【タイプ別】アディダス厚底シューズ3モデルの特徴と履き分け方を徹底解説!
Jan 19, 2022 / SHOES
Feb 06, 2022 Updated
厚底レーシングシューズ『ADIZERO ADIOS PRO 2』をはじめ、話題のランニングシューズが数多く登場しているアディダス。昨年12月には従来モデルから大幅にアップデートされた『ADIZERO TAKUMI SEN 8』も登場し、その特徴や他モデルとの違いについて気になる方は多いのではないでしょうか。
こちらの記事では『ADIZERO ADIOS PRO 2』、『ADIZERO TAKUMI SEN 8』、『ADIZERO BOSTON 10』の特徴やそれぞれの履き分け方について紹介します。今回もRuntripお馴染みのシューズアドバイザー 藤原岳久さんに解説していただきました。
藤原さんは多くのシューズブランドを渡り歩き、シューズ販売に携わり20年以上。47歳でマラソン自己ベスト2時間34分28秒を出し、現在も走るシューズアドバイザーです。
「TAKUMI SEN 8」と「ADIOS PRO 2」の違い
大森:今回は発売されて間もない『ADIZERO TAKUMI SEN 8』を中心に『ADIZERO ADIOS PRO 2』『ADIZERO BOSTON 10』を含めたアディダス厚底シューズ3モデルを比較していきます。藤原さんよろしくお願いします。
藤原:よろしくお願いします。まず、『TAKUMI SEN 8』と『ADIOS PRO 2』の違いは、新谷仁美選手(積水化学)や大塚祥平選手(九電工)の履き分け方が象徴的。駅伝を主戦場としている新谷選手は『TAKUMI SEN 8』、主にフルマラソンを走る大塚選手は『ADIOS PRO 2』をレースで使用しています。
新谷選手はメディア向けイベントで『TAKUMI SEN 8』の履き心地を「昨今の潮流である厚底レーシングシューズとは異なり走りやすい」と話していましたが、マラソンでも『TAKUMI SEN 8』を着用するか質問したところ「マラソンでは履きません」と断言。やはり、エリート選手たちもレースの距離に応じてシューズを履き分けています。
大森:フルマラソンで『ADIOS PRO 2』を着用する大塚選手も「短い距離のレースでは『TAKUMI SEN 8』を履いてみたい」と話していたそうですね。
藤原:はい。私も新谷選手や大塚選手と同じように考えています。それぞれのシューズの構造を解説すると、ソールの踵とつま先の厚さの差である『ドロップ』に大きな違いがあります。
『TAKUMI SEN 8』は6mm、『ADIOS PRO 2』は8.5mm。多くのシューズは、ドロップが高くなるとストライドを伸ばしやすくなります。
藤原:『ADIOS PRO 2』のような厚底シューズは、反発弾性が高いミッドソールと剛性のあるカーボンプレート(アディダスは『エナジーロッド』と呼ばれる5本骨状バーを搭載)による推進力に加えて、ソールに傾斜(ドロップ)を付けることでストライドの伸長を促します。
大森:ドロップがあることで前へ倒れやすくなり、『ガイド感』が感じられるようになりますね。
藤原:ソールの傾斜が急な『ADIOS PRO 2』は構造的に、ガイドの強いデイリートレーナー(トレーニング向けシューズ)を超軽量化して、ハイバウンドなミッドソールを採用したシューズ。接地時に跳ねるような感覚をもたらし、長いストライドへ繋がります。
藤原:ドロップが低い『TAKUMI SEN 8』は、接地感が感じられる構造。脚を回転させることによりスピードを出すシューズです。
大森:なるほど。そのため、脚を速く回転してスピードを出せる『TAKUMI SEN 8』が短い距離向け、長いストライドにより歩数を減らせる『ADIOS PRO 2』が長い距離向けのシューズということになるんですね。
「BOSTON 10」はデイリートレーナー?レーシングシューズ?
藤原:そして『BOSTON 10』はミッドソールの半分が安定性の高いEVA素材、もう半分は反発弾性が強い『LIGHTSTRIKE PRO』を採用。さらに、屈曲しやすいグラスファイバー素材を使用した『エナジーロッド』を搭載することで、シューズの反発に対して制御しやすいシューズです。
大森:なるほど。『BOSTON 10』は跳ねる感覚と安定性、さらに『エナジーロッド』の恩恵を程よく受けられる“いいとこ取り”のシューズだと言えますね!
藤原:そうですね。アッパーのフィット感やサポートが充実しているにもかかわらず、軽量性を損なわない仕上がり。跳ねる感覚もあり、デイリートレーナーに“何か”の要素が加えられたシューズだと感じます。
大森:藤原さんでも『何か』と形容するほど難しい感覚ですね(笑)もう少し詳しく聞かせてください!
藤原:『BOSTON 10』はグラスファイバー素材の『エナジーロッド』を搭載し、接地時に5本のバーがしなることで推進力をもたらします。レーシングシューズほどのハイバウンドではありませんが、それに近い『何か』が要素として詰まっている印象を受けました。
大森:その印象が『何か』という表現につながっているんですね。読者の皆さんにも、この感覚をぜひ体感してもらいたいです。
藤原:『BOSTON 10』の魅力は跳ねる感覚としっかりとした安定性が両立された点。ランナーによってはフルマラソンのレーシングシューズとしておすすめです。3時間30分〜4時間程度を目指すランナーにぴったりだと思います。
大森:『ADIOS PRO 2』や『TAKUMI SEN 8』を扱う自信がないランナーにとっては、サポートがしっかりとあるためレース用として使用できますね。
大森:この3モデルについてまとめると、『ADIOS PRO 2』は強い反発弾性により大きな推進力をもたらすシューズ。『TAKUMI SEN 8』は回転数を上げるタイプのシューズで短い距離のレースやインターバルトレーニングにおすすめ。『BOSTON 10』は反発性とサポート機能を兼ね備え、多くのランナーが履きやすいシューズという位置付けです。
アディダス厚底シューズ3モデルの特徴や履き分け方を解説してきました。それぞれに適したシーンがあるランニングシューズ。ランナーのスタイルや用途によって最適なシューズ選びをしていきたいですね。ぜひ、藤原さんの解説を参考にしてみてください!
シューズの詳細情報
ADIZERO TAKUMI SEN 8
・価格:¥20,000(税込)
ADIZERO ADIOS PRO 2
・価格:¥26,000(税込)
ADIZERO BOSTON 10
・価格:¥16,000(税込)
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藤原 岳久さん
F・Shokai 【藤原商会】代表
ランニングシューズフィッティングアドバイザー
日本フットウエア技術協会理事 /JAFTスポーツシューフィッター / 元メーカー直営店店長,販売歴20年以上
ハーフマラソン:1時間9分52秒(1993)
フルマラソン:2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン)
藤原商会オフィシャルサイト