走って3ヶ国を制覇。見えてきたのは「人生の答え」|Jup brown(ジャップ・ブラウン)さん

ニュージランド・日本・アメリカを、自分の脚で「走って」横断した男性。それが、今回インタビューさせて頂いたJup brown(ジャップ・ブラウン)さんです。その軌跡について、彼は次のように語ります。

「circle of awesomeness(サークル・オブ・オウサムネス)」

長い髪に、ブルーの透き通った目、そしてチャーミングな笑顔のJupさんに、各国でのストーリーと彼が持つ熱い思いを伺いました。

「走って3ヶ国を制覇。見えてきたのは「人生の答え」|Jup brown(ジャップ・ブラウン)さん」の画像

パッションがあるなら、あとは『靴をはく』だけ

——まずは、これまで走った国を教えてください

始まりは2011年9月。67日間かけて、ニュージランドを縦断したんだ。その後、2012年4月から3ヶ月間で日本を縦断、さらに2015年には、アメリカ横断をやり遂げたよ。このときはカナダを経由し、自転車でスタート地点のロサンゼルスまで帰ってきた。だから、北米1周だね(笑)

——何ヶ月も走り続けるなんて、生半可な覚悟ではできませんよね。なぜやろうと思ったんですか?

きっかけは、本当に軽いノリだったんだ。僕はニュージランド出身だけど、あまりニュージーには住んでなくて。実際には日本やヨーロッパ、アメリカを転々としていたんだ。

各地で「ニュージランドってどんなところ?」と聞かれるんだけど、何も答えることができなかった。だから、「自分の故郷についてもっと知りたい」と思ったんだ。それからすぐに自分が回りたいニュージーのスポットをリストアップして、ルートを決めたよ。最初はなるべくお金をかけたくないから、自転車でまわろうと思ったんだ。でも、どうせなら誰もやっていないことをやりたくて、選んだのが『走る』っていう手段だった。

——走ることを手段として、横断を始められたんですね

そう、だけどいざ始めるまでの決断には時間がかかったよ。ニュージランドの地図を広げて、1日に走るルートを作る。入念に準備したけど、自信がなくて悩んでいたわけだね。そこで、フィットネストレーナーをしている従兄弟に相談したんだ。そうしたら、彼は簡単に「いけるよ」って。理由を聞いたら、こんなことを言っていたよ。

「ここまでプランができているっていうことは、熱いパッションがあるんだろ?だったら、あとは靴を履くだけ。お前ならできるよ。」ってさ。無謀な目標なのに、応援してくれたんだ。それが本当に力になったし、あの言葉は今でも大事にしている。

それぞれの横断に込められた、「応援」の意味

——Jupさんは、チャリティとして走っていらっしゃいますよね?

そう、最初は、走りきれなかったときに申し訳ないから嫌だったんだけどね。でも、「そんなに長い距離を走るなら、脳梗塞から『閉じ込め症候群』という症状と戦っている友人のチャリティをして欲しい」と頼まれ、引き受けたんだよ。

「僕が走ることが、誰かの応援に繋がるなら」なんて思ったんだけど、驚くことに一番応援してくれるのは、同じ症状と戦っている人たちなんだ。これは日本でも同じ。震災の翌年に東北の方々のためにチャリティで走ったんだけど、被災地の皆さんがお米をくれたり、泊まらせてくれたりと一生懸命に応援してるんだ。「人間は素晴らしいな」って思うよ。

だから僕は、赤十字のような大きなところに寄付をしたりしない。お世話になった東北の方々をメモしておいて、チャリティランで集まったお金を直接彼らに渡しに行った。「覚えてくれてたの?」と喜んでくれる彼らを見ると、本当に走り続けてよかったと実感できるよ。

——道中で出会う人々とは、どんなコミュニケーションを取るんですか?

僕は基本的に、走るコースと「1日50km進む」ということを決めている。それを除けば、宿泊場所など含めてノープランで走るんだ。意識していることは1つだけで、目が合った人全員に「hello」と笑顔で挨拶をすること。それだけで自然と人が集まってきて、みんなが助けてくれるんだ。

「何してるの?今日はどこに泊まるの?」「わかんない、まだ決まってない」「え、じゃあうちに泊まる?」なんてね。

5分前に出会ったばかりの人も、こんな風に助けてくれる。出会った人たちが僕の行き先にいる友人を紹介してくれることもあって、さらに仲間が増えて行くんだ。ラジオやテレビで僕が走っていることを知って、駆けつけてくれる人たちもいたね。「let’s take photo」と言って、彼らとの会話を楽しんだよ。

世界中の子どもたちに伝えたい、大切なこと

——プロジェクトの中で、Jupさんの心に強く残っているエピソードを教えてください

僕は、学校で子供たちと触れ合うのが好きなんだ。自分も教えたいことがあるし、同時にパワーをもらえるから。彼らは、素直に何でも聞いてくるよ。

「アメリカ横断?そんなことあんたにできるの?」「どこで寝ているの?」「ばかじゃないの?」って。

そんな彼らに、僕は大きな地図を広げていつもこう言うんだ。

「走って3ヶ国を制覇。見えてきたのは「人生の答え」|Jup brown(ジャップ・ブラウン)さん」の画像

「確かに、とても大変なことかもしれない。だけどね、僕は今日のことしか考えてはいないよ。ゴールにたどり着くまで3,000kmあるけど、今日進むべきなのは50km。そして、そのうちの5kmだけを意識するんだ。それを10回繰り返す。”できること”を繰り返していれば、大きな目標が叶うんだ。君たちも勉強とか、やらなければならないことがあるだろう?毎日コツコツ真面目に進めれば、いつか必ず達成できるよ。」

すると子供たちは、大きな地図に目を輝かせながら僕の話を聞いてくれる。

「君たちに夢はあるかい?友だちに話すのは恥ずかしいし、言いにくいよね。ばかにされたら辛いから。だけど、友達の夢を否定してはいけない。”応援するよ”の一言で、パワーは2倍になるんだ。」

——「人の夢を応援すること」「できることを続けていくこと」を子供たちに伝えたんですね

到底無理だと思われるようなことでも、「無理」と切り捨てるのではなく「やりたいんだから必ずできる」と伝えたい。それは、僕が従兄弟に教わったことだ。

アメリカに『100マイルクラブ』というものがあって、子どもたちは一年間に100マイル走ることを目標にしている。とても大変なことだけど、毎日校庭を2〜3周だけ走るんだ。そして、25・50・75・100マイル毎にグッズやメダルが貰える。そうすると、子どもたちは友達と協力しながら、無理だと思っていた目標を達成できるんだよ。僕が子どもたちに伝えたいことは、100マイルクラブの理念と似ている。無理そうに見えることも、細かく分けてみたら簡単。夢は自分次第で手に入る。

また、ポジティブに考えることはとても大切だ。僕は雨の日でもサングラスを頭につけているんだけど、理由を聞かれると「もうすぐ晴れるから」って答えてるんだ(笑)。そんなはずないことは、もちろん分かっているよ。けど、僕が常にポジティブに走っていれば、それは出会った人たちにも広がっていくことがよくわかった。

仲間は無限に増えて、彼らに支えられて走り続ける

——走り続けていて、辛くなることはないんですか?

もちろんあるよ。走り始めはノリノリだけど、そのうち気持ちが落ちる。足が固まって、もう動けないんじゃないかと思うんだ。そんなときは、必ず今まで出会った応援してくれる仲間たちの顔を思い浮かべる。そして、たった5km進めばいいことを思い出して、「よし、大丈夫だ」と自分に言い聞かせるよ。

——人との繋がりがjupさんを走らせているんですね。

子どもたちに僕のプロジェクトの話をすると、みんな必ず「awesome!(最高)」と言ってくれる。たくさんの人に助けてもらいながら北米を1周したとき、このサークルの中に素晴らしい体験や最高の”awewome”がつまっていることに気がついたんだ。これが『cercle of awesomeness(サークル・オブ・オウサムネス)』なんだよ。

これは人生も同じ。いろんな場所に行って、たくさんの人に出会う。そして数えきれない”awesome”を繋いで大きな輪をつくることこそが、僕の人生なんだ。これは、走り続けることで気付けたことだね。

——今後、jupさんがやりたいことは何ですか?

ノープランさ!まずはニュージーランドに帰って、4年前に行った学校に挨拶をして回る「ありがとうツアー」をやるつもり。それに、日本に100マイルクラブを増やしたいとも思っている。

ユニバースはエンドレスだ。僕は、また走り続けるよ。


Jupさんの笑顔と言葉は、インタビューしている私までもを前向きで爽快な気分にしてくれました。そして彼には、「全力で応援したい」と思わせる不思議な力があるように感じます。

夢とゴールを描き、それを応援して背中を押してくれた人がいて、その輪がやがて国境を越える。彼はこの5年間で、どれだけ多くの人を助け、応援してきたのでしょうか。次は誰に出会い、どこでその輪を広げていくのか。Jupさんが描く『circle of awesomenesss』は、とどまることを知りません。

「走って3ヶ国を制覇。見えてきたのは「人生の答え」|Jup brown(ジャップ・ブラウン)さん」の画像 名 前 Justyn Brown(ジャスティン・ブラウン)
 職 業  Adventurer / Fundraiser / Speaker
 経 歴 ニュージーランド・ワナカ出身

趣味はスポーツ全般で、特にスノーボードやウインタースポーツ、マウンテンバイク。ニックネームはJup(ジャップ)。

WEB:http://www.jupbrown.com
BLOG:jupbrown.wordpress.com

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