レース前イベントが“やたら”楽しい「アディダスランナーズ・シティナイト」って何?
Aug 10, 2017 / EVENT
Apr 26, 2019 Updated
©2017 SushiMan Photography
2017年7月29日にドイツのベルリンで、「アディダスランナーズ・シティナイト2017」というロードレースが開催された。シティナイトとあるが、サマータイムのベルリンは夜の20時でも明るく、10kmのレースの終盤にかけて、ベルリンの都会の大通りの夜の彩りが楽しめる、10000人弱が参加する大規模なロードレースだ。
今回、私・すしマンはAdidas Runners Tokyo (以下AR Tokyo)の一員として参加した。アディダスの本社があるドイツをはじめ、世界中にそれぞれのランナー達のネットワークを形成し、より拡大し続ける都市型ランニングチームのAdidas Runners (以下AR)であるが、今回のイベントには、ヨーロッパを中心にして、25ヶ国31拠点のARのメンバーたちが、このグローバルイベントに参加するためにベルリンの街に集結。
ARのグローバルイベントといえば、2016年12月に南アフリカのヨハネスブルグで、“アディダスランナーズ・オブ・ヨハネスブルグ”が開催され、AR Tokyoからも数名が参加した。そして、今回のベルリンでのこのイベントを皮切りに、今後もARの世界各地でグローバルイベントが開催される予定である。以下に、アディダスがここ最近力を入れている各地のAR間の交流を兼ねた、今回のグローバルイベントの様子をレポートする。前編ではレース概要や、レース前のAR交流イベント、ベルリンのランニングコース紹介を、後編ではレースの様子とAR Berlinのランニング拠点である、ベルリンのランベースの様子をレポートする。
コースをコンパクトにまとめた大都市のレース
今回のロードレースは主に5kmと10kmの距離がメインの種目となり参加者は、のべ10000人弱、さらに10kmには毎年ドイツ代表クラスのエリートランナーが出場しており、今年はドイツ女子マラソンの名ランナーとして90年代に一世を風靡したウタ・ピッピヒさんもアメリカのボルダーからゲストランナーとして参加した。
今回のコースはベルリンの市街地にある観光名所の一つである、カイザー・ヴィルヘルム記念教会の付近を発着点とするコースで行われた。コース上にあるクアフュルステンダム通りは、日本でいえば大阪の心斎橋の御堂筋や、東京の表参道のように、ショッピングが盛んで綺麗に整備されている大通りと言っていい。ただ、ベルリンの街自体は日本の都市部ほど人混みが多くない。
出典:公式サイトより
5kmのコースは、クアフュルステンダム通りを2.5km真っ直ぐ走って、反対車線をそのままレースの発着点であるカイザー・ヴィルヘルム記念教会に向けて2.5km戻ってくるというシンプルなコースだ。
出典:公式サイトより
一方、10kmのコースは2kmほど通りを進んだ後、右折して直進、その後右折して発着点まで戻り、そこからは5kmのコースを走るというコンパクトなコースになっている。ベルリンのような大都市で大通りを封鎖して、ロードレースを土曜日の夕方から夜にかけて開催することは比較的容易ではないが、長くても10kmという距離や、このようなコンパクトなコースに設定することで、交通網の混乱を比較的少なくしている印象である。
そんなベルリンの多くのロードレースについて、ベルリンに在住9年のバッハ和歌子さんは、こう話す。
「ベルリンでは年間を通して多くのスポーツイベントが開催されます。ベルリンマラソンを始め、ランニングイベントはマラソンやハーフ、5km、10kmと各距離のレースがあります。その中でもベルリンの夜を走る今回の“シティ・ナイト”は短いベルリンの夏を象徴する10000人規模の10kmのレースで、フェスのような楽しいイベントなんですが、優勝タイムは30分を切ってくるというエキサイティングなレースが展開されます」
また、和歌子さんは、
「なかにはこんなレースもあるんですよ!」
と意気揚揚に私に教えてくれた。
「湖の多いベルリンでは“スイム・ラン”という、泳いで走って泳いで走ってを繰り返してゴールを目指す (つまりシューズ履いたまま泳ぐ!)レースや、“クロス・デイズ”という、軍用地で開催される、軍隊の訓練のようなタフで遊び心満載なレースも人気があります。また、夏の平日に開催される5人×5kmのリレーマラソンは、なんと参加チーム5400、合計27000人の参加者なんです!!仕事終わりに同僚や家族とピクニック感覚で参加しています。5kmというフレンドリーで優しい距離、仲間と走る楽しさ、ベルリンの夏の爽快さ… 普段走らない人でもこれを機にランニングを始める人も多いんです」
ベルリンやドイツの人たち、ランナーたちはこういったベルリンマラソン以外の様々なベルリンのレースにも参加して楽しんでいる様子がうかがえた。その中の一つが今回のアディダスランナーズ・シティナイト2017なのだ。
ベルリンの街並みとランニングコース紹介
今回のロードレースやベルリンマラソンなどもそうであるが、レースの前後にベルリンの歴史や街並み、また観光者向けのベルリンのランニングコースなどを知っておきたいものである。歴史や街並みについては、ベルリンの壁を筆頭に、ブランデンブルグ門、ベルリン大聖堂、聖ニコライ教会など、いたる観光地でその壮大さや歴史を感じることが出来る。そのようなベルリンの定番の観光スポットもおさえたランニングコースは以下である。
①ブランデンブルグ門とティーアガルデン周辺コースその1 & その2
ベルリン観光の定番スポットであるブランデンブルグ門だけでなく、国会議事堂やシュプレー川、そして広々としたティーアガルデンを自由に走ることのできるコース。
ベルリンの中心地からもそう遠くない、ベルリンの壁を見学できるコース。
ベルリンの東に位置するアートギャラリーでもあるベルリンの壁とのどかなシュプレー川を横目に走ることのできるコース。
ベルリンの大定番でもある主要観光地の他にも、ベルリンの市街地の独特な雰囲気を感じることの出来るコース。
ベルリンの中心地からは少し離れているものの、もともと空港であった場所を開放している、広々としていて開放的なコース。
世界各地からARのメンバーたちが集結
今回ベルリンには25ヶ国31拠点から、総勢800名ほどのARのコアメンバーが集結した。当然ではあるが、国も違えば、言語も食事も宗教観も価値観もまるで違う。一つだけ共通点があるとすれば、皆ランナーであり、ARのメンバーであるということある。参加した各ARの拠点の一覧は以下である。
【ヨーロッパ:18ヶ国22拠点】
・ドイツ:ベルリン、フランクフルト、ハンブルグ、ミュンヘン
・スペイン:バルセロナ、マドリード
・ロシア:モスクワ
・フランス:パリ
・イギリス:ロンドン
・イタリア:ミラノ
・チェコ:プラハ
・スロバキア:ブラティスラバ
・ラトビア:リガ
・セルビア:ベオグラード
・ポーランド:ワルシャワ
・トルコ:イスタンブール
・スウェーデン:ストックホルム
・デンマーク:コペンハーゲン
・ギリシャ:アテネ
・ハンガリー:ブダペスト
・オーストリア:ウィーン
・スイス:チューリッヒ
【アジア:5ヶ国7拠点】
・インド:ベンガルー、デリー、ムンバイ
・日本:東京
・韓国:ソウル
・タイ:バンコク
・イスラエル:テル・アビブ
【アフリカ:2拠点】
・南アフリカ:ケープタウン、ヨハネスブルグ
各国のARメンバーたちとブランデンブルグ門の前で撮影 ©2017 Adidas Runners
これらは、ほとんどがヨーロッパからの参加である。ベルリンで開催されるということもあって、ドイツに行きやすい、陸路で来れる国もあれば、比較的飛行機の所要時間が長くないEU圏内からの参加が多い。これがもし、こういったARのグローバルイベントがアジアで行われれば、もちろんヨーロッパからの参加者は減り、アジアからの参加者は増えるだろう。また、今回は参加していなかったが、アメリカなどにもARの拠点はある。
その中でもドイツはアディダスの本国であり、ARの拠点を多く置いている。大所帯であるAR Berlinは今回のイベントをもてなす立場であり、2017年8月の時点FacebookのAR Berlinページは承認制にもかかわらず約5000人程の登録数を誇る。それに対して、AR TokyoのFacebookページのメンバー数は1300人程度 (公開グループ)であるから、いかにAR Berlinが巨大なコミュニティであるということと、ドイツでのアディダス人気が高いということを、それらの数字が意味している。
AR各拠点どうしの交流とホストのおもてなし
通常、大規模なマラソン大会のゼッケンや、参加賞のTシャツなどはエキスポなど、あらかじめ決まった同じ場所で、一度に全て受け取ることが通常である。しかし、今回のイベントでは、以下に述べる交流イベントも含む、様々な場所に訪れることのできるように、ゼッケン(スポーツ用品量販店)とTシャツ(アディダス・ランニングストア・ベルリン)は別の場所でピックアップしなければならないように設定されていた。それは、たくさんの場所を回って、ベルリンの街をたくさん見てもらおうという、彼らなりの“おもてなし”であったに違いない。
特にミッテ地区にあるアディダスのランニングストアは、ベルリンのランベースとともにランニング拠点でもあるため、トレーニングメニューやエクササイズのプログラムが掲示されてあったりと、AR Berlinのコミュニティ形成としての機能はもちろん、ランステの機能も兼ね備えている優れた店構えになっている。また、そのベルリンらしい独特な外観も“さすが歴史ある街だ”と思わせてくれた。
レース当日のお昼過ぎからは、ベルリン郊外の陸上トラックにて、世界各地のARメンバーが参加した交流イベントが開催された。なんと、総勢500名ほどの世界各地のARメンバーがこの場所に集まった。彼らは、3つに分けられたチームごとに、あらかじめ通知された競技をそれぞれこなしていき、最終的に一番速くそれらをこなしたチームが勝利するというアクティブなイベントを行った。こういった交流イベントはそれぞれの拠点ごとのメンバーの交流を円滑に促し、また競技だけでなく、リラックスできる空間の作り方なども工夫されていて、そこにいた皆が非常に楽しむことができていた。
©2017 SushiMan Photography
一番最初の種目であるリレーに始まり、玉入れや、サッカーボールのリフティング、手押し車、バケツの水うつし、などなど、それぞれの種目をみんなで協力してこなしていく。白熱した勝負の末にチームワークが生まれ、各々のチームどうしの結束が深まる素晴らしいイベントであった。軽食やソファーや椅子なども用意されており、広々とした自由な空間に、それぞれの参加者の笑顔が終始見られた。
©2017 SushiMan Photography
AR Berlinのメンバーでキャプテンでもあるジョイス・ビンボースさんは、今回のイベントのホストとして次のように話した。
右から3番目の帽子を被っているのがAR Berlinのキャプテンのジョイスさん ©2017 SushiMan Photography
「レース前の交流イベントは、世界各地のARメンバーがすごく楽しんでいました。当日は、太陽がさんさんと照っていてみんな笑顔で取り組んでいました。注目すべき点は、世界じゅうの私たちのコミュニティから500人もの仲間がこの数時間の為にここに集まってくれたことです。レース直前にも関わらず、これだけ集まってくれたこと、それは純粋な彼らARメンバーたちの愛です」
©2017 SushiMan Photography
今回のような世界各国から多くのゲストを招くことには、ホストの拠点のメンバー間の結束が大切である。このAR Berlinの結束からは多くの学びがあり、AR Tokyoがグローバルイベントを今後、日本で開催する際にも重要な点となるであろう。
フォトギャラリー
©2017 SushiMan Photography
後編(今回のレース内容など)へと続く。