免疫アップのポイントは? スリープトレーナーが解説
Apr 02, 2020 / HOW TO
Apr 02, 2020 Updated
みなさん、こんにちは!
アスリート専門に睡眠指導や睡眠管理をしているスリープトレーナーのヒラノマリです。『睡眠はトレーニングの一環(通称 眠トレ)』をモットーに、普段はJリーガーの選手や五輪に出場した選手一人ひとりに合った睡眠法の指導や睡眠環境のコーディネートをしています。
睡眠は、私たちの人生にたくさんのギフトを与えてくれます。そのギフトとは具体的に何か、どうすれば受け取れるのかを『睡眠×ランニング』という切り口で、ご紹介しています。
徐々に暖かい日、春を感じる日も増えてきましたね。とはいえ、朝晩の寒暖差も大きく、体調を崩しやすいシーズンでもあります。
風邪やウイルスに負けない身体づくりにとって、大切なのは免疫力。そこで今回は、免疫力をアップさせるための睡眠のポイントをお伝えいたします。
そもそも免疫って?
最近、ニュースでも『免疫』というワードを多く聞きますが、そもそも免疫とはなんでしょうか。
免疫とは、体内で発生したガン細胞や外から侵入した細菌、ウイルスなどを常に監視し撃退する “自己防衛システム” のこと。身体の細胞の中でも、白血球がこの免疫の大きな役割を担っています。
白血球の免疫システムは、自律神経に支配されており、ストレスや疲労などで自律神経のバランスが乱れてしまうと白血球のバランスも崩れ、免疫力の低下に繋がります。
そして、睡眠不足になると免疫力が下がると言われているのも、睡眠不足によって自律神経が乱れ、白血球のバランスが崩れて、結果的に免疫力が下がってしまうためです。
十分な睡眠時間だけでは足りない!『睡眠の質』も追及しよう!
5万6953人の女性を対象に、睡眠時間と風邪をこじらせて肺炎になるリスクの関係を調べた調査があります。この調査では、睡眠時間が8時間の人に比べて、5時間以下の人は1.39倍、肺炎になるリスクが高いことがわかりました。
この調査からも睡眠時間の大切さはお分かりいただけるかと思いますが、実は『睡眠時間の量』が充分であっても、『睡眠の質』が良くないと免疫力が落ちることもわかっています。
アメリカで153人を対象に、鼻粘膜に風邪のウイルス(ライノウイルス)を付着させ、2週間で何人が発症するかを調べた報告では、睡眠の量ではなく中途覚醒(夜中に目が覚めること)の回数という『睡眠の質』を基準に調査が進められました。
その結果、中途覚醒が睡眠時間の2%以下で安定して眠れた人たちは、7人に1人しか発症しませんでしたが、中途覚醒が8%以上のよく眠れなかった人は、2人に1人が発症するという結果に。中途覚醒が8%以上の人は、2%以下の人たちに比べて、5.2倍も発症する危険率が高くなったのです。
つまり、『睡眠時間の量』だけでなく『睡眠の質』も大切なのです。
中途覚醒を防ぐ、睡眠の5つのポイントとは?
それでは、免疫力アップのために睡眠の質を上げるには、どうすればよいのでしょうか 。
中途覚醒を防ぎ、睡眠の質をアップさせるポイントをお伝えします。
継続的なランニングは、中途覚醒を起こしにくくし、睡眠の質を上げる
ランナーの皆さんに朗報です! 長期的に運動を続けることで寝つきがよくなり、中途覚醒が減り、成長ホルモンが分泌される深いノンレム睡眠が増え、全体の睡眠時間が長くなることが、海外の研究で確認されています。
また、1日だけ運動した人と比べても、長期的に運動を続けている人の方が深い睡眠が増え、中途覚醒が減っていたことが報告されています。毎日の運動が睡眠にも良いとなると、ランニングを続ける原動力にもなりますよね。
この時期だからこそ!在宅ワークの方には朝ランがオススメ
ノースカロライナ州ブーンにあるアパラチアン州立大学で、午前7時、午後1時、午後7時に運動する3つのグループに分けて睡眠パターンを調査した実験では、午前7時に運動したグループの睡眠時間がいちばん長く、眠りも深かったことが報告されています。
この午前7時に運動したグループは、成長ホルモンなどが分泌され、細胞の修復が行われる、深いノンレム睡眠が最大75%多かったそう。普段はお仕事終わりにランニングをされている方も、朝ランに切り替えるのも良いかもしれません。
前回は、朝ラン・夜ランそれぞれのメリットをお伝えしました。合わせて読んでみてください。
スーパーなどへの買出しは、午前中に
日光を浴びない生活は、中途覚醒の原因になります。以前より外出をする機会が減り、なんとなく夜眠れなくなった、中途覚醒が増えた方は日光浴が足りていないかもしれません。
私たちの身体は、朝の光を浴びて14~16時間後にメラトニン(眠気のホルモン)を分泌するしくみになっており、朝の日光浴が夜眠るための準備に繋がっています。
この日光の力に着目し、窓から日光が入る職場で働くグループと窓がなく日光が入らない職場で働くグループとで生活や睡眠の質を比較した、アメリカのノースウェスタン大学とイリノイ大学の共同研究があります。
この研究では、日中、特に午前中に日光を浴びない生活を送ると、睡眠の質が下がると報告されています。また、日光が入る職場で働いたグループの方が活発に行動する傾向があり、午前中に日光を浴びることが仕事のパフォーマンスにも影響することが考えられます。
「在宅ワークだと、なんとなく仕事に集中できない」という方は、窓際でお仕事したり、午前中に食材の買い出し、ご自宅のベランダや庭で軽くストレッチしてみてくださいね。
寝る前にお酒を飲まない
ランニングの後やお仕事の終わりに一杯!とお酒を飲むのが楽しみな方、いらっしゃいませんか?
アルコールは利尿作用があるので、夜寝る前に飲むと中途覚醒を増やす原因にもなります。
たしかに、アルコールを摂取すると眠くなり、寝つきも良くなりますが、アルコールが徐々に代謝され、3時間ほど経つと血中のアルコール濃度が低下し、この血中のアルコール濃度が薄くなったときに興奮して目が覚め(中途覚醒)、浅いレム睡眠が増加します。
また、アルコールが体内で分解されるときに発生するアセトアルデヒドは、日中優位になっているはずの交感神経を刺激するので、お酒は就寝3時間前に飲み終えているようにしましょう。
綺麗な寝室で、加湿をする
寝起きに喉が痛い、だるいなどの風邪の症状に気が付くことはありませんか?
睡眠中は唾液の分泌が少なくなり鼻や喉の粘膜が乾いて、ウイルスへの抵抗力が日中より落ちているためです。
とくに、冬場は乾燥するので『加湿』をすることで、ウイルスが嫌がる環境づくりが大切になってきます。加湿器を顔の近くでつけたり、それが難しければお水を入れたコップを置くだけでも加湿の効果があります。
また、寝室やベッドが不潔だと、体内の免疫細胞がダニやホコリの対応に追われて、ウイルスの防御にまで免疫が働かなくなるとも言われています。冬場は洗濯物が乾きにくく、シーツなどの大物の洗濯を後回しにしがちですが、ぜひこまめに洗濯をしてハウスダストを溜めないようにしましょう。
最近は思うように行動できなかったり、物事が計画通りに進まないことも多く、気分も落ちやすかったりしますね。こんなときだからこそ、自身の睡眠を見直す機会にして、より健康的なライフスタイルを送れば、気分も明るくなってくるはずです。
ぜひ今日から5つのポイント意識してみてくださいね!
≪参考文献≫
Sleep. 2012 Jan 1;35(1):97-101
Arch Intern Med. 2009 Jan 12;169(1):62-7;‘Sleep habits and susceptibility to the common cold’
Sports Med. 1996 Apr;21(4):277-91;The effects of acute and chronic exercise on sleep. A meta-analytic review.