「○○ができる選手が良い選手になる。」青山学院大学の原監督が可能性を感じる選手像とは?

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先日、熱田神宮(名古屋市)から伊勢神宮(伊勢市)までを走り抜けた全日本大学駅伝。同大会で、青山学院大が初優勝し、今シーズン二冠を達成。来年1月に開催される箱根駅伝で、三冠を目指しています。

青山学院大学が強いのは今年度だけではありません。2015年に箱根駅伝初優勝、そして、2016年は39年ぶりの完全優勝で連覇。いま、大学駅伝界で実力のある学校の一つとされています。

同大学の特徴として、監督の原晋さんのユニークな経歴があります。原晋監督は、中学時代から陸上キャリアをスタート。中京大3年生時に全日本インカレ5000mで3位入賞し、卒業後は陸上部第一期生として中国電力に入社。しかし、ケガに見舞われ5年目に引退してしまいました。

そこからの原監督は、社員・提案型営業マンとして再スタート。新商品を全社一売り上げるなど、その営業スキルを発揮しました。その後、特にコーチングを学ぶことなく青山学院大学の監督に就任。営業時代に培った「組織構築術」「人材育成術」を駆使し、同大学を大きく成長させたのです。

そんな原監督は、どのような人材に価値を感じるのでしょうか。自著『人を育て組織を鍛え成功を呼び込む勝利への哲学』で、原監督の持論が明かされています。

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原監督が可能性を感じる選手とは、「感性や表情豊かな選手」。

これは、どういうことでしょう。

「ただ黙っておとなしく言うことを聞いている子じゃなくて、コミュニケーションが出来る子がいい選手になる。陸上はどうしても個人プレーになりがちなんだけど、今、あえて全体ミーティングで、“それじゃだめだ”ということを言っています。世の中に出たら、ただ自分だけが走ればいいわけじゃないんだからなって。だから陸上選手は会社の中で出生しないんだよってね」(同書より)

これは会社員の経験があるからこそ指導できること。つい黙々と走り、自分の世界に浸ってしまいがちな陸上競技ですが、それではダメなことを選手に指導しているのです。

確かに多くの選手が、卒業後は一般的な会社の中で働くことになります。「青山学院大学で箱根駅伝に出た」と言って、許してもらえるのは本当に最初の頃だけ。いや、そういったアドバンテージも通用しないこともありますし、そもそも過去の経歴に頼るだけでは、会社で活躍できる可能性は皆無。

そこで原監督が大切だと分析しているのが、コミュニケーションや感情表現なのです。

「コミュニケーションが出来る子がいい選手になる」、こう語る原監督のチームで、印象的なシーンがありました。2016年連覇の原動力となった神野選手です。2015年の箱根では「山の神」である柏原竜二さんが出した1時間16分39秒の参考記録を24秒も更新。

「完全なる柏原超えですよ!超人、神野です」と原監督がユニークに表現すると、神野もレース後に気の利いたコメント。選手招集の際に、「かみの」ではなく「じんの」と呼ばれたことを明かし、「これで“かみの”と覚えてもらえたでしょうか」と言ってのけたのです。陸上競技の結果だけで認めてもらうのではなく、こういった表現力や自分の言葉で語れることが、原監督が可能性を感じる部分。

また、チームメートの山村も「監督の胴上げは優勝の重みを感じました。神野は空高く飛んでいきました」と自由に表現するなど、コメント力も優秀。こういった一人の人間としての成熟が、このチームの急成長に繫がっているのではないでしょうか。

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