強化費「1,350万円」を集めた筑波大、箱根駅伝本戦に26年ぶり出場へ

10月26日に東京都立川市で第96回箱根駅伝予選会が開催され、東京国際大が10時間47分29秒の総合記録でトップ通過を果たした。そのほか、昨年総合17位の筑波大が総合6位と大躍進。1920年(大正9年)の第1回箱根駅伝優勝校(東京高等師範学校:現筑波大学)が26年ぶりに本戦への切符を掴んだ。

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立川は過去最高数の“厚底”フィーバーだった  ©︎2019 Sushiman Photography

暑くてタフなコンディションの熱戦

レース当日は晴れ間が見られ、10月下旬ながらもレース後半には気温が23℃近くまで上昇。その影響で、ほとんどの選手が終盤にペースを落とした。

総合1位の東京国際大は、留学生のイェゴン・ヴィンセント(1年)が個人3位、伊藤達彦(4年)が5位と2枚看板が奮起し、6月の全日本大学駅伝関東予選会に続いてのトップ通過を果たした。上級生を中心にまとまりのあるチームは、箱根駅伝で初のシード権獲得を目指すが、今週末には全日本大学駅伝が控えている。

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伊藤達彦は個人5位(日本人最上位)。東京国際大がトップ通過  ©︎2019 Sushiman Photography

昨年の箱根駅伝予選会で、レースが20kmからハーフマラソンへと1.0975kmの距離が延長されたが、今回トップの東京国際大の総合記録は10時間47分29秒。前回総合10位の山梨学院大の総合記録が10時間46分27秒であったことを考えると、いかにタフなコンディションであったかがわかる。

【総合成績:上位20校】

順位 大学 総合記録
1 東京国際大 10時間47分29秒
2 神奈川大 10時間50分55秒
3 日本体育大 10時間51分09秒
4 明治大 10時間51分42秒
5 創価大 10時間51分43秒
6 筑波大 10時間53分18秒
7 日本大 10時間54分29秒
8 国士舘大 10時間55分21秒
9 早稲田大 10時間55分26秒
10 中央大 10時間56分46秒

 

※総合10位までの大学が第96回箱根駅伝に出場

順位 大学 総合記録
11 麗沢大 10時間57分12秒
12 駿河台大 10時間58分44秒
13 上武大 11時間00分16秒
14 専修大 11時間01分57秒
15 城西大 11時間02分27秒
16 東京農業大 11時間05分05秒
17 山梨学院大 11時間06分14秒
18 大東文化大 11時間06分22秒
19 流通経済大 11時間10分57秒
20 東京経済大 11時間16分21秒

総合4位の明治大は、今年のユニバーシアード10000m銀メダリストの阿部弘輝(4年)を故障で欠き、今年の箱根駅伝で2区を走った中島大就(4年)、4区を走った三輪軌道(4年)などの主力も出場せず。しかし、チームでは中堅クラスの手嶋杏丞(2年)が積極的な走りで9位と奮闘し、明治大の総合4位に貢献した。

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明治大は万全のオーダーを組めなかったが総合4位。創価大も安定したレースで総合5位  ©︎2019 Sushiman Photography

総合5位の創価大は3年ぶりの予選会通過。今年2月に榎木和貴監督が就任した新チームがいきなり結果を出した。

【個人トップ10】

順位 選手 大学 記録
1 L.キサイサ 桜美林大・4年 1時間01分01秒
2 R.ヴィンセント 国士舘大・2年 1時間01分37秒
3 Y.ヴィンセント 東京国際大・1年 1時間02分23秒
4 C.ドゥング 日本大・1年 1時間02分33秒
5 伊藤達彦 東京国際大・4年 1時間02分34秒
6 荻久保寛也 城西大・4年 1時間03分12秒
7 米満怜 創価大・4年 1時間03分19秒
8 J.ブヌカ 駿河台大・4年 1時間03分26秒
9 手嶋杏丞 明治大・2年 1時間03分28秒
10 B.ムルア 山梨学院大・1年 1時間03分38秒

レースは桜美林大学のレダマ・キサイサ(4年)が中盤から抜け出しを図ってそのまま逃げ切り、3年連続の個人1位となった。15kmを4名で通過した日本人の先頭集団は、東京国際大の伊藤が最後の6.0975kmを17分51秒(2:55/km)で走って他を引き離し、今年のユニバーシアードハーフマラソン銅メダリストが力をみせた。

筑波大が26年ぶりに本戦出場

昨年総合17位の筑波大が、26年ぶりに本戦出場を決めた。金丸逸樹(4年)が13位、西研人(3年)が19位、猿橋拓己(3年)が20位と健闘。また、相馬崇史(3年)が40位、 駅伝主将の川瀬宙夢(医学群医学類5年)も53位に入り、上級生の奮闘がチームを鼓舞した。

筑波大は、2011年に『箱根駅伝復活プロジェクト』を発足させ、2015年には弘山勉氏が駅伝監督に就任。弘山監督は、資生堂の監督時代に五輪3大会連続出場の弘山晴美を指導。そして、筑波大での選手時代は箱根駅伝の9区を走り、区間2位を獲得。OB として、母校の再生に5年もの歳月をかけ、念願の箱根駅伝への復帰を叶えてみせた。

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筑波大は上位層だけでなく中堅クラスのレースぶりも光った  ©︎2019 Sushiman Photography

『箱根駅伝復活プロジェクト』開始当初の目標は『5年以内に本戦出場、10年以内に優勝』というものだった。しかし、それから4年後、弘山監督の就任初年度の箱根駅伝予選会では総合22位。そして、本戦通過ラインの総合10位との差が24分56秒という絶望的な実力の開きがあった。

弘山監督は筑波大の強化を目指し、国立大学で困難な強化費の捻出に着手。そこで、2017年からクラウドファンディングを始め、これまで4回で約1,350万円を集めた。年月を重ねるごとにチームは着実に力をつけ、昨年には総合10位との差を8分56秒差にまで縮めた。その差を今回で一気にひっくり返したのだから“お見事”といえる。

箱根常連校が落選・名門校が苦戦

今大会の波乱は、筑波大のジャンプアップだけではなかった。これまで箱根常連校であった上武大(総合13位)、城西大(総合15位)、山梨学院大(総合17位)、大東文化大(総合18位)が落選。山梨学院大は箱根駅伝の初出場から33年連続で本戦出場を果たしていたが、ついに連続出場が途絶えた。上武大も11年連続出場でストップ。

また、城西大は今週末の全日本大学駅伝の出場権を得ており、同大会出場校としては唯一、第96回箱根駅伝の出場権を逃した。

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早稲田大は13年ぶりの箱根予選会で総合9位と苦しんだ  ©︎2019 Sushiman Photography

さらには、駅伝名門校としてチームの再建を目指す早稲田大(総合9位)や中央大(総合10位)も苦戦。早稲田大は13年前の第83回箱根駅伝以来の予選会への出場となった。その時は総合2位の専修大に6分弱の差をつけて圧勝したが、今回はそう甘くはなかった。

今回トップ通過の東京国際大や総合5位の創価大などの新興勢力は勢いを増しており、さらには総合11位で涙を呑んだ麗沢大、総合12位の駿河台大も着々と力をつけてきている。加えて、本格的な強化が始まった立教大は総合23位。筑波大が弘山体制の初年度に総合22位だったことを考えると、総合23位は悲観する順位ではない。

令和初の箱根駅伝予選会は波乱の幕開けとなった。箱根常連校の力が落ちてきているのかもしれないが、新興勢力が着実に力をつけているという印象を強く受けた。とはいえ、箱根駅伝で62回の出場を誇る筑波大の26年ぶりの復活劇は鮮やかだった。

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