「毎日走らなくてもいい。速く、長くも」海外のランニング文化に触れる#2【アメリカ】

東京オリンピックまで、およそ8カ月。オリンピックには、世界中のアスリートが日本を訪れる。プロアスリートはメディアに取り上げられることがあるが、海外の市民ランナーは毎日何を思い、走っているのだろうか。そこで、海外の市民ランナーに、彼らの挑戦やそれぞれの国のランニング文化をインタビューする。

前回は、北アフリカのチュニジア在住のジャベルさんを紹介した。チュニジアのランニングクラブや故障に向き合う姿勢、そして、サハラ砂漠の蜃気楼レースについて聞いた。

今回の第二弾は、アメリカ西部カリフォルニア州北部、デイビス在住のサバさん。弾ける笑顔とユーモアが魅力的な大学院生ランナーだ。サバさんの周りには、いつも笑顔と笑いがある。レースにはあえて出場せず、ランニングはあくまで趣味だというが、走る姿はとてもパワフルで速い。アメリカの大学のランニング文化をはじめ、一人で、仲間と、そして犬と、颯爽と走るライフスタイルについて聞いてみよう。

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サッカーのため

サバさんが走り始めたのは、17歳のときだった。

「高校時代に陸上とサッカーをしていたのですが、体力がなくて困っていました」

基礎体力を強化するために始めたランニング。初めは、坂の多い地元ポートランドの近所の5キロのコースを走るだけで、精いっぱいだった。やがて、徐々に走れるようになり、いつでもどこでも自由に走れることが気に入り、現在は忙しい大学院生活の合間を縫って、週に5回、6-16キロ走る。もしも災害が起こったとしたら、長い距離を自力で移動できる体力を身に着けていたいという密かな理由もある。そんな彼女が所属するコミュニティーやアメリカの大学、大学院のランニング文化はどのようなものなのか。

アメリカの大学のランニング文化

アクティブなイメージのあるアメリカの大学生だが、多くの人は『ランニング』と聞くと、必要以上に身構えてしまうらしい。長い距離を速く走り続けなければならないという、思い込みがあるのかもしれない。気軽に、誰でも始められるランニングの敷居が高いということがサバさんにとっては不思議だ。

「私は、距離やスピードを気にせず、気軽に仲間と外で走ることを友人に勧めています。ランニングは、決して怖いものではありません」

学生の間では、外ではなくジムのトレッドミルを走るのが主流だ。マシーンだと、距離や時間、速さをすべてコントロールできること、信号やコース設計などを気にしなくて済むためだそう。また、スポーツジムの利用が習慣化している大学生の間では、他のマシーンと合わせてジムでのエクササイズのルーティンの一環として走る人が多いため、トレッドミルが人気なのだとか。ところが、サバさんはあくまでも外を走る。一人で自然の中を走る時間は欠かせないのだという。

一人の時間

普段、その日の気分や前日の睡眠時間、時間の制限などによって距離を変えるが、日中授業の合間に走る。

「ランニングは、私の心を支える土台です。走ることで日々のストレスから解放され、何も考えなくても良い時間が作れるので、頭の休憩になります。そして、何よりもランニングした後の身体の疲れが心地いいんです」

見知らぬランナー同士すれ違うときに挨拶すると、とても嬉しくて、それだけで気分が上がるもの。だが、一人で走ると『より長い距離を、より速く』と無意識に自分のプレッシャーをかけてしまいがちだ。つい、「ランニングをしなかった今日の自分はダメだ」と思いつめてしまったり、短い距離しか走れないと罪悪感を感じてしまうこともある。その解決策は……?

仲間の力

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最近、新しく始めた習慣がある。それは、友人らとの『犬ラン』。愛犬サンディーちゃんとの生活を始めてからだ。友人4-5人とそれぞれのペットの犬と、おしゃべりしながらゆっくりとしたペースで、時には止まったりしながらワイワイ走る。それまで一人で走っていたときは、呼吸法や距離を意識してしまっていたが、友人と走り始めて気づいたことは『速く、長く走らなくてもいい。そして毎日走らなくてもいい』ということだ。気楽に走ることを学んだ。

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カリフォルニア州北部に位置するレイク・タホ。

今では週に一回程度は一人で走り、残りの日は仲間や犬とランニングを楽しむ。インタビュー当日も、キャンパス内を友人と犬と走っていた。今では、サンディーちゃんと車で2時間ほどドライブして、タホ湖の大自然の中でトレランを楽しむこともある。

初めはサバさんよりも走るのが遅かった子犬のサンディーちゃん。体力がついてきて、最近はサンディーの方がサバさんよりも速く走って先に行ってしまうこともあるのだとか。

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サンディーちゃんも体力に自信あり。

友人と犬だけではない。運動好きだというボーイフレンドとは、旅先でも走る。これまで最高の思い出は、クロアチアのパクレニカ国立公園に行ったときだ。

「雨が降って風が吹いている日でしたが、一日中移動して身体が固まっていたので、二人で走ることにしました。すると、見知らぬ観光客の集団が、拍手をして大声で応援してくれたんです。そして私たちのために腕を上に伸ばしてアーチのトンネルを作ってくれて、その中を走り抜けました。最高の思い出です」

ランニングを通して、色々な人と交流する機会が増えたのだ。

最後に、日本のランナーの皆さんにメッセージを!

冗談まじりにこんな言葉をくれた。

「ランニングというとフルマラソンの写真や記事が多いですが、少しの距離ならば、腹筋が6つに割れていなくても、誰でも走れます(笑)。身構えずに気楽に、ランニングを一緒に楽しみましょう! もちろん歩いてもOKです」

距離やタイムにとらわれず、ランニングを上手に生活に取り入れているサバさん。彼女と一緒に時間を過ごすだけでポジティブなエネルギーをもらい、自然と元気になれる。その力強いエネルギーの源は、ランニングなのかもしれない。健康な心と身体で、これからどんな活躍を見せてくれるか楽しみだ。

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 サバ・ゾウディー(Saba Zewdie)

アメリカ、オレゴン州ポートランド出身。サッカー、ランニング、ボルダリングが好きな活発な大学院生ランナー。現在は産業動物獣医師を夢見て勉強中。今年9月に愛犬サンディーちゃんとの生活を始める。好きなランニングスポットはアメリカ・カリフォルニア州のタホ湖のトレイルラン。現在は試験や実習の合間を縫って走ることでリフレッシュしている。好きな言葉は「デザートはいつでも別腹! (There’s always room for dessert!)」

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