ランニングに多いケガ「足底筋膜炎」。足裏が痛む原因や予防法をランニングコーチが徹底解説
Dec 09, 2023 / HOW TO
Dec 09, 2023 Updated
ランナーのケガの悩みで膝の悩みに次いで多いのが足裏の悩み。マラソンシーズンに入り、頑張って走り過ぎたため、足裏が痛む『足底筋膜炎』で悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
マラソンシーズンを思う存分楽しむためにも、ケガの予防法を知っておくことは大切な要素となります。そこで、こちらの記事では初心者ランナーからシリアスランナーまで多くのランナーをサポートしているプロランニングコーチ・黒川遼さんに足裏の悩みの解消法やケガ防止について、スポーツMCのヤッホーカレンさんがお話を聞いて実践していきます。
「足底筋膜炎」になりやすい走り方・タイミング
カレン:今回はランナーに多いケガの部位第2位、足・アーチについてお話していきます。足の裏が痛い、足底筋膜炎になったという声はよく耳にしますよね。
黒川:かかとから足の裏の真ん中にかけて痛い症状ですよね。
カレン:そもそも足底筋膜炎はどういった走り方によって引き起こされますか。
黒川:重心がうまく移動できない走り方をしているときですね。腰が落ちた状態で足ばかり先に出そうとする走り方は、膝が伸びっぱなしで着地しがち。そのとき足裏に大きなストレスがかかってしまいます。もう1つは後ろの足が頑張り過ぎてしまう場合。身体が足に乗り込むときにスムーズに着地した足が次の動作へ移ればいいのですが、足裏で頑張って蹴ってしまう方が痛みを引き起こしやすいですね。
カレン:長く走ってきて、疲れてしまうと足裏のアーチが崩れやすくなりますよね。
黒川:あとは体重が増えて急にダイエットを張り切ったり、風邪などで体調を崩してしまい久々に走るときに起こりやすいんです。
理想的な足のアーチの形状とは?
カレン:理想的なアーチの形状はどういうものでしょうか。
黒川:骨模型を使って説明していきますね。アーチには横、外側縦、内側縦の3種類があります。横のアーチは、中足骨がきちんと束ねられていると、MP関節(母趾や小趾の付け根に位置する関節)の部分が高くなります。しかし、形が束ねられずグシャっとなると、いわゆる「アーチが潰れている」状態となります。外側縦アーチは立方骨(足の甲の真ん中からやや外側にある骨)が下がっている、内側縦アーチは舟状骨(内くるぶし下の少し出っ張っている骨)が落ちているとアーチが潰れているとされる状態です。
理想のアーチは、『トラス機構』と『ウィンドラス機構』の掛け合わせが大切になってきます。トラス機構とは立っているときに足が地面に着地すると足底筋膜を伸ばして体重・衝撃を吸収する機構のこと。一方、ウィンドラス機構とは着地してから前へ進む際の『離地』で足の指が上に反り返ると足底筋膜がピンと巻き上げられて足のアーチが高くなる現象が起こります。重心移動のときに足底を緊張させてバネとなる役割を果たしています。
例えば、接地後にアーチが潰れない(ハイアーチ)という方や、離地にかけて足裏に張力を作れない(扁平足で足裏がピンと緊張しない)方は、バネを上手く使えないためストレスがかかっています。そのため、2つの機構のバランスが大切になってきます。
特にかかとが内側に転がりやすいと扁平足、外側に転がりやすいとハイアーチの兆候が見られます。
カレン:アーチについての知識はとても奥が深いですね。それではこれから私の足の状態をチェックしていきたいと思います!
足裏の柔軟性・足趾の状態をチェックしよう
①かかとの位置をチェック
黒川:握りこぶし1つ分足を開いていただいて、かかとのチェックをしていきます。
かかとの位置とアキレス腱の位置を見比べていきますが、かかとの位置とアキレス腱の位置がずれている時には、かかとは内側か外側に入っていることになります。カレンさんの場合はかかとが内側にコロンと転がってしまっているので、左脚のふくらはぎが外側に逃げていっていますね。これはケガのリスクになります。
黒川:一人でチェックしたい場合は、誰かに写真を撮ってもらったり、鏡でチェックすると良いでしょう。ちなみにかかとが大きくゴロンと内側に移動すると内側がつぶれた感じがすると思いますが、どうですか。
カレン:気持ち悪い感覚はあります。
黒川:今度はかかとを外側に大きく移動してみるとアーチが作られる感じがしますが、外側が頑張り過ぎているのがわかりますね。
②「しゃがみ」でチェック
黒川:それでは次に重心移動に関わってくるしゃがみについてやっていきます。膝をかかえてしゃがんでみてください。
黒川:スッといきますね。両足をくっつけてしゃがめるかどうかを見ていただきたいです。これができないでゴロンと尻餅をついてしまった方は背屈と言って足を上に上げる可動域が少なく、重心の移動が苦手だったりします。
③指を折り曲げてチェック
黒川:次は指がそり上がるかどうかの確認をしますので、指を折り曲げてください。90度ぐらいそり上がると思いますが、足裏がピンと張れるので、そんなに悪くはありませんね。カレンさんは左の足の方が痛めやすいので硬くなる傾向がありますね。
カレン:簡単なチェック方法を教えていただきましたので、ぜひ皆さんも試してくださいね。
足裏のケガの予防&改善エクササイズ4選
カレン:それでは足の裏のストレッチとトレーニングをしていきます。
黒川:足の裏のトレーニングは細かくいろいろありますが、今回は厳選して4つを紹介していきます。
①足底の緊張抑制×ストレッチ
1.ボールを足裏(母趾球がある手前の筋肉)で踏む
2. ボールを踏んだ状態で足の指をグーパーと開く動作と閉じる動作を繰り返す。痛過ぎない程度に動かすことが大切
3. 足の外側で踏んでグーパーし、4本の指をストレッチする(体重をしっかり乗せるのがコツ)
4. かかと付近でボールを踏んでグーパーと動かす
5. 気になる位置の下にボールを入れてコロコロと転がす
黒川:4のかかと付近は板のように硬く感じますが、大切な位置なのでしっかりと動けるようにしていきます。また、ランニングでの重心移動はかかと→小趾球側→母趾球→母趾の順に流れていくので、ボールを使ってその部分を中心に感覚機能を向上させることは大切です。
②足指の可動改善
1. かかとを地面に付けて軸にしながら、すべての指先をひっぱり折り曲げる
2. 慣れてきたら足首を軽く回しながら指を折り曲げる
黒川:指の運動が大切ですが、足の指先を引っ張りながら行うと指の筋肉がストレッチされて効果が高まります。
③下腿三頭筋ストレッチ×小趾球の荷重改善(扁平足の方におすすめ)
黒川:足底筋膜炎になる方はふくらはぎが張りやすい傾向があります。そのため、ふくらはぎのストレッチも欠かせません。
1. 柱に手をかけて、段差に前足を乗せる
2. 膝を伸ばしたままかかとを上げ下げする
3. かかとの位置が内側や外側に行かないよう意識しながらストレッチを行う
黒川:膝を伸びっぱなしにしたままかかとを下ろすと腓腹筋がストレッチされますが、膝を少し曲げることでふくらはぎの深いところにあるヒラメ筋がストレッチされます。
4. 膝を軽く曲げ、かかとを落としたところから、伸び上がるようにかかとを上げる(上下を繰り返す)
黒川:このストレッチは前足部への体重のかけ方が重要です。母趾球にだけ体重をかける癖をつけると、外反母趾になってしまう可能性もあるので注意して行いましょう。扁平足の方は、小趾球(外側)に体重をかけることがポイント。後脛骨筋が働いて、内側のアーチを上げてくれます。
カレン:ちょっと意識するだけで力の入るところが全然違いますね。
黒川:母趾だけに体重をかけるのはやめた方が良いと思いますが、母趾球と小趾球へ均等に体重をかけることも大切。慣れてきたら身体の向きを90度変えて、段差のフチに小趾球だけを乗せた状態で上下してみましょう。
④立方骨引き上げのペン踏み
黒川:内側縦アーチが高過ぎるハイアーチの方や、扁平足でアーチが無くなっている方におすすめのエクササイズを紹介します。ペンを踏むことで立方骨を引き上げます。第5中足骨といって外側の5本目の指の中足部を触るとボコっと張っている部分(第5中足骨の端)があるので、その骨の後ろ(立方骨)が目安です。
1. 床にペンを置く
2. ぐっと体重をかけて乗り込むように踏む
黒川:痛みを強く感じる方は無理のない範囲で行ってください。状態が良い方の足と悪い方の足を比べると、アーチのコンディションが悪い方の足が痛く感じる傾向にあります。
カレン:痛みを感じることがご自身のコンディション、状態に気づくためのポイントですね。
5分でできる!ケアを取り組みながらランニングを楽しもう
カレン:今回は4つのストレッチを教えていただきましたが、足底筋膜炎の予防と改善法を知ることができて学びになりました。
黒川:本来は他にもたくさんのストレッチがあるのですが、その中から特に重要なストレッチを4つに絞って紹介しました。簡単にできる内容なので、まずはこれだけでも実践してみてください。
カレン:今回実践してみて、簡単にできるということを実感しました。5分くらいで、すぐに取り組める内容ですよね。これからの時期マラソンシーズンに入っていきますので、走り込む方のコンディショニングとしても知ってもらいたいですね。
黒川:ランナーにとってケアはとても大切になりますので、走ったらまずはしっかりとケアしていきましょう。
今回は足底筋膜炎に絞ってセルフケアを紹介しましたが、
【過去動画はこちら】
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多くのランナーが悩む足底筋膜炎の予防法&改善エクササイズを黒川コーチに教えていただいた今回。本格的なマラソンシーズンを迎え、走り込んでいるランナーの皆さんもぜひ日々のケアに取り入れてみてくださいね。
カレンさんも言う通り、黒川コーチに教えていただいたエクササイズは短時間で実践できるものばかり。ストレッチを取り入れながら、痛みなく、安全に楽しくランニングを続けていきましょう。
【動画でご覧になる方はこちら】
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