んだことを生かして、(故郷に)恩返ししたかった」という佐藤さんは、3つの夢を叶えるために熊本に帰ることを決意します。

①熊本の特産品PR

②阿蘇に世界的なトレイルランニングレースを作ること

③熊本伝統工芸『肥後こま』のブランディング

熊本帰郷後は「株式会社えがお」を経て、現在の「有限会社ユニバーサルフィールド」に就職。「地域に新しい魅力を創造する」ことを目的に日夜駆け回っているそうです。

そうした事業の他にも、佐藤さんが片や取り組んでいることがあります。それが『肥後こま』。熊本城主・加藤清正の時代より400年受け継がれる伝統芸能で、幼少期に祖父から教えてもらったとのこと。昨年、双子の弟・興一郎さんとユニットを組み、全国各地でイベントを行っています。こうした熊本伝統芸能のPRも、佐藤さんの〝使命〟なのだと話してくれました。

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前列左から2人目が佐藤さん。後列左はお笑いコンビ「オリエンタルラジオ」の2人

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左から佐藤さん、お世話になっているというこま職人さん、双子の弟・興一郎さん

そんな佐藤さんには、ある〝野望〟があると言います。

「世界から集まるスポーツイベントを熊本で展開することです。九州ではこうした国際イベントはまだありません。世界中に熊本の知名度が広まるようなビッグイベントにしたいですね。楽しみにしていてください!」

最後に、せっかくなので読者の皆さんに向けてメッセージをいただいた。

「全国・海外も含めて沢山の方々に支援していただいたおかげで、日々復興に向かっています。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。熊本城を始め、復興の姿を見る事が出来るのも期間限定。ぜひ熊本へ遊びに来てください!」

プロフィール

佐藤 雄一郎 (さとう ゆういちろう)

「「復興はスピードが命!」ランナーを取り戻す熊本の仕掛け人、佐藤雄一郎さんにインタビュー」の画像1987年9月24日生まれ、熊本県和水町出身(箱根駅伝の創設者『金栗四三』と同郷)。中学校から陸上を始め、三加和中学校→大牟田高校→鹿本高校(転校)→帝京大学卒業。 大学卒業後は㈱CDGに入社しプロモーションのノウハウ勉強。その後、2015年に故郷・熊本に帰郷し、地元の良さを生かしたビジネスモデルを模索。現在は(有)ユニバーサルフィールド 熊本営業所・熊本プロジェクト担当。仕事の片や熊本の伝統工芸『肥後こま』のブランディングも行っている。双子の弟と『佐藤兄弟』ユニットを組み、メディアの露出も増やしている。

仕事のテーマ:作品に関わる人の思いを表現すること。

ユニバーサルフィールド:http://universal-field.com/

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