嘆くか感謝するか、ロックダウンされた街に住むランナーの視点
Mar 31, 2020 / COLUMN
Mar 31, 2020 Updated
高校生アスリートたちに望みは残っているか
でもまあ、ぼくら大人はまだいい。レース参加費が払い戻されないとか、モチベーションが上がらないとか、不平不満を言えばキリがないけど、今年はガマンして来年走れば、それで済むことなのだから。失うものはそれほど多くはない。
気の毒なのは、部活動に励む高校生アスリートたちだ。ちょうど春のシーズンが始まったばかりで、野球、ソフトボール、バレーボール、水泳、陸上競技、テニスなどのスポーツがこれからレギュラーシーズンの中盤に入り、5月のプレイオフに向けて盛り上がっていこうとしていた矢先、すべての試合はもちろん、練習さえも突然禁止されてしまったのだ。
今、ぼくはある高校で野球部のコーチをしている。息子は別の高校の陸上競技部で走っている。どちらも高校生たちが熱心に練習する姿を間近で見てきただけに、彼らの落胆を我がことのように感じている。特に高校生活最後のシーズンにかけていた3年生たちのことを考えると、胸が痛む。高校を卒業したら、誰もが大学で好きなスポーツを続けられるわけではない。もちろん、プロの道に進むような生徒はごく少数だ。少なくとも、ぼくの身近には1人もいない。
カリフォルニア州全体の高校スポーツを統括する組織(CIF – California Interscholastic Federation)は、現地点では春のシーズンをこのまま中止するかどうかの判断を下していない。前述したように、大学スポーツは既に中止を決めており、高校スポーツも同様になる恐れは大いにある。
それでも諦めない高校生ランナーたちに励まされた
学校がいつ再開されるのか分からず、6月の学期末までに大会が開かれるかどうかも分からない。そんな状況にもかかわらず、息子と陸上競技部のチームメイトたちは、休校初日の朝から有志15人ほどが公園に集まり、彼らだけで自主練を始めた。息子を含めて、多くの3年生も混じっている。学校の施設は使えない。コーチから指導を受けることもできない。それでも、自分たちだけで練習をしようと言うのだ。
高校生たちだけで集まっているからって、ダラダラやっているわけではない。いつも通りのウォームアップから始まって、きついインターバル走を繰り返す本格的なものだ。なぜそんなことがぼくに分かるかと言うと、どんな風に練習しているのかな、とジョギングを装って見に行ったのだ。
自分の身内のことながら、ものすごく感動した。俺だったらきっと不貞腐れていただろうなあ。今どきの若者は、俺たちより100万倍もエライ! 俺も今からでも頑張らんと。そう思って、それ以来自分も毎日走っている。本当は彼らと一緒に走りたいが、ペースが違い過ぎるので、それは無理なのだけど。
残念なことに、彼らが自主練を始めて数日後には、屋内外を問わず、家族以外のすべての集まりを禁止するという通達がカリフォルニア州知事の名で出された。だから、彼らが自主的に集まることすらもできなくなった。
そうなってからも、息子は毎日1人で走っている。同じように走っているチームメイトと道ですれ違うこともあるそうだ。彼らのモチベーションの高さには、本当に頭が下がる。
親としては、息子が何かに一生懸命に打ち込む姿を見るより嬉しいことはないし、同じ志を持つ友人たちに恵まれたことは、高校生活で得た最大の幸運だったと思っている。だからこそ、彼らの高校部活動の最後の日々が奪われないよう、今はどうかシーズンが再開されるようにと祈るばかりだ。