選手に睡眠指導のヒラノマリ「ランニング後の回復に効く眠り方」を伝授

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みなさん、はじめまして。アスリート専門に睡眠指導や睡眠管理をしているスリープトレーナーのヒラノマリです。『睡眠はトレーニングの一環(通称眠トレ)』をモットーに、普段はJリーガーの選手や五輪に出場した選手一人ひとりにあった睡眠法の指導や睡眠環境のコーディネートをしています。この度、睡眠に関するコラム連載をスタートします。

ランナーそれぞれの足に合うランニングシューズが違うように、実は『睡眠』と言っても、自分に合う睡眠リズムや睡眠環境はそれぞれ異なります。

睡眠は、私たちの人生にたくさんのギフトを与えてくれます。
そのギフトとは具体的に何か、どうすれば受け取れるのかを『睡眠×ランニング』という切り口で、ご紹介していきます。

そもそも睡眠とは?

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図① 出典:睡眠学入門ハンドブック 日本睡眠教育機構

みなさんは『睡眠』と聞いて、何を思い浮かべますか?  この波型のグラフを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

上記グラフのように、睡眠はノンレム睡眠(脳も体も眠っている状態)とレム睡眠(脳は起きていて体は眠っている状態)を交互に繰り返しています。

なんとなく『ノンレム睡眠=深くていい睡眠、レム睡眠=浅くて悪い睡眠』、『ノンレム睡眠が多ければ多い程良い』というイメージがありませんか。

しかし、ノンレム睡眠、レム睡眠にはそれぞれ役割があり、この2つがワンセットで構成されています。ノンレム睡眠だけあればよいというわけではありません。それぞれの役割が違うため、ノンレム睡眠とレム睡眠がバランス良くとれることが良い睡眠のポイントになります。レム睡眠は記憶の整理や固定する役割があり、ノンレム睡眠は4段階または3段階(最新の研究では3段階)あり、その段階に応じて役割が変わってきます。

寝入りばな90分に分泌されるホルモンが、リカバリーに効く!

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では、ランニング後のリカバリーを早めるためには、何がポイントなのでしょうか。

それは、ズバリ『成長ホルモン』。

成長ホルモンは、身長を伸ばす“子どものもの”というイメージが強いですが、実は大人こそ、リカバリー力を高めるポイントになるのです。成長ホルモンは、傷ついた細胞や筋肉の修復や正常な新陳代謝を促進したり、怪我の治癒などの役割があります。別名、アンチエイジングのホルモンとも呼ばれており、肌のうるおいを守るなど、女性に嬉しい効果があります。加齢とともに減少しますが、高齢になっても分泌され続けます。

成長ホルモンが正常に分泌されないと、

■筋肉量が低下し、疲れやすくなる
■骨が弱くなり、骨折しやすくなったり骨粗鬆症になりやすくなる
■体脂肪(とくに内臓脂肪)が増加しやすくなる
■心臓機能が低下しやすくなる
■皮膚が乾燥しやすくなる

など、様々な障害が生じます。

ランニングを続ける上でも、健康的な毎日を送るためにも、必要不可欠なホルモンなのです。

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図② 出典:睡眠学入門ハンドブック 日本睡眠教育機構

そして、この成長ホルモン、上のグラフのように睡眠中に分泌され、特に寝入りばなの最初の90分のノンレム睡眠時に、一晩ででる成長ホルモンの70~80%が分泌されるという特徴があります。

また、入眠時間を明け方や日中にずらす、いわゆる『昼夜逆転』の生活をしていると、成長ホルモン自体は分泌されるものの、夜間に寝るよりも分泌量がはるかに少なくなってしまうことが研究でわかっています。

つまり、寝るべき夜の時間に寝て、寝入りばな最初の90分の睡眠の質を高めて、十分に成長ホルモンを分泌させることが、リカバリー力をアップさせる最大のカギとなるわけです。

最初の90分の睡眠の質を高める睡眠のコツとは?

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それでは、寝入りばな最初の90分の質を高めるには、どうすれば良いのでしょうか。

寝つきを良くし、最初の90分のノンレム睡眠を無駄にしないために、リラックスの神経である副交感神経を優位にして『睡眠スイッチ』をオンにしてあげることが重要です。

実は、ストレスを抱えていたり、寝る直前まで仕事をしていたり、忙しい現代人は夜になっても交感神経(日中活発な神経)が優位になりがち。ただ横になるだけでは睡眠スイッチが入らず、睡眠の恩恵を十分に受けとれないことも。そこで、副交感神経を優位にし、睡眠のスイッチをONにするコツを伝授します。

1. 就寝90分前に薄暗い中入浴をする

私たちの身体は、睡眠中は深部体温(皮膚表面の温度ではなく、脳や内臓などの身体内部の温度)の温度を下げて臓器や筋肉、脳を休ませ、朝の起床時間に向かって徐々に深部体温が上がる仕組みになっています。入眠してから温度が下がるのではなく、入眠する4時間も前から徐々に下がりはじめています。よくハードなトレーニングをした後や試合後の選手がなかなか眠れないのは、脳が興奮状態で深部体温が下がらず、交感神経が優位になっていることが原因です。

スムーズに眠りにつくためには、深部体温を上げると、その反動で深部体温が下がる身体のメカニズムを応用するのがおすすめです! これを簡単に取り入れられるのは、『入浴』です。シャワーで済ましてしまう方も多いとは思いますが、シャワーだけだと十分に深部体温が上がりません。40℃の湯船に10~15分浸かりましょう。

また、意外と見落としがちなのは、浴室の照明です。
マンションなどのお風呂場には、LEDの昼白色と呼ばれる青白い照明がついていることが多く、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌を抑制し、眠りに悪影響を与えてしまう可能性があります。昼白色の照明がついている場合は、オレンジ色(電球色)のものに交換するか、脱衣所の照明だけにして、浴室の電気を消しても効果があります(お風呂場で転ばない程度の明るさは必要ですが)。

 2.寝る90分前にメールとSNSの通知をOFFにする

スマートフォンやブルーライトは、脳を刺激して交感神経を活発にし、睡眠の質を低下させる原因になります。
本来なら、「寝る前はスマートフォンの電源をOFFにしてください! 」とお伝えしたいところですが、実際はなかなか難しいですよね。そこでおすすめなのが、寝る90分前にメールとSNSの通知をOFFにすること。

なかなかスマホ電源を切れないという選手にも、「この方法なら実践できる!」と好評です。メールやSNSの通知をシャットアウトするだけでも、脳への刺激を低減することができます。寝る前に『自分と向き合う時間』をつくることで、心を整え、明日への準備ができます。

3. 間接照明を取り入れて、おしゃれなリビングで夜を過ごす

「寝室は暗い方がよく眠れる」と思ってらっしゃる方は多いと思いますが、実は寝室に入る前に過ごすリビングの明るさもポイントになってきます。

照明の明るさを落とすのも良いですが、せっかくなら、おしゃれに睡眠の質をアップできたら良いですよね。フロアスタンドやテーブルスタンドなどの間接照明を取り入れるのがおすすめです。背の高いフロアスタンドなら、ソファの横やテレビ台の横。「お部屋に置き場所がない!」 という方でも、テレビの後ろに間接照明を置くと、お部屋に奥行き感がでて一気に垢抜けます。テレビの後ろに置けるようなライン型の照明は、ネットで安く手に入ります。意外にも低コストで、睡眠に良いおしゃれな環境づくりができますよ。

4.カフェインの門限は、午後

夜寝る直前にカフェインを控える方は多いと思いますが、カフェインの持続性は私たちが想像するより長いのです。寝る6時間前の摂取であっても、カフェインの影響で睡眠が阻害されると学術誌Journal of clinical sleep medicineで発表されています。
摂取したカフェインが完全に体内から排出されるまで数日かかることもあり、カフェインが半減するまでに5~8時間かかるとも言われています。リカバリーのことを考えるならば、カフェイン摂取は午後早い時間帯までにして、それ以降はデカフェがおすすめです。(デカフェやカフェインレスは、メーカーやコーヒーショップによってカフェインカット率が異なりますので、よくチェックしましょう!)

ランナーにとって、ランニングを楽しむためにリカバリーは大切ですよね。難しいことをしなくても、少しの工夫で睡眠の質は高めることができるので、ぜひ実践してみてくださいね。

≪参考文献≫
Van Cauter, E. and E. Tasali, Endocrine physiology in relation to sleep and sleep disturbances. Second ed. Principles and Practices of Sleep Medicine, ed. M.H. Kryger, T. Roth, and W.C. Dement. 2011,Missouri: Elsevier Saunders. 291-322.

Caffeine Effects on Sleep Taken 0, 3, or 6 Hours before Going to Bed, Journal of Clinical Sleep Medicine, Vol. 9, No. 11, 2013

   
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