【HOKA】より速く走れる新作『MACH X 2』を徹底解説! 厚底レーシング「CIELO X1」に近づいたシューズの実力は?
Oct 16, 2024 / SHOES
Oct 21, 2024 Updated
HOKAの『MACH X(マッハ X)』シリーズの新作として登場した『MACH X 2』。前作とは見た目が大幅に変わりましたが、いったいどのような履き心地のシューズなのでしょうか。
こちらの記事では、Runtripお馴染みのシューズアドバイザー・藤原岳久さんに新作・MACH X 2の履き心地について解説いただきました。藤原さんは多くのシューズブランドを渡り歩き、シューズ販売に携わった期間は20年以上。47歳でマラソン自己ベスト2時間34分28秒を出し、現在も走るシューズアドバイザーです。
CIELO X1から着想を得た“レーシングスタイル”の一足
大森:今回ご紹介するシューズはHOKAのMACH X 2です! 昨年登場したMACH Xでしたが、早くも「2」が登場しました。HOKAのシューズで“X”をシューズ名に冠したモデルは、プレート搭載シューズという意味ですね。人気シリーズのMACHからプレート搭載モデルが登場して、さらに2になったということで気になります。どうやらCIELO X1(シエロ X1)に近づいたそうで。
藤原:そうですね。そのCIELO X1にインスパイアされて、つくられたのがこのMACH X 2です。デザインが非常に似ていますよね。
藤原:前作(MACH X)はもう少しデイリートレーナー寄りのしっかりとしたヒール部分です。今作のヒール部は絞られているのですが、前作はかなり安定感がありますね。
大森:そうですよね。
藤原:デイリートレーナーとスーパーシューズの中間に位置するようなつくりだったんですよね。アッパーもしっかりしている。
大森:サポートしてくれる印象のアッパーですよね。
藤原:前作から今作のアップデートとして、いろいろと違いがあります。アッパーは見た目、雰囲気がまったく違いますよね。前作はエンジニアードジャガードメッシュでしたが、今作はウーヴンアッパーへ変更されました。シングルレイヤーで通気性の高い、透け感のある生地はCIELO X1からインスパイアされた部分と言えるでしょう。
サイズ感は、前作が少し短めに感じたんですよ。HOKAにしては珍しく短めだと感じました。
大森:そうでしたか。
藤原:(前作が)幅は広くて、長さが短かったんですけど今作は逆に長いですね。
大森:なるほど。
藤原:最初にネガティブな点を言うと、かかとが抜けやすいですね。走っているとかかと部が固定されず、滑る感覚がありますね。そのため私はシューホール(くつ紐を通す穴)の一番上も使い、シューレースを締めることでホールド感を高めています。かかと部の緩さが気になるので、ハーフサイズ(0.5cm)下げて調整したり、シューレースの結び方で調節していただきたいですね。
Pebax®プレートを搭載したしなりのある走り心地
藤原:前作と同じで弾力性に優れたPEBAフォームとEVAフォームにPebax®(=PEBA素材)プレートを挟み込んだ構造は変わりません。プレートにも同じ素材を使用しているというのがポイントです。
大森:Pebax®プレートを搭載しているのはどのような理由でしょうか。
藤原:Pebax®素材でつくられたプレートはしなるんですよ。これがカーボンプレートでは、ほとんど屈曲しません。一方で、プラスチック素材で作ると強い力に弱くて折れちゃうんです。
大森:その適度なしなりを利用するためにPebax®でつくられているんですね。
藤原:Pebax®プレートはスパイクシューズでよく使われていて、ロードシューズでは短い距離向けのレーシングシューズなどでよく使われていますね。MACH Xでも取り入れていたのですが、今作はプレート形状がよりCIELO X1にインスパイアされて、外に張り出したウィングプレートデザインに改良されています。前足部のプレート形状が横に張り出すことで、着地時の横ブレを防ぐ設計となっています。
大森:なるほど。
藤原:もうひとつ、前作との大きな違いは軽量性やスピードを出すための機能がより重視されていますね。ソールの厚さがなんと5mmアップしたんです。
大森:5mmも厚くなったんですか!?
藤原:5mmの変化は非常に厚くなったと感じますよね。アウトソールのデザインもラバーレスの部分が増えて、少しでも軽量になるよう設計されています。
大森:ソールの厚さが5mm増えているのに、重量は前作よりも6g軽量化されている。これはすごいことですよね!
藤原:前作がデイリートレーナー寄りの設計だったのに対し、今作は完全にレーシングシューズ感漂うアッパーになっていますから。履いてみると、とても強い推進力を感じられますね。他ブランドでいえば、アシックスのMAGIC SPEED 4の履き心地に近いですね。前足部のミッドソール上層に搭載されたPEBAによるソフトさが推進力を演出しています。
藤原:Pebax®プレートは面積が増したので、足の動きによる力の伝達が非常にいいですね。全体的な感触としては、MAGIC SPEED 4のFF Turboに近い推進力を想起します。また、ソール下層の黄色い部分はEVAソールが配されているので安定感が高いんですよ。CIELO X1との違いはここなんです。
大森:CIELO X1はとんでもなく跳ねるシューズですからね(笑)。
推進力とレース後半でサポートしてくれる安定感が魅力
藤原:シューズのカテゴリとしては、以前展開されていたCARBON X 3に近いゾーンです。CARBON Xシリーズはカーボンプレートだった分、MACH X 2のほうがプレートの跳ね返りがちょうどいいんです。EVA素材とカーボンプレートの組み合わせになるとちょっと硬く感じる。しかし、MACH X 2のPEBAプレートは踏み込んだときのソフト感がモチッとしていい!
大森:クセになる履き心地ですね! 藤原さんはどういうシーンに使いますか?
藤原:ちょっと速めのペースで走るワークアウトで使いますね。
大森:なるほど。
藤原:あとは少し長めの距離走にもいいですね。ちょっと頑張りたい練習のときにMACH X 2を選ぶと足元をサポートしてくれますよ。
大森:短い距離の練習よりは距離走などの長い距離のほうが使いやすいですか?
藤原:短い距離のトレーニングでもいいですが、1マイル(約1,600m)のインターバル走など持久力を鍛える練習のほうが合っているでしょう。10〜12kmの距離走もMACH X 2の機能性が発揮されます!
大森:使用シーンがとてもイメージできました!
藤原:接地感も安定しており、シューズの助力もほどほど。フォームも安定して走れるので非常におすすめの一足です。
藤原:税込30,800円と価格帯は少し高めではありますが、前作よりもレースで使うにはいいシューズだと思います。
大森:レースで使いたいランナーもいるから、そういった方には非常にいいシューズですよね。
藤原:サブ4(フルマラソン4時間切り)を目指すランナーよりは、4時間をクリアして3時間台前半を目指すランナーに合うでしょう。すでに3時間台前半のランナーでも、レース後半ペースが落ちてしまう場合は、高反発なシューズよりもこのような安定感のあるシューズにされた方がいいかもしれません。
大森:オールマイティに対応してくれるいいシューズですね! レースシーズン注目の一足となりそうですね。
藤原:レーシングシューズとして人気が出るのではないかと予想しています! ぜひ勝負シューズの選択肢として検討してほしいです。
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マラソンシーズンを迎え、レース本番の勝負シューズを検討する方が多いこれからの季節。MACH X 2でフルマラソンを走ったり、トレーニングで試したりしてはいかがでしょうか。
ぜひ、シューズ選びの参考にしてみてください。
詳細情報
HOKA|MACH X 2
・価格:¥30,800(税込)
【動画からご覧になる方はこちら】
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