「当時私の走力は4時間を切るくらい……」有言実行でサブ3達成の51歳ランナー、金哲彦さんへインタビュー

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陸上競技や駅伝などの解説者としても知られる、NPO法人ニッポンランナーズ理事長の金哲彦氏。コーチとして指導などにも取り組む中、2015年の『大田原マラソン大会』において、51歳でサブスリーという素晴らしい記録を残しました。

なぜサブスリーという高い目標を掲げたのか?そのチャレンジ精神の源を、インタビューを通じて探ります。

–まずはランニングに関して、現在の取り組みや思いを聞かせてください

これまで多くの書籍を出版したり、メディアに出演したりしてきました。そうした活動を通じて、自分の中で「今までやってきたことはアウトプットし終わった」と思っています。選手・コーチとして培ってきたもの、つまりこれまで持っていたリソースを編集・言語化。そこに新しいものはなく、これからはそのリソースを使って、製品やサービス、あるいはライフスタイルの提案へと繋げていくフェーズです。

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私は常に「自分に何ができるのか」を考えていて、それをより進化させたいと考えているんです。その代わり、逆にできないことには興味が沸かないし、実際にまったくやらないんですけどね。これまで「ランニング」という1つのことだけに、ずっと取り組んできました。選手、実業団、市民チーム、解説者、あるいはランニング教室など・・・。では、そこで何ができるのか。そう考えたとき、アウトプットは終えたという結論に至ったんです。

–そうした心境の中、『RUN to BE』はどのようにして生まれたのでしょうか


例えば40歳を前にランニングを始めたことで、ライフスタイル全体にパワーがもらえている。それは、たまたま大人になって走ったからこそ得られた心の変化ではないでしょうか。そういう気持ちで走っている人、きっと増えていますよね。それを知って、「まだまだ、何かできることがあるのでは?」と思ったんです。

結局のところ、誰しも「気持ちいい」と思う感覚は同じなんですよね。そこに専門性を合わせたり、外から知識を得たりすることで新しい発見がある。そのキッカケを起こしたのが『RUN to BE』です。

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–金さんのランニングに対する探究心を強く感じますね。

基本的に、私は自分がワクワクすることしかやっていないんですよ。だから、例えば体調不良で身体が辛いようなシーンを除いて、モチベーションが下がることもありません。好奇心旺盛なので、「やりたいこと」と「やらないこと」がハッキリしているのかもしれませんね。

理事長を務めている『NPO法人ニッポンランナーズ』も同じ。「プロが教えればこんなに変わるんだよ」ということを広めた取り組みですが、当時そんなマーケットはありませんでした。でも、マーケットなんて作ればいいだけのこと。だって、自分が「やりたい」と思ったんですから。

–そんな中、ランナーとしてもサブ3に挑戦され、見事にその目標を達成されましたよね。そもそも、なぜサブ3を目指そうと思われたのでしょうか?

NHKの『ランスマ』という番組に出演しているんですが、2015年最初の放送で宣言したんですよ。基本的には「ノリ」ですね。もちろん、どれだけ大変なことなのかは分かっていました。でも「やりたい」という気持ちは持っていたので、チャンスだと考えたんです。

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「ちょっと高いけど、やればできるかもしれない」

そういうハードルは、どんどん公言した方が良いと思います。もちろん有言実行のために力を尽くすんですが、公言することで自分に良いプレッシャーがかかるはず。サブ3について、当時私の走力は4時間切るくらい。しかし言った時点で、自分の中では「絶対にできる」という気持ちがありました。

–4時間弱からサブ3は、かなりのチャレンジですよね。

大きな目標に向かって、考えながら取り組むこと自体が楽しいんですよ。「やる」と決めてからは、「大きな故障をしない」ことと「ランニングフォームの効率」を重視してトレーニングしました。がむしゃらに追い込んだだけでは、怪我するだけですから。

例えば大腰筋を使うことができれば、もっと効率よく走れます。同じ4:00/kmペースでも、質が違えば疲労が大きく異なるんです。しかしコーチなら客観視できますが、それをセルフで行うのはなかなか難しかったですね。

–レース本番、どの時点で達成できると感じましたか?

「いけた」と確信できたのは35km地点を過ぎた頃ですね。すごく辛いし、途中は「これヤバイかも」なんて思うシーンもありました。でも、壁が高いほどワクワクしてしまうんです。結果は、2時間57分16秒でサブスリー達成。有言実行、できましたね。

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私は、ただ興味を追い続けているだけなんです。決して、今ある自分を過去に想像して目指したわけではありません。大切なのは、「できない」と思わないこと。むしろ、「どうやったらできるか」を考えるプロセスが楽しいんです。失敗なんて、起きてから考えればいいでしょ?興味があって楽しく感じられることなら、壁があっても、工夫次第で乗り越えられますよ。

–金さんにとってサブスリーは、チャレンジであり楽しみだったんですね。しかし世の中には、やはり「一歩踏み出せない」人が大勢いると思います。そんな方々に向けてメッセージをいただけますか。

若い世代はある意味で恵まれていて、心に火がつくようなことが私たちの世代とは違うんですよね。例えば、東日本大震災のショックで火が点いた人がいるかもしれません。それに対して私たちの場合は、戦後のハングリー精神が残っているんです。

「何か目標を」ではなく「心が動く」こと。目標は本来、他者から強制されたり与えられたりするものではありません。何か興味惹かれるものに対してコミットしてみる。結果はやってみなければ分からないんですから、「自分なんて・・・」みたいな思考は取り払ってしまいましょう。

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特に同世代で、チャレンジを求めない人が増えている気がします。でも自分がプレイヤーでいられるようなことは、会社でなくても外にたくさんあるんです。プレイヤーであるライフスタイルは、仕事はもちろんそれ以外でも実現できます。例えばレースに出るランナーは、その時点で100%プレイヤーですよね。これって、とても簡単な「プレイヤーになれる方法」だと思います。

もちろん自分が走らなくても、ボランティアだって良いんですよ。応援する側にも、走る人と近い「何か」があります。私は実際にボランティア等の活動で、そのことに気づきました。大会当日は、ランナーに限らず誰もが汗をかいています。ボランティアだって、 「自分にできること」の1つなんですよ。是非、そんな「プレイヤーの自分」を実現させてほしいですね。

–ありがとうございました!金さんの今後の活動、注目しています!

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金 哲彦(きん てつひこ)

1964年福岡県生まれ。早稲田大学在学中に箱根駅伝出場。選手やコーチ、監督としてランニングに関わり、オリンピック選手などの育成にも携わる。NHK-BS1「ラン×スマ」出演。陸上競技や駅伝などの解説者としても活躍し関連著書は多数。


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