40代・体育の成績「2」だった女性が10kmマラソン完走。「苦手だけど大好き」になるまで
Jul 23, 2026 / MOTIVATION
Jul 23, 2026 Updated

ランニングは運動能力が高く、走るのが好きな人がするものーー。そう考えていたのが、小学生の子どもを育てながら家事や仕事に向き合う、43歳ののりこさんです。
長らく定期的な運動習慣がなかったものの、友人の言葉や姿をきっかけに身体を動かすようになり、本格的に屋外を走り始めて約2か月後には『第9回 伊豆稲取キンメマラソン2026』の10km部門を完走しました。
走ることが苦手だったのりこさんは、どのように最初の一歩を踏み出し、10kmまで距離を伸ばしたのでしょうか。初マラソンで感じた達成感と悔しさ、ランニングが日常にもたらした変化とともに、その道のりを聞きました。
「体育の成績は2」走ることへの苦手意識と転機
のりこさんが走ることに苦手意識を持つようになった背景には、小学生時代の経験がありました。数年間を海外で過ごしていたため、帰国後は持久走をはじめとする体育の授業に難しさを感じることも多かったそう。
すでに日本の体育教育に慣れ、運動の基礎を身につけてきた同級生たちと同じようにできない自分と向き合うことが、つらく感じられる場面もあったといいます。こうした経験を重ねるなかで、自分は運動が得意ではないと思うようになり「体育の成績は2だった」と当時を振り返ります。
大人になってからも「ランニングは運動が得意で、走ることが好きな人がするもの」というイメージが残り、走ることを苦しいものだと捉えていました。忙しい仕事の合間を縫って練習し、フルマラソンに挑む親しい友人のことも、当初は応援する側として見守っていたといいます。
その一方で、友人が生き生きと走る姿を目にするうちに、次第にランニングへ関心を抱くようになったのりこさん。さまざまなことを考え込み、気持ちを切り替えたいと感じていた時期に、友人から「運動して“運”を“動”かそう」と言われ、はっとしたそうです。その言葉が、身体を動かし始める後押しになったと話します。
2025年9月、現状を変えたいという思いから、まずは身体を動かす習慣をつくろうとパーソナルジムへ通い始めました。最初はトレッドミルに傾斜をつけた早歩きからスタート。やがて10kmマラソンに誘われたことを機に、2026年2月頃からは週1回ほど、約30分の軽いジョギングにも取り組むようになります。こうして、「自分は走る側ではない」と思っていたのりこさんの挑戦が始まりました。
「悔しいと思えたのは、努力したから」初めての10kmで込み上げた思い

初マラソンの舞台となる『第9回 伊豆稲取キンメマラソン2026』を前に、のりこさんは不安を感じていたといいます。走ることに苦手意識があったのりこさんにとって、10kmは決して短くない距離。完走できるかどうかだけでなく、一緒に走る友人やパーソナルトレーナーの負担にならないかという心配もあったそうです。その不安を一人で抱え込まず、周囲に支えてもらいながら準備を重ね、2026年6月14日の本番を迎えました。

マラソンでは完走だけでなく、仲間と走る時間を楽しむことも大切にしていたのりこさん。しかし、練習では5kmほど走るころには落ち着いていた呼吸が、この日はなかなか楽にならなかったといいます。
この時の状況をのりこさんは「息苦しく、まるでおぼれているような感覚だった」と表現。港付近の湿度の高さや繰り返されるアップダウンなど、練習とは異なる条件が重なり、後半になるにつれて身体への負担が増していったと振り返ります。
終盤の急な坂では、最後まで走り続けたいという気持ちとは裏腹に身体がついていかず、思うように前へ進めなくなったそう。それでも、隣を走るパーソナルトレーナーの明るい声かけやアドバイスを受け、少しずつ落ち着きを取り戻していったと話します。
「ゴールが近づくと、沿道から送られる温かい声援に胸がいっぱいになり、涙が出そうになった」とのりこさん。泣けばさらに呼吸が苦しくなるため、込み上げる感情をこらえながら前へ進み、約1時間30分で10kmを完走しました。
ゴール後、真っ先に浮かんだのは「悔しい」という感情。最後まで歩かずに走り切ることを目標にしていただけに、終盤で思うように走れなかったことが心残りだったそうです。それでも、その悔しさは目標に向かって努力を重ねてきたからこそ生まれたものだと、のりこさんは受け止めています。その後に感じたのは、10kmを完走した達成感と、挑戦を支えてくれた友人やパーソナルトレーナー、家族、沿道の人々、大会関係者への感謝でした。
家族が起きる前、まずは2kmから。10kmまで距離を伸ばした工夫

パーソナルジム通いから始まった、10kmマラソンへの第一歩。けがをしないよう、正しいランニングフォームを身につけるためのトレーニングに取り組みながら、傾斜をつけたトレッドミルでの早歩きから少しずつ身体を慣らしていきました。
のりこさんが本格的に屋外を走り始めたのは、2026年4月初め。前日のうちに走ると決め、朝起きたらすぐに着替えて外へ向かいます。家族が起きる前に戻れるよう、午前5時前に出発することもあったそう。最初に設定した距離は2kmでした。ペースを気にせず、苦しくならない速さで止まらずに走り、終えた後は歩いて帰宅することから始めたといいます。自分で決めた距離を走り切れたことが、ランニングを継続するモチベーションにつながったと、のりこさんは話します。
その後も無理にスピードを上げず、少しずつ走れる距離を伸ばしていきました。ときにはランニング経験のある友人に目標を伝え、一緒に走ってもらうことも。本番前には10kmを通して走る練習を2回行い、月間走行距離は100kmに到達。日々こつこつとトレーニングを重ね、初マラソンへの不安を和らげていったといいます。

その一方で、身体を休めることや不安を抱え込まずに相談することも大切にしていたのりこさん。走り始めた頃には、ふくらはぎの張りや足首周辺の痛みを感じることもあり、休養の取り方や身体のケア、シューズやインソールの選び方について、パーソナルトレーナーに相談したそう。走っている最中のペースや走行距離を記録できるランニングウォッチを取り入れたことも、練習を続ける励みになったといいます。

走れる距離が伸びるにつれ、ランニングはマラソンに向けた練習だけのものではなくなっていきました。早朝の静かな道で、すれ違うランナーや散歩をする人、鳥や虫などに目を向けながら走るひとときは、のりこさんにとって「自分だけのぜいたくな時間」。気持ちを切り替え、新しい一日を始められるような感覚があると話します。
以前なら自転車や電車で向かっていた場所へ友人と走って出かけ、食事や会話を楽しんだ後も走って帰ることがあるそう。こうした過ごし方も、走り始めて気づいたランニングの魅力だといいます。
「まず動いてみて」走ることが苦手でもチャレンジしたい人へ

今後の目標として、のりこさんは「友人との会話や景色を楽しむ余裕を持って10kmを走りたい」と話します。また、2026年10月に開催される『TOKYO ROKUTAI FES』で、42kmをチームでつなぐリレーにも挑戦する予定とのこと。
走ってみたいと思いながらも不安で一歩を踏み出せない人へ、のりこさんは「靴と自分の身体だけで始められて、こんなにも気持ちが変わるものはなかなかない。騙されたと思ってまず動いてみて!」と背中を押します。
いきなり走ることが難しければ、歩くことからでもいい。人と比べるのではなく、昨日までの自分と比べてみる。また、一人で始めることが不安なら、ランニングやマラソンに興味があると周囲に話すことで、一緒に練習する仲間や相談先が見つかるかもしれないと語ります。
自らの挑戦をきっかけに、身近な人がランニングを始めたり再開したりするようになったことは、のりこさんの励みとなり、自信にもつながったといいます。今ではランニングが日々の中でかけがえのないものになったそうで、「周囲の人と走る喜びを分かち合い、走る人が少しでも増えたらうれしい」と話します。
走ることを得意だとは、今も思っていないそう。それでも、かつて苦しいだけだったランニングは、いつしかのりこさんにとって「苦手だけど大好き」な存在となりました。
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