山から海へ向かって下る、正式なマラソンコースではない「高速マラソン」とは
Jun 03, 2019 / COLUMN
Jun 03, 2019 Updated
レース前日には、会場でゼッケンを受け取る。ゴール付近では準備が進んでいた。ゴールはビーチの目の前だ。果たして明日は、このゴールを目標タイムで上回って駆け抜けることが出来るだろうか。
コースを下見しつつ、車でスタート地点まで行ってみた。Ojaiという山に囲まれた小さな町がレースの起点になる。通り過ぎただけだから本当のことはわからないけど、果樹園と牧場ぐらいしか見当たらない。ぼくはロサンゼルス近辺に住んで25年以上になるけど、市内からたった1時間ほどに、これほど山深い場所があるとは知らなかった。
いよいよレース当日、ランナーはまずバスに乗ってスタート地点まで運ばれる。朝6時のスタートに間に合わせるために、バスの出発時刻は朝4時。それより30分前にはバス停に集合してください、なんてことになる。間に合わせるために午前2時には起床する。早朝なのか深夜なのか微妙な時間だ。「そこまでしてボストンマラソンに出たいのか」と言われたら、「はい、その通りです」と答えるしかない。
この日フルマラソンを走ったのは1602人。BQを狙っている人が多いせいだろう。市民マラソンの割には、そこそこのレベルのランナーなのだろうなと思わせる引き締まった体格の男女が多い。ランナー同士の会話も「ペースはどうしよう」とか、「どこの地点で上り坂がある」とか、そんな話題ばかりだ。BQという単語もあちこちで聞こえてくる。他の大都市レースのように、ゆっくり歩きながらレースを楽しんで完走だけはしようってタイプの人は、ここでは少数派だ。
さて、長々と前置きというか、言い訳のような文章が長かったが、結末はいたって簡単だ。なにしろタイムを追って真剣に走っていたので、いつものようにレース途中で写真を撮ったりするヒマなどなかったのだ。それどころか周りの風景すら殆ど記憶がない。
結論を述べれば、自己ベストは更新したが、残念ながらBQには手が届かなかった。前述した通り、男性50-54歳部門のBQタイムは3時間25分。ぼくのタイムは3時間26分57秒。憧れのボストンマラソンに参加するには、2分遅かったというわけだ。
たった2分だけど、その2分を縮めることの意味をランナーならわかってもらえると思う。けっして簡単なことではないけれど、こうして乗り越えるべき目標を持てるのは幸せなのだと言うべきだろう。けっして負け惜しみではない(少しは入っているかもしれない)。
ゴール付近では、BQを達成した人が記念撮影をするブースまである。快挙を成し遂げたランナーは、銅鑼を思いきり叩く。知り合いの人もそうでない人も、取り囲んだ皆が大声で祝福する。いいなあ、来年は俺も思いきりあの銅鑼を叩きたいなあと思いつつ帰路に着いた。