2025世界陸上35km競歩銅メダル&マラソン競歩サブ3達成!自衛隊体育学校・勝木隼人選手に聞く、競歩のトレーニングと身体の使い方

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東京2025世界陸上35km競歩で銅メダルを獲得し、マラソン競歩ではサブ3を達成した自衛隊体育学校・勝木隼人選手。

今回は中距離・長距離種目を経て競歩に取り組んできたこれまでの歩み、現在のトレーニングや身体の使い方について、スポーツMC・岡田拓海さんとともに話を聞きました。

転機を重ねながら続けてきた競技人生

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「ウガリ」※イメージ

勝木さんは中学校から陸上競技を始め高校では中距離種目を専門とし、東海大学入学直後は長距離種目に取り組み始めます。「当時はケニア国籍の人々の身体能力に憧れを抱いていた」という勝木さん。

穀物の粉を湯で練り上げたアフリカの伝統食『ウガリ』を取り入れるほか、10〜20kmを走って通学するケースもあるというケニアのライフスタイルに倣い、勝木さんも朝練前に20km、午後の練習後にさらに20kmを走る生活を送っていたと語ります。

月間走行距離は1500km程に達していたものの、その負荷の大きさから体を壊してしまったそう。

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※画像はイメージ

その後、駅伝部のマネジャーを務めていた大学2年の5月に競歩部コーチの勧めで競歩を開始。監督の許可を得てマネージャー業と両立しながら取り組み、わずか3か月で日本インカレ5位に入賞。さらに2011年、2012年には10000m競歩で連覇を果たしました。

勝木さんは「高校時代から競歩に取り組んできた選手に追いつくには3倍の努力が必要」と考え、日本インカレで2年連続表彰台に立った先輩の3倍の練習量を自らに課していたといいます。

マネージャー業の合間を縫う環境だったからこそ、自身の状態を客観的に捉える視点も養われたとのこと。トレーニング方法だけでなく食事についても『ウガリ』ではなく甘いものを補給するよう切り替えるなど、栄養の重要性も実感するようになったと話します。

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大学卒業後はアルバイトをしながら競技を継続。2007年の世界陸上大阪大会男子50km競歩に出場した山﨑勇喜選手が自衛隊体育学校に所属していたことから、勝木さんも2014年に一般隊員として自衛隊へ入隊。

当時は目立った成績を残せていなかったため周囲から競技引退を勧められる場面もあったそうですが、それでも競技を続ける意志を持ち続けていたと話します。

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勝木隼人選手

その後、2021年の東京オリンピックでは男子50km競歩に出場。一方で2024年パリオリンピックに向けては競歩種目が急遽10km×4リレーや20kmへと種目変更されたことにより、これまで長距離種目に取り組んできた勝木さんは再び引退を勧められる状況に直面したといいます。

しかし引退勧告を受けた直後に臨んだ自衛隊体育学校所属としての引退レース(20km競歩)で優勝。苦手としていた20km競歩での勝利だったことが評価され現役続行を勝ち取り、2025年の日本陸上選手権男子35km競歩でも優勝を果たします。

つづく東京2025世界陸上では2時間29分16秒で銅メダルを獲得。勝木さんは「数々の大会に出場してきた中で、本大会はとくに日本の応援の多さを強く感じ予想以上の盛り上がりだった。声援が後押しとなりレースを楽しめた」と振り返ります。男子35km競歩は大会初日に行われたため、会場の雰囲気を読み切る前にスタートしたことも思い切り競技に臨めた理由の1つだといいます。

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さらに第62回全日本競歩高畠大会のマラソン競歩では2時間55分28秒を記録し優勝。マラソン競歩の記録は2026年以降のものから正式認定となるものの、現行の世界記録基準である2時間56分30秒を超える記録を達成しました。

直近ではブラジリア2026世界競歩チーム選手権大会で、マラソン競歩個人およびチーム競歩の両種目で優勝し金メダルを獲得しています。

競歩特有のフォームを支えるトレーニングと身体づくり

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最近はスケジュールの都合もあり月間歩行距離が800kmほどだったといいますが、2025年は週に1日の休息日を設けながら月間1000〜1100kmほど歩いていたと話します。

練習前には手やゴルフボール、ストレッチポールを使い1時間以上かけて全身のケアやストレッチを行い、筋肉の張りをほぐしているという勝木さん。

ウォーミングアップを経て本練習に取り組んだあとは身体のバランスや接地位置の確認、腕回しといった動きづくりを30分ほど行い、身体の状態を整えているといいます。

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補強トレーニングはほぼ毎日行っており、1時間半から2時間ほどの時間を充てているとのこと。競歩は脚への負荷が大きく、必要以上に負担をかけるとけがにつながる可能性があることから、休日前に脚、それ以外の日は腹筋や背筋、肩まわりなど上半身中心のトレーニングに取り組んでいるといいます。

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スポーツMC・岡田拓海さん

競歩は常にどちらかの足が地面に接していること、さらに前脚は接地の瞬間から地面と垂直になるまで膝を伸ばす必要がある競技。「良いフォームを維持するには、骨盤に加えて肋骨まわりの動きが重要になる」と勝木さん。

ランニングのように膝や足首で衝撃を和らげることが難しいため、肋骨まわりをクッションのように使い着地時の衝撃を吸収しながら推進力につなげていることで、けがの予防にもつながるといいます。

肋骨まわりを鍛えるためにチューブを使った強化に加え、横になった状態で肋骨まわりを伸縮させる動きや腕振りと連動させるトレーニングにも取り組んでいるそう。

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勝木さんはランニングについても「厚底シューズの普及により上半身の動かし方に頼らずとも走ることはできるが、トップランナーの中には肋骨まわりをうまく使って上下動を抑えた走りをしている人もいる」と言及します。

長距離のトレーニングに取り組む日は、7時から17時30分ごろまででおよそ80kmを歩くこともあるそう。昼の休憩も短時間で済ませるといいます。

また、疲労が大きいときや歩くことに気持ちが乗らないときに走ることもあるとしつつ「その頻度は年に1回あるかないか程度で、基本的にランニングは行わない」と練習スタイルを説明する勝木さん。

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レース後半でも体幹を維持するための秘訣については、“気持ち”が重要とのこと。「体力的にきつくなる局面で身体の動かし方を変えると推進力が落ち、さらに苦しくなる感覚がある」とし、状態が厳しい場面でも動きを変えない意識を持ち続けていると話します。

日々の食事と補給の取り入れ方

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食事は朝と夜は妻の手料理を中心に、昼は栄養バランスを意識して摂取。白米と味噌汁、野菜を欠かさず取り入れ、主菜は魚か肉としています。

タンパク質の量など摂取する栄養素を細かく決めているわけではないものの、トレーニングを行う日はエネルギー切れを防ぐため白米を朝に1〜2杯、昼に2〜3杯、夜は食べられるだけ摂取しているそう。

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運動中の補給については、東京マラソン2026でペースメーカーを務めた際には補給ジェルを2〜3個摂取。一方、普段は長距離トレーニング時も含めスポーツドリンク『アクエリアス』で賄っているといい「2021年ごろまでは補給ジェルを使用していたものの、胃の不調やエネルギーとしてうまく吸収できない感覚があったことから、使用を控えるようになった」と話します。

勝木さんの勝負シューズと競歩の面白さ

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勝木さんはかかと部分のミッドソールの傾斜が特徴のMIZUNO(ミズノ)『ウエーブリベリオン PRO 3』をベストな勝負シューズだとし、厚底シューズによって1kmあたり5秒ほどタイムの変化が出ると話します。

一方で競歩で厚底シューズを使用すると、反発力の高さから身体のフォームが崩れやすくなるそう。推進力を受けた状態でどのようにフォームを維持するかを試行錯誤してきたといいます。

また、ランニングと競歩では人によってシューズや接地時の足のつき方などに大きな違いがあるとしつつも、ランナーが競歩に取り組むと股関節や上半身の使い方が身につき、タイム向上につながるケースも多いといいます。

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競歩はルールに則ったフォームを維持しながら歩き続ける必要があり、順位やタイムに加えて失格判定も伴う競技です。レース中は他の選手に揺さぶりをかけるような戦略も求められるといい、厳しい制約の中で速さを追求していく点に面白さを感じていると勝木さん。

今後は市民ランナーのレースとあわせて競歩種目も取り入れられる大会が増えていけばうれしいと語ります。

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