すねの痛み「シンスプリント」とは?原因と予防法をランニングコーチが解説

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ランナーのケガの悩みで膝、足裏に次いで多いのがすね。とくに脛骨(けいこつ)の周りにある骨膜が炎症を起こす『シンスプリント』はランナーが悩むスポーツ障害のトップ3に入ります。『シンスプリント』は走り始めたランナーに多いと言われていますが、長年痛みに悩まされている方も多くいるはず。

マラソンシーズンを思う存分楽しむためにも、ケガの予防法を知っておくことは大切な要素。そこで、こちらの記事では初心者ランナーからシリアスランナーまで多くのランナーをサポートしているプロランニングコーチ・黒川遼さん(以下、黒川さん)にすねの痛みの解消法やケガ防止法について、スポーツMCのヤッホーカレンさん(以下、カレンさん)が伺いながら実践します。

「シンスプリント」の原因や炎症を起こしやすい走り方とは?

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(左から)黒川さん、カレンさん

カレン:シンスプリントはどのような痛みや症状があらわれるのでしょうか。

黒川:シンスプリントは『脛骨過労性骨膜炎』というケガの総称です。すねの各部位によって様々な痛みはありますが、今回はランナーに多いすねの内側下1/3の痛みについて取り上げていきます。

カレン:そもそも、なぜランナーの多くはすねの内側を痛めてしまうのでしょうか。

黒川:ランニング動作により脚が何度も外に引っ張られて、内側が伸ばされ骨膜に炎症を起こしてしまうことがシンスプリントの原因となります。後脛骨筋やふくらはぎの深いところにあるヒラメ筋、指からつながっている長趾屈筋などが関係しています。

カレン:やはり、走り過ぎることで起こりやすいのでしょうか。

黒川:もちろん、脚のオーバーユースが大前提になりますが、アーチが高い方、扁平足、すねがカーブを描いている方などがなりやすいですね。

カレン:生まれつきそういう骨格の方もなりやすいということですね。

黒川:ランニングフォームでも、着地の時に地面を叩く踏み込みの強い方、後ろに蹴ってしまう方も痛くなりやすいです。

カレン:走るときに必死にバンバンと足を蹴ってしまうこともありますからね。多くの方が気になるのは、すねの状態だと思いますが、チェックの方法を教えてください。

まずはすねの状態をチェックすることが大切

1. すねの内側を圧迫して痛いか確かめる

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黒川:すねの内側を圧迫したときに痛みが発生するか、押して動かしたりして確認します。すねの真ん中や上の方が痛む場合は疲労骨折の疑いも大きくなります。下の方はシンスプリントか骨折に及んでいるか分かりにくい部分になりますが、叩いて響く痛みがあれば骨折の可能性があります。医療機関で受診しましょう。

運動後に痛い場合は運動を継続できますが、ウォーミングアップの段階で痛いときは要注意、ウォーミングアップ後にも痛い場合は絶対に運動(ランニング)しないでください。

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表:疼痛出現状況と対応

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黒川:本当に痛い人は足首を前足部から上げ外側へ向ける、更に指を手でつかんで反らせるチェックを行うと、すねの内側が引っ張られるため、痛がります。

2. 理想的な状態を確かめる

カレン:まずは痛みを確認しましたが、理想的な状態はどのような状況でしょうか。

黒川:まず、足にアーチが作られていることが前提となるので自然にしゃがめるかどうかを試してください。足の指を使えるかどうかも大切になりますので、じゃんけんのグーチョキパーのように指を動かしてみて、問題なくできれば理想の状態だと言えます。

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3. 足の指全体を開く(パー)

3. 重心移動のための股関節屈曲(引き込み)

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黒川:次のチェック方法として股関節の動きを見ていきます。着地時にうまくクッションの役割を果たしているかが重要になります。

スクワットでお尻を落とせるかを確かめていきましょう。腰が丸くなって落ちてしまうと股関節がうまく引っ込められないので、ランニング動作ではクッションの役割を果たせず苦しい状況です。また、膝が内側に入りやすいと爪先が外側へパカッと開くので、シンスプリントのリスクになります。

4. 重心移動のための股関節伸展(伸び)

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黒川:もう1つ、お尻を使えることが重心移動につながるポイントになるのでチェックしていきます。

うつ伏せになり、膝を伸ばしたまま真っ直ぐに足を上げましょう。足が外側の方にいきやすい場合、お尻の下側の筋肉を使えていない可能性があります。お尻が使えていない人は足があまり高く上がらない傾向が見られるので、その点もチェックポイントとなります。

シンスプリントの予防法&改善エクササイズ

ここまで、シンスプリントのチェック方法をお伝えしてきました。ここからは予防法と改善エクササイズを黒川さんが5つ紹介します。

今回紹介するのは、Runtrip Magazineで公開しているケガ予防法の腸脛靭帯編足裏編で紹介したエクササイズができることが前提になります。こちらの2つを確認してから取り組んでいきましょう。

1. 下腿内側筋の滑り改善

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まずは、すねの内側へダイレクトにアプローチするエクササイズをご紹介。座った状態で膝を90度に曲げ、かかとを床につけた状態で行いましょう。

①すねの内側を指でキュッと押さえる。両手を使うと更に掴みやすい

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②かかとは床につけたまま、すねを押さえて前足部を上下、横方向へパタパタと動かす。動きに慣れたら前足部を回す

③余裕のある方は手で押さえる部分をすねの下から上まで移動して、②の動作を続ける

このエクササイズを丁寧に行うことにより、ヒラメ筋の動きも良くなり内側のストレスが軽減されます。ただし、痛みがあるところは避けて取り組みましょう。

2. 距骨後方滑り改善(足首の押し込み)

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続いては、ランニング動作のなかですねが前へ倒れるときに後方へ移動する『距骨』を押し込む動きを実践。距骨は、かかととすねの骨の中央に位置します。

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①立ち膝の姿勢になる

②足首前方のくぼみができる部分に、親指を押し当て体重を乗せるように膝を前へ出す動作を繰り返す

黒川:注意点として、膝を前方へ出す際に内側に入ると悪いクセになるので、膝は外側に持ってくるイメージでつま先の方向に膝がくるように動かすことが大切です。

3. 足趾屈筋と足部内在筋の活性化

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3つ目に紹介するエクササイズは足の指先でタオルをたぐり寄せる『タオルギャザー』。足元や足首を自由に使えるようにするのが目的です。

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①すねを動かし過ぎないように意識しながら、タオルを足の指でたぐり寄せる

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余裕のある方は、レベルアップしたエクササイズもご紹介。『足部内在筋』を使えるようにする、ショートフットエクササイズ(落ちたアーチを引き上げる動き)を行なっていきます。

①足の指を使わずに、グッとアーチを引き上げる

②母趾球とかかとを近づけるようなイメージで動かすと引き上げられる

黒川:何回も繰り返すことによって感覚を掴むとアーチが上手く作れるようになります。

4. 股関節の動的な活性化

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4つ目は、股関節筋群の動きを活性化させるバリスティックストレッチ(反動を使った)を行います。

①壁に手を当てて、骨盤を動かしすぎないように意識しながら脚を振り子のように前後へ動かす。股関節周りが動くようになり腸腰筋やお尻に刺激が入る

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②慣れたら反対側の腕を脚とクロスさせるように動かし、上半身のひねりの動きも入れる

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③壁に手を当て、足を内側から外側へと左右に動かす

④慣れてきたら反対側の腕を大きく脚にクロスさせるように左右へ振り、上半身をダイナミックに動かす

5. 重心移動改善(踏み込みと振り上げ)

最後は、ランニング動作のなかで脚だけでなく股関節全体をうまく使いながら重心移動をできるようにするエクササイズを行います。

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①前方の膝を軽く曲げた状態で、骨盤を前方へ軽く移動させて踏み込む重心移動を繰り返す

②踏み込む動作を数回繰り返したら、更に骨盤を前方に推移させると足が自然に前に出る(前方へ自然に放り投げられるように進む感覚を掴む)

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③踏み込む動作を行うと後ろの足が上がりやすくなり、地面から持ち上げると臀筋やハムにも刺激が入る。重心を前後に移動させてシーソーのような動きを行い、重心をコントロールする感覚を養う

最初はエクササイズの動作が難しい方もいるので「繰り返し実践して、動作を身につけていくと重心移動が上手になります」と黒川さんは言います。

エクササイズを実践して楽しくランニングしよう

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写真:Adobe Stock

黒川さんに教えていただいた『シンスプリント』の改善エクササイズ。身体の動かし方は繰り返し行うことによって身につき、改善につながっていくのでコツコツと続けることが大切です。

マラソンシーズン真っ只中の現在、トレーニングによりスピードを出す機会も増えるのでケアもしっかりと行なっていきましょう。

【動画からご覧になる方はこちら】

(文・福島洋子/ 写真:辻晋太朗)

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