友人3~4人と始めた『ランニングと朝食』。食でつながるRUNの楽しみ方
May 01, 2019 / MOTIVATION
May 01, 2019 Updated
Facebookグループで『ランニングと朝食』というコミュニティをつくっている林 曉甫(はやし あきお)さん。土曜の朝に清澄白河エリアからスタートし、朝食会場までラン。走って、朝食を一緒に食べるというシンプルな会を3年間続けています。『走る』を媒介して集まる人とのつながりの化学反応をどう楽しんでいるのか聞きました。
誰かと「朝食を食べたい」から始まったランニング
「木場公園を走っているとき、緑がキレイな季節で気持ちがよく、『人と走りたいな』と思ったことが始まりでした。走るという行為だけでモチベーションを掻き立てるのが難しくて、人と走るなら朝食も一緒に食べたいなと」
そこで、SNSで呼びかけて応えてくれた友人3~4人と始めたのが『ランニングと朝食』。現在はFacebookグループに174人のメンバーがいます。
「人と走ること、食べることを分かち合いたいと思って。知り合いはもちろん、はじめましての人とも話せたらいいなと思っていました」
走って話して、一緒に食べてつながって
林さんは、気負いなくこの会を始めたと言います。それでも、3年も続いているのは?
「一貫しているのは、僕や中心メンバーがホスト的に『みなさん楽しんでくださいね』としていないこと。僕や参加している人が楽しいかどうか。初めての人と楽しく走れて、食事ができるかを気にかけています」
仕事として、アートを活用した人と人とのつながりづくりなどを経験してきたという林さん。単に「人に興味がある」だけではなく、どんなふうに関係性ができて、そこから何が発生していくのか、活動を通して自ら体感しています。
「速く走るようになるためのトレーニングではなく、走っているテンションの中でどういうふうに人とものの見方を共有するか」
例えば、ディズニーランド好きなメンバーがいたら、その魅力をどんどん話してくれます。そして“ディズニーランド周辺ラン”の企画につながるなど、形になっていくことも。
「人の好きな話を聞いてみると、その先の人柄にふれることができるのがいいんですよね」
枠はできる限り作らず、出入り自由な場所として
取材日に参加していた女性に話を聞いてみると、
「Facebookで、“ランニング 朝食”と検索してみたんです。そしたら、ここがあって。林さんはじめ、みなさんがいいゆるさでいるので、参加しやすいなと思っています」とのこと。
きっちりとした枠を決めないのも、林さんのこだわりです。
「出入りな自由な場所、コミュニティになってほしい。できるだけ、そこを曖昧にしておきたいと思っています。もっとしっかりコミュニティ作ってほしいと思う人もいるかもしれないですが、僕としては“ランニング”と“朝食”っていうところだけにコミットしてもらえばいいんです」
コミュニティというフレームを作ると、当然ながら“ウチとソト”という区切りができてしまいます。当然のことですが、そのフレームにはフォーカスしない。だからこそ、いろんな人がハードル低く入れて、つながりができていく。
「清澄白河で開催しているのは、僕や主要メンバーがそこに住んでいるから。もちろん、ここが地元じゃない人も歓迎です。最初は近所の人と知り合いたいというニーズもありました。でも、引っ越した仲間が引越し先の横浜でやりたいと言ってくれて。いろんな『ランニングと朝食』のチームが各地にできたらいいなと思っています」
東京という街といい塩梅でかかわっていたい
街ランニングの楽しさは、いろんな街の側面を見られること。東京の街で朝に走るということにも林さんは意味を見出しています。東京出身ですが、メキシコや大分での生活を経て、2013年に東京へ戻ってきました。
「戻ってきたとき、中から見る東京のイメージと、外から見た東京のイメージの乖離があって。単に好きとか嫌いではなくて、どうしたら自分がかかわって、おもしろい状況が作れるかと思ったんです」
人との付き合いが濃密な地方のコミュニティ、匿名性の高い都市での生活。そのどちらによるのでもなく、自分からのかかわりで接する東京のおもしろさ。
それは走って、朝食を一緒に食べる人がいることで体験できるのかもしれません。
朝という時間帯も、いろんな人がアクセスしやすいタイミング。
「土曜日の朝という、日常だけれど、少し非日常感のある時間帯で関係を深めていくと、人とのつながりがもう少し手触りのある感じになっていく気がします。朝8:00くらいから朝食が食べられるところが増えると嬉しいですね」
自分たちの街、自分たちの楽しさから広がるもの
2018年秋から『ランニングと朝食』を、Airbnbの体験プログラムとして登録。時折、外国人も参加するようになったそう。
「登録したのは、外国の人と交流したいとか、収益を上げたいとかではなくて、もし僕が外国に行って、朝早く着いてしまったとき、こういうのがほしいなと思ったから。ちょっと誰かと走って、朝ごはんを食べながらその街のことを知れたら、その場所のことが好きになるだろうなと。そうやって東京を紹介したいと思いました」
また、『東京2020参画プログラム』として申請して審査が通り、4月1日から参画プログラムに。参画プログラムのサイトでも紹介されています。
「東京2020大会についても盛り上げていけたらいいなと。『僕らのオリンピック』は、もう始まっています」
東京で行われるスポーツの祭典の発動前の鼓動を感じながら、自分たちの街を走る朝。人と人との間のつながりのおもしろさが、相似形的に国民的イベントへの関係に広がっています。
土曜の朝に走りたかったら走る、おいしい朝食を食べるというシンプルさは、変わらず続いていきそう。
朝食を食べたあと、それぞれの時間を過ごすため、手を振ったメンバーの表情の晴れやかさと足取りの軽やかさが印象的でした。
(文 東麻吏/ 写真 倉島周平)