なぜ國學院大學は勢いのあるチームに? 躍進の背景にあった「平林を超える」意識

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(左から)上原選手、前田監督、平林選手、岡田さん

2024年に開催された『出雲駅伝』『全日本大学駅伝』で優勝を果たし、大学三大駅伝で二冠を達成した國學院大學。2024年の駅伝シーズンで大きな注目を集めたなか、躍進の背景にはどんな取り組みがあったのかーー。

今回はスポーツMC・岡田拓海さんが、國學院大学陸上競技部・前田康弘監督、平林清澄選手、上原琉翔選手に話を聞きました。

「血の通った素晴らしいチーム」

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岡田:まず皆さんにお伺いしたいことは学生三大駅伝についてです。『箱根駅伝』が終わった今の感想を教えてください。

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前田:出雲駅伝と全日本大学駅伝は選手たちが素晴らしい勝ち方をしっかりしてくれました。「一戦必勝」を合言葉にしっかりと勝ち、箱根駅伝へと乗り込むことができました。

ただ箱根駅伝はチームの勢いや走力だけではなく、さまざまな要素の掛け算・引き算・足し算が入り乱れたものだということを改めて感じました。総合成績3位というのは悔しい3位であったと感じています。

平林:出雲駅伝、全日本大学駅伝は予定通り、どちらもアンカー勝負まで進めることのできた駅伝でした。僕たちの中では「箱根を見据えるなかで出雲・全日本を勝てる力は持っている」ことを証明したいと思っていたので、2つの駅伝で勝つことができてよかったです。

ただ箱根駅伝は僕も調子を崩してしまったりなど、なかなかうまくいかないこともあり「箱根はまだ厳しかった」という思いを抱きました。力を出し切れず悔しかったですが、箱根駅伝に対する想いだけは勝っていたんじゃないかなと思います。

上原:箱根駅伝で総合優勝することを目指し取り組んできた1年間でしたが、3位という悔しい結果に終わってしまいました。出雲駅伝・全日本大学駅伝で優勝したことはチームが強くなってきたことを証明できるものだったので、箱根駅伝では優勝できず悔しさもありました。ただ箱根駅伝で優勝が狙えるチームになってきたなと思うので、プラスになった1年間だったなと。

岡田:前田監督もチーム史上1番強いチームだとおっしゃっていました。今季のチームを振り返るなかで注力したポイントは?

前田:絶対的な力、前評判をしっかり作って勝ちにいくことがビジョンとしてありました。それを達成するためには新チーム発足当初からレースを全て勝つことが必要だと平林と話していて、現に平林は2月に開催された大阪マラソン2024で優勝し有言実行してくれました。

「実績・実力があるから勝つ」チームに変貌を遂げたいと思っていたので、そんな思い・熱量で選手たちと向き合ってきました。

実際に駅伝シーズン前には周囲から「國學院大學が優勝するんじゃないか」と言われて。それは当時10000m、ハーフマラソンの上位10人平均タイムがどの大学よりも速かったことも影響しているでしょう。選手たちにはレースで勝った実績だけでなく「自己ベストのアベレージも見据えていくよ」と匂わせていました。駅伝は簡単に勝てるものではありません。それでも選手たちは勝つことを体現でき「強いチームに変貌してるんだぞ」ということをもっと前へ出していきたいと思いながらチームコンセプトを作ってきました。

ただ勝つために練習内容をいきなり変えることはナンセンスです。たとえば今までトップの選手がやっていた練習をこなせる人数が増えたりといったことからチーム力を測れると思います。そんななか選手からは「平林を超える」と聞こえてきてーー。そういうことを笑いながら言えるチームは最強だなと思いますし、今年の國學院大學の良さだと感じます。

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平林:お互いに認め合っていますし、上原も僕のことを強いと思ってくれているから「平林さんを超える」と言ってくれて、僕も上原を強いと思っているから「負けてらんないな」と思えます。

前田:チームのトップに立つ選手と周りの選手たちが互いに敬えるからこそ「よしやるぞ!」と思える、そこをできてたことが2つの駅伝で勝てた今年のチームの根幹にあったと思います。

岡田:そのような選手たちの意識づけは監督からコントロールすることは難しそうですが……。

前田:だからこそキャプテン・幹部の存在が大切で、監督・キャプテン・幹部の意思疎通のベクトルが一緒じゃないと先ほどのチームの味は出せないですね。「秘伝の味」だと思います。

今年は血の通った素晴らしいチームを作ってきたなと思える、客観的に見ても思えるチームに仕上がりました。だからこそ手応えはありましたが、駅伝は一発勝負です。チームがどんなに良い雰囲気でも、レース当日に合わせられなければいけない。コンディション作りが監督である私の1番やるべきことだと思います。

平林選手・上原選手のコンディショニング方法とは?

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岡田:コンディショニングで気を付けていることは?

平林:レースに向けての流れがあるので、その流れの中で自分の感覚を捕まえることを意識しています。トップアスリートの中では自分の感覚を持っている選手が多いでしょう。いかに自分の良い感覚に持っていけるか、この練習をやったら調子がどのように変化するか……。自分のなかで感覚を掴みながら調子を整えています。

あとは過去にやって良かったことは取り入れています。各レースの後に振り返りをすることで、調子を合わせるためにやってよかったことを自分の中に落とし込んでいますね。レースが終わった後から、もう次のレースの準備は始まっているかと。その積み重ねが安定して結果を出せることにつながると思います。

岡田:すぐに実践できるコンディショニング方法はありますか?

平林:僕は1~2週間前から食事でこれを摂ると決めています。このタイミングでは炭水化物を多めに摂ろうとか、ビタミンを摂取しようとか。ストレスのかからない範囲で食事内容を決めています。

またレース当日は5~6時間前に1回、ある程度の量を食べるようにしています。僕は筋肉量が少なく、エネルギーの貯めが作れないので。消化に時間がかかることを考慮して、ちょっと早めの時間に多めの量を食べることを意識しています。

前田:平林のすごいところはその準備を1週間前から行うところです。

平林:例えば睡眠ですと、早いときには朝の7時半スタートのレースもあり、当日は夜の0時半ごろに起床しなければなりません。そのため1週間前から徐々に起きる時間をずらしていくことで、習慣づけています。

前田:コンディショニングの失敗・成功を繰り返すなかで、自分のルーティンを確立した選手が勝つと思います。

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岡田:上原選手のコンディショニング方法とは?

上原:練習などで「イメージ」を大切にするように意識しています。

良いパフォーマンスで練習にも取り組み、良いイメージを持った状態でレースに臨む。疲労が溜まっているときには練習量を落としながらもイメージを良くしていき、そのままのイメージ通りにレースで走ることを意識していますね。

平林:上原は過去に自分が出場したレースの動画を見ないよね?

上原:見ないです。

前田:平林はよくレースの動画を見返しているんです。

平林:僕はいろんな視点でレースを見返すんですよ。「優勝した選手はこの地点でこの位置を走っていたから、こういうレースができたんじゃないか」とか。そのほかにもコースの特性を見たり、当日の風を見たり……。基本的に部屋でずっとレースの動画を流しています。レースの動画を見て自分のイメージを作っていますね。

上原:自分は逆です。自分のコンディション・レース当日の気候がすべてそろうことはほぼないので。自分のイメージを大切にしてレースに臨みたいので、他の選手のパターンなどは気にしないようにしています。

前田:出雲駅伝・全日本大学駅伝で2人は何を考えていた?

平林:僕は戦略的に走りました。コースのどこが勝負どころになるかという点です。出雲駅伝では登り坂で勝負をかけましたね。「ここでこの選手が来たら、自分はこうしよう」と考えながら、レースプランをいくつも立てていました。

ちなみに出雲駅伝、全日本大学駅伝ともに、國學院大學を先頭に押し上げたのは上原でした。

上原:そうですね(笑)。ただ出雲駅伝は自分と野中で確実に先頭へ立ちたいと言われていたので、結果として4秒しか2位との差を広げられず悔しさもありました。

ジョギングからレースまで、シューズの履き分け方法も大公開!

岡田:ぜひシューズの履き分けについても伺いたいです。

上原:ジョギングではアディダス『ADIZERO SL』、『SUPERNOVA PRIMA』を着用しています。

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『ADIZERO SL』
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『SUPERNOVA PRIMA』

上原:ジョギングよりも速いペースで走る際には『ADIZERO BOSTON』、レースでは『ADIZERO ADIOS EVO 1(以下、EVO 1)』と『ADIZERO ADIOS PRO 4(以下、PRO 4)』を着用していますね。

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『ADIZERO BOSTON 12』

岡田:レースシューズはどのように使い分けている?

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『ADIZERO ADIOS EVO 1』
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『ADIZERO ADIOS PRO 4』

上原:今回の箱根駅伝はEVO 1を履きました。ただスピードが出るのはPRO 4だと感じています。PRO 4の方がミッドソールが柔らかく、地面を蹴れる感覚があるのでスピードが出しやすい。対してEVO 1は反発が返ってくるタイミングが素早く、蹴る前にもすぐに跳ねる感覚を覚えました。

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『ULTRABOOST 5』出典:shop.adidas.jp

平林:ジョギングではアディダス『ULTRABOOST 5』を履いています。安定感・反発性・フィット感、どれをとっても良いシューズです。足づくりにはもってこいの一足だと思います。

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『SUPERNOVA SOLUTION』

平林:疲労を抜くためのゆっくりとしたジョギングでは『SUPERNOVA SOLUTION(以下、SOLUTION)』を履いています。SUPERNOVAシリーズはモデルが4種類あるのですが、その中でもSOLUTIONの感覚が1番よかったので。アディダスはジョギング用シューズだけでもたくさんあるので、自分に合うシューズを選べると思います。

ジョギングよりも速いスピードで走る際にはADIZERO BOSTONを履いていますね。長めの距離走では『ADIZERO ADIOS PRO 3』を履き、シューズの反発に慣れる練習も含めて履いていました。

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『ADIZERO ADIOS PRO 3』

岡田:平林選手はマラソンで『ADIZERO TAKUMI SEN 9(以下、TAKUMI SEN 9)』を着用していた点が印象に残っています。

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『ADIZERO TAKUMI SEN 9』

平林:レースシューズはすべてTAKUMI SEN 9です。厚底のシューズだと一定のペースで走りやすいですが、勝負したいタイミングで切り替えにくく感じてしまいます。自分の出力をコントロールしやすいところがTAKUMI SEN 9の良いところだと思います。

岡田:最後に前田監督、次なる目標を教えてください。

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前田:箱根総合で総合優勝をしたいという想いが私の中で溢れてます。箱根駅伝で優勝するためには年間的なスケジュールから戦略的に計画しないといけません。チームに勢いがあって、全日本大学駅伝などで日本一になった流れで箱根駅伝へ臨めればと考えていたのですが、それだけでは乗り越えられない厳しい駅伝だと再認識しました。その上でとにかく箱根駅伝の総合優勝をしたいーー。

平林たちの思いも上原とともに受け継いでいくので、目標を達成すべく何をしていくかをちゃんと明確に掲げて頑張っていきたいです。

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岡田:平林選手・上原選手の目標は?

平林:今後はマラソンで勝負したいと思っているので、ロサンゼルスオリンピックを見据えて世界と戦える選手になりたいです。國學院大學から、その先駆けとして羽ばたいていきたいです。

そして、國學院大學のことは上原に託しました。うまくやってくれると思います!

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上原:箱根駅伝の総合優勝を目指せるチーム作りをもう1度していきたいと思います。出雲駅伝・全日本大学駅伝を勝った喜びが箱根駅伝で覆ってしまいました。箱根駅伝の優勝が今の4年生への恩返しにもなると思うので、4年生が作ってきたチームを引き継いで、箱根駅伝で優勝したいです。

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毎年4年生が卒業していくなか、その想いをしっかりと繋ぎながら進化を続ける國學院大學陸上競技部のみなさん。2025年の駅伝シーズンも國學院大學の活躍から目が離せません。

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