「ヒマラヤの健脚の民」シェルパに出会った。【世界一周・松岡絵里が見た世界の走り】
Apr 29, 2016 / SPOT
Apr 26, 2019 Updated
みなさん、こんにちは!
幼少時代をアジアで過ごしたことから、大人になっても放浪癖が抜けなくなってしまったわたくし、ライター・編集者の松岡絵里です。
今回は、世界一周の中で出会った、驚くべき脚力をもったシェルパという民族について書いていきます。
そもそも旅について書くことになったのも、結婚式を機に夫婦揃って仕事を辞め、「新婚旅行は世界一周!」と鼻息も荒く日本を飛び出した若気の至り、からだったりします。
当時、夫は会社の人に「わが社始まって以来、初の男性の寿退社だ。頑張れ!」と妙な激励されていました。
しかし実際はといえば、さして頑張ることもなく、のほほんと世界を旅する日々。
そんな中でも数少ない「頑張った」思い出となっているのが、ネパールでのトレッキングです。
ネパールはヒマラヤの山々をめぐるトレッキングが観光の目玉として知られています。
そのトレッキング中に印象的だったのが、背後から何度も地元民に追い抜かされたこと。
こちらが必死でハアハア歩いているのに、彼らは涼しい顔で、しかも倍ぐらいのスピードで走っていく……。
そのうえ、足元はサンダル!! さらに大量の荷物!!
それなりに旅の経験値を積んだと思っていましたが、さすがにこれには驚きました。
聞けば彼らの多くが、シェルパという少数民族。
ネパールの山岳地帯に暮らし、山々を飛び回る、「健脚の民」なのです。
彼らの多くは山岳ガイドなどの仕事に就き、登山家たちの大量の荷物を運搬するなど「縁の下の力持ち」の役割を果たしています。
ちなみに、1953年にニュージーランド人の登山家、エドモンド・ヒラリーとともに人類で初めてエベレストに登頂したテンジン・ノルゲイはシェルパでした。
歴代のエベレスト最多登頂者アパ・シェルパもまた、その名の通りシェルパです。
シェルパは身長150~60センチ台と小柄で、体脂肪分が少なそうな細身の人ばかり。
子供の頃から裸足で高地を駆け巡ってきた彼らは、足腰が強く、高い心肺機能を持っています。
それらが証明されるのが、「世界で最も高地で行われるマラソン」と言われるエベレスト・マラソン。
標高5364メートルのエベレスト・ベース・キャンプをスタート地点とする42.195キロのトレイル・コースです。
エベレスト・マラソン公式サイト(英語)
http://www.everestmarathon.com/
それだけの高地では「走る」ことだけでも大変です。
実際、私もエベレスト・ベース・キャンプを2度訪れましたが、それなりに高地順応した後でも歩くので精一杯。
お恥ずかしながら、3キロ歩くのに1時間半もかかりました…。
そんなハードなマラソン大会ですが、参加者の約半数を外国人ランナーが占めます。
とはいえ、上位は毎年地元・ネパール人が独占。
シェルパも数多く入賞しています。
2015年は女性部門で上位1、2位にシェルパが輝きました。
確かにトレッキング中に出会うシェルパは女性たちも男性顔負けのタフレディが多く、農作業でも男性も驚く力持ちっぷりを発揮します。
シェルパは子供の頃から裸足で高地を駆け巡り……と聞いて、ふと思い出すのが伝説のランナー、アベベ。
ローマオリンピックでは裸足で走り切り、無名ながら優勝をさらい全世界の度肝を抜きました。
東京オリンピックでは初の二冠を達成、日本人を熱狂させたのです。
ネパール自体はオリンピックでまだメダルを獲得していません。
それはきっとスポーツの歴史が浅いゆえ。
シェルパの中にはダイヤモンドの原石たるランナーも少なくないはずです。
次の東京オリンピックでは、ひょっとしたらシェルパから第二のアベベが登場するかもしれませんね。