ランナーは○○○○へのケアを怠りやすい? 注目の栄養素『還元型コエンザイムQ10』がランナーに与えるメリットとは
Jun 28, 2024 / COLUMN
Jun 30, 2024 Updated
4月13日(土)に東京都内で開催されたセミナー『マラソンランナー必見!エネルギーを生み出す裏技とは?「身体の仕組みを学ぼう!」』。本セミナーではプロ野球・阪神タイガースのコンディショニングアドバイザーを務め、ランニングメディアでの連載など多数の実績を持つ桑原弘樹さんが登壇。司会進行役は日本一走るアナウンサーとして知られる長谷川朋加さんが務めました。
前回の記事では、パフォーマンスを高めるために競技特性の負の部分をカバーするための栄養素について桑原さんよりお話いただきました。そのなかで取り上げられたのは、走ることで発生する活性酸素による負の影響でした。
■前回の記事
活性酸素を減らすためにカギとなる栄養素こそ、セミナーの中で頻出した栄養素『還元型コエンザイムQ10』だと桑原さんは言います。本稿では還元型コエンザイムQ10の効果についてお届けします。
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疲労に悩むプロ野球選手へ行った『活性酸素』へのアプローチ
桑原:活性酸素に関する負の遺産(影響)はランナーに限った話ではありません。例えば、プロ野球の選手は1試合あたり約3時間かかりますが、外野の選手はボールが飛んでこない時間の方が長い。ベンチで控えている選手は安静にしている時間が多くあると思います。試合だけを見ると活動時間が短く感じますが、プロ野球選手の練習量は非常に多いです。
春からシーズンがはじまり、クライマックスシリーズが終わる秋まで身体を動かす。ただシーズンの幕が閉じても若手の選手はフェニックス・リーグといった試合があったり、普段は交流の少ないチーム同士で試合をしたり、1ヵ月ほど秋季キャンプをしたりーー。プロ野球選手が休めるのは12月の1か月間だけであり、1月になったら自主トレーニングをはじめ、2月からは再びキャンプがはじまります。そのためほぼ1年を通してトレーニングを続けているのです。
桑原:プロ野球選手は1年を通じて動き続けているので、多くの選手には調子の波があります。選手たちはその波のピークをどのタイミングにもっていくかを考えています。おそらく春ごろには選手たちの疲れがたまり、1回目の疲れのピークが来ているでしょう。梅雨の湿気や初夏の暑さなど、疲れは人によってさまざまです。ただプロ野球選手の悩みの多くは“疲れが取れない”ことにあります。
私は7年ほどプロ野球の選手を見ていますが、最初はどうすれば選手たちの疲労をケアできるか、わかりませんでした。グリコーゲン(糖質)のリカバリーを試してみたり、マラソンのノウハウを用いてみたりーー。試行錯誤するなかで辿り着いたものこそ、活性酸素へのアプローチでした。
活性酸素に興味のある選手を対象に、その選手が疲れ始める前に抗酸化剤を少し多めに摂取させて様子を見る。すると抗酸化剤を摂取した選手たちは疲労が残りづらい体になっていることがわかりました。これは野球選手だけでなく、とくにランナーには効果的な疲労対策方法としておすすめできるのではないかと思います。
効率よく活性酸素に機能する『還元型コエンザイムQ10』
桑原:活性酸素は体に溜まっても、痛くもかゆくもありません。そのため対策が後回しになってしまうことが多いです。しかし自分の気づかないところで体を蝕んでいきます。
“酸化”とは、酸素が物質から電子を奪い取ることを指します。物質を構成する大元は原子ですが、その原子はプラスの電気を帯びた陽子。そしてマイナスの電気を帯びた電子からできています。本来これらが存在することでプラスとマイナスのバランスを取っています。しかし酸化することで、マイナスを帯びた電子が酸素に奪い取られてしまいます。
健全な酸素の一生とは、身体の中に吸収され第二工場・電子伝達系にたどり着き、水素と結びついて水になることです。3大栄養素を含んだ食品を食べると、第一工場・クエン酸回路で食品から水素を取り出します。この水素が第二工場に渡されたあとコエンザイムQ10に渡されて、最後は酸素と結びつく……。そのときに活動の源となるATPが生成されます。
桑原:酸素が水素と結びついて水になると、その過程で活性酸素が生まれることはありません。しかし酸素は呼吸を通じて体内へ吸い続ける反面、水素は食品から取り出した分しか生成されないため、圧倒的に酸素が余ってしまうのです。ましてや長時間ランニングなどの有酸素運動を行うと、吸い込んだ酸素と体内の水素のバランスが崩れてしまい、酸素が大量に余ってしまいます。
余った酸素、活性酸素には電子の空席が2つあるため、とにかく電子が欲しくてしょうがない物質です。そんな活性酸素は電子を得るためにどうするか。それは身体の中で電子を取りに行きやすい生体膜へ行きます。生体膜に入っているのは不飽和脂肪酸です。
活性酸素は生体膜にたどり着くと不飽和脂肪酸に入り込みます。すると自分の生体膜、いわゆる細胞膜が活性酸素によってどんどんと錆びついていくのです。体内の活性酸素が増えても痛みやかゆみは出ませんが、この現象が積み重なってしまうことで倦怠感が続いてしまうといった、疲労が取れないという状態になってしまいます。
疲れが抜けないまま次のトレーニングが来て、疲れがたまっているなかでも頑張って走ってしまうーー。この繰り返しで疲労はたまってしまいます。
桑原:そんな症状を解決するためにはどうすればいいか。押さえておきたいことは、活性酸素は食いしん坊なだけということです。つまりは不飽和脂肪酸の身代わりとなるものが、活性酸素に入ってあげればいいのです。
簡単に言えば抗酸化剤を摂取するといいでしょう。身近な抗酸化剤を上げるとするならば『ビタミンC』のサプリメントです。安価であり、店頭でも手に入りやすい栄養素です。ビタミンCを摂取すると活性酸素が喜んで入っていきます。
ビタミンCは水溶性ビタミンなので、細胞と細胞の間に入り込み、活性酸素の身代わりとなります。また脂溶性ビタミンであるビタミンEも揃えて摂取するといいでしょう。活性酸素への対策はビタミンCをはじめとする抗酸化剤の摂取がベースにはありますが、ここで還元型コエンザイムQ10が出てきます。
還元型コエンザイムQ10の役割は、先述した第二工場で材料をきちっと受け取り次に渡すことですが、活性酸素の身代わりにもなってくれます。しかも活性酸素は第二工場で生まれてしまうので、第二工場で機能する還元型コエンザイムQ10は非常に効率が良いです。還元型コエンザイムQ10はATPを作るという重責を担った上で、私たちを知らず知らずに蝕んでいる活性酸素も処理してくれる……本当に素晴らしい物質です。
『還元型コエンザイムQ10』とともに抑えておきたい栄養素とは?
桑原:還元型コエンザイムQ10にはローディングの効果もあります。『ローディング』という言葉は翻訳することがむずかしい単語ですが、言うなれば“負荷をかける”という意味です。大量に飲むことをサプリメント的にはローディングと言います。
例えば走る前に喉が渇いていなくても水を多く摂取しようとすることは『ウォーターローディング』と言います。走る1時間ほど前から約500mlの水分、それも電解質が入ったスポーツドリンク等を飲むことが推奨されます。瞬発的な力を発揮する際に必要なアミノ酸・クレアチンもローディングしますね。
同じように還元型コエンザイムQ10にもローディングの効果があり、レースがあるとしたら1週間ほど前からいつもの約3倍の量を摂取すると効果的です。先ほど(前回の記事に掲載)還元型コエンザイムQ10の推奨量は100mg/ 日と言いましたが、朝・昼・晩など分割して摂取し、血液中の還元型コエンザイムQ10の濃度をぐっと高めた日々を送るとATPの産生能力は上がります。その結果として抗酸化作用が高まることで疲労が抜けやすくなり、マラソンのパフォーマンスが上がりやすくなります。
桑原:還元型コエンザイムQ10は免疫にも関与します。ランニングの負の遺産として免疫機能が落ちてしまうことをお話しましたが、そもそも免疫機能は向上することがありません。そのため免疫は落とさない、維持するという考え方が大切です。
免疫機能へ意識を配ることも活性酸素に意識を向けることと同じくらい難しいでしょう。風邪になっていないとき、健康なときにウィルスを倒してくれる免疫への感謝の気持ちは湧きにくいですよね。そのため免疫を維持することに対して普段から意識を持つことも大切です。ビタミンCにも免疫細胞を活性化する効果があるので有効ですが、私がおすすめしたいのは『グルタミン』です。
免疫を具体的に言うと免疫細胞となりますが、免疫細胞にはいろんな種類があります。役割で簡単に分類すると『自然免疫』と『獲得免疫』です。もっとわかりやすく言うと『警察』と『軍隊』とも表現できます。自己ではないなにかが身体に入ってきたときには排除する……それが免疫です。
桑原:私たちの身体はタンパク質でできていますが、タンパク質を食べると消化されてアミノ酸になります。つまりタンパク質のまま身体の中に入れないのです。
タンパク質でできている自己に対して、別のタンパク質が入ってきたら免疫によって排除されてしまうーー。そのため身体に影響を及ぼさないように、タンパク質はその最小単位であるアミノ酸まで分解されるのです。それほど身体には“別の物質を排除しよう”という力を持っています。排除する機能の具体的なものが、警察のような自然免疫と、軍隊のような獲得免疫です。
道に迷ったら正しい道を教えてくれたり、落し物を届けてくれたりなど、警察は諸々のことをやってくれます。また警察の中にもいろんな役割があるように、自然免疫も種類によって様々な役割があります。
一方で軍隊は警察では太刀打ちできないものに対処してくれる存在です。免疫で言うならば獲得免疫であり、予防接種などのワクチンも獲得免疫に分類されます。コロナウィルスも自然免疫では対応することの難しいものであり、1度罹患すると獲得免疫ができるため、再び罹患する可能性が低くなるのです。
桑原:そんな免疫細胞にとって、ビタミンCや乳酸菌はそれぞれに対応した免疫細胞によい影響を与えます。しかしグルタミンは非常に多くの免疫細胞によい影響を及ぼすのです。
とくにランナーの皆さんはパフォーマンスを上げるために、足し算的なアプローチだけじゃなくて負の遺産をつくらないこと、負の遺産をどうやって処理するかといったことに意識を持っていただくとよいと思います。
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日々のトレーニングに精を出す頑張り屋な人ほど、頑張りすぎてしまい調子を崩すことが多いはず。トレーニングとは異なるアプローチでパフォーマンスを高める方法を教示した桑原さんの講演は、頑張り屋なあなたの悩みを解決するヒントに成り得るはずです。
還元型コエンザイムQ10について
ランナーに必要なのはエネルギー産生力。エネルギー産生に不可欠な『還元型コエンザイムQ10』についてはカネカ健康カガク・ラボで学ぶことができます。
カネカ健康カガク・ラボ
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