“世界一自己ベスト更新率の高いレース”がコンセプト『Beyond』2年ぶりに復活。『Beyond 2025』会見レポート

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2023年の開催を最後に一時休止していたマラソン大会『Beyond』が、この冬2年ぶりに帰ってきます。“世界一自己ベスト更新率の高いレース”がコンセプトの本大会は、2025年12月29日(月)に開催されることが決まり、コース改良や新たな取り組みなど、ランナーにとって嬉しいアップデートが発表されています。12月6日には『Beyond 2025』の会見イベント『Beyond Fanfare』が行われ、復活に合わせて準備された新企画や、出演者たちが語った大会の魅力が紹介されました。本稿では会見の内容をまとめてお届けします。

一斉スタート&5分刻みペーサー配置!進化したレース運営方式に注目

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RUNNING SCIENCE LAB 邊見勇太さん

2年ぶり、通算5回目の開催となる『Beyond』。久しぶりの大会をより進化した形で迎えたいという思いから、今回の大会には大きなアップデートが加えられています。まず主催のランニングサイエンスラボ・邊見さんが強調するのは「参加者の自己ベスト更新率をさらに高めたい」という大会の方向性です。これまでも自己ベスト更新率は40〜50%という高い達成率を誇ってきましたが、今年は過去の達成率を超えていくことを目標に掲げていると話します。

中でも大きな変更として紹介されたのが“一斉スタート”と“5分刻みのペーサー配置”です。これまでのようにグループごとに時間差で走る方式ではなく、全員が同時にスタートする形式に変わります。さらに、5分ごとにペーサーを置くことで、参加者がグループから離れた際に一人でペースを維持する“孤独な時間”をできる限り減らしたい、という狙いがあるとのこと。走りながら気持ちが折れやすい場面をサポートできるよう、細やかな工夫が加えられています。

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そして今回のテーマは『BEYOND ONE TEAM』。参加者やペーサー、ボランティア、キャストに加えて、Runtripを含む協賛企業まで、関わるすべての人が一体となって記録達成を後押しする大会を目指していると語ります。

邊見さんは「これらのアップデートによって、より多くのランナーが自己ベスト更新に手を伸ばしやすくなるのでは」と話します。参加者が走りやすい環境づくりを追求しながら、チームとして支え合う大会へ。今回の取り組みは、その実現に向けた大きな一歩になりそうです。

新企画『A1 BEYOND』始動ーーアマチュア最速を決めるエンタメ型レース

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Beyond2025 オーガナイザー 三津家 貴也さん

今回の大会では新企画・アマチュアNo.1ランナー決定戦『A1 BEYOND』が開催されます。全国の有力な市民ランナーを集め、誰が一番速いのかを決める企画で、インフルエンサー兼『Beyond2025』オーガナイザーを務める三津家貴也さんがプロデュースしたもの。『Beyond 2025』が公認大会ではなく非公認コースであることを活かし、単に記録を狙うだけではなく、真っ向勝負の一騎打ちや駆け引きといったドラマを前面に出せる点を特徴にした、観る側も走る側も楽しめるエンターテインメント性の高いレースを目指していると話します。

会見では出場予定者の近藤秀一選手、渡邉利典選手、手代木壱吹選手に登壇いただき、それぞれ大会に向けた思いを伺いました。

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(左から)近藤秀一選手、渡邉利典選手、手代木壱吹選手

東京大学出身で実業団を経て、現在は実業団チーム・MABPマーヴェリックでコーチとして活動する近藤秀一選手。目標は自己ベストである2時間14分の更新。実業団引退から3年が経つ中で、指導する立場として選手に威厳を背中で示したいという思いが強く「もう一度本気で自己ベストを狙う」と決意を口にします。

青山学院大学で箱根駅伝優勝・2連覇を経験し、現在は仙台で株式会社RUNDYを経営する渡邉利典選手の目標は、2時間30分02秒を上回る記録。市民ランナーとしての自己ベスト更新を視野に「仙台から化学反応を起こしたい」と意気込みを語ります。

武蔵大学在学中の手代木壱吹選手は、初マラソンで2時間26分31秒を記録した新星。『Beyond 2025』では2時間15分を目標に掲げます。初マラソンでは余裕を残した走りだったことから、今回はチャレンジャーとして大幅更新を狙う姿勢を示しました。

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市民ランナーの急成長の理由は?選手が語る“レベル底上げ”の背景

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会見では参加者から「実業団選手に匹敵するような結果を残す市民ランナーが増えている背景は何か」という問いに対し、近藤秀一選手と渡邉利典選手がそれぞれの視点から分析を示しました。

近藤選手は、まずトレーニング情報の広がりが大きいと話します。これまで強豪校や実業団の内部にしかなかった“速くなるためのノウハウ”が、SNSの普及によって市民ランナーにも手に届くようになったことを挙げます。さらに、SNSを通じて連絡が取りやすくなったことで、チームの枠を超えて強い市民ランナー同士が集まれる環境が整い、質の高い合同練習が行われるようになったとのこと。アマチュアであっても実業団に近い負荷の練習をこなせるようになったことが、レベルの底上げにつながっていると感じているそう。

一方で渡邉選手は、社会的な変化が大きいと見ています。「働き方改革により定時退社やフレックス制が広がったことで、ランナーが練習時間を確保しやすくなったのでは」と分析。継続的かつ質の高いトレーニングを積める環境が整ったことで、市民ランナー全体の走力が押し上げられていると話しました。

また手代木選手には「初マラソンで2時間26分を出した理由」について質問が向けられました。手代木選手は問いに対し、週に2〜3回、ランニングサイエンスラボでトレーニングを取り入れていたことが大きかったと語ります。

短時間積み上げד足づくり”の重要性 近藤秀一選手が語る、多忙でも走力を伸ばす方法

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出場ランナーの質疑応答の後には三津家さんと近藤選手による、トレーニングに関する対談が実施。コーチを務めながらランナーとしてトレーニングに励む近藤選手は、多忙な日常でも走力を伸ばすための工夫を大切にしていると話します。その中心にあるのは「分割してでも運動量(走行距離)を稼ぐ」という考え方です。まとまった時間が取れなくても、短い運動を積み重ねることで走れる体は作れると強調します。

具体例として駅までの1kmを小走りにするなど、5分や10分でも動けば運動量は確保できるという視点で、走行距離を積み上げていくことを提案。1回のランニングで10km以上走らないと意味がない、といった固定観念に縛られる必要はないといいます。

また近藤選手は基礎となる“足づくり”を最優先に考えています。20km、30kmといった距離走のような専門的な練習に取り組む前に、日頃のジョギングで衝撃に耐えられる足を作っておくことが重要だと語ります。土台ができていない状態で負荷の高い練習をすると、怪我や疲労につながり、本来の目的である走力向上が遠回りになるためです。

忙しくても距離をつなぐ工夫をし、日常生活そのものを練習の場に変えていく姿勢は、多くの市民ランナーにとって実践しやすいヒントになりそうです。

さらに三津家さんと近藤選手の間では、陸上界の構造そのものについても議論も展開。近藤選手が所属するMABPマーヴェリックは“ファンに愛されるチーム”という理念を掲げ、選手が日頃からSNSで発信することを大切にしています。試合数が少ない競技だからこそ、日々のトレーニングや食事、裏側の努力を見せることでファンとのつながりを強め、グッズ販売などを通して企業の広告宣伝費に依存しない自立した運営を目指しているといいます。

三津家さんもこの考えに強く共感しており、個々の選手にファンがつくことで選手自身のセカンドキャリアの開拓につながりやすい点を評価。選手がタレントとして価値を持ち、スポンサーを獲得し、引退後も活躍できる未来を作りたい。その思いを体現する構想として自身が手がけるプロジェクト『FULL HOUSE』を例に挙げ、陸上選手の“芸能事務所”のような機能を担う存在へと育てていきたいという思いを語りました。

フラットなコースが自己ベスト更新を後押し

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『Beyond2025』では夏に行われた工事により、コースは以前よりも大きく改善されています。これまで傾斜が残っていた路肩部分が拡張され、フラットなエリアが増えたことで、より走りやすい環境になったと三津家さんは話します。自己ベストを狙いやすい設定へと進化している点は、多くのランナーにとって大きなメリットになりそうです。

緻密に計画を練られたペースメーカーの配置、フラットなコース。そしてランナーの未来を見据える運営人が手掛ける『Beyond 2025』。年に1度のお祭りとして、自己ベスト更新以上の価値が生まれる大会となりそうです。

詳細情報

Beyond 2025

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日時:2025年12月29日(月) 8時30分開場
・場所:日本自動車研究所城里テストセンター 高速周回路コース(一周約5.5km)
・種目:フルマラソン(非公認)

公式HPはこちら

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