雨の東京マラソンを支えた1万1000人。ボランティアの想いを学ぶ

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©東京マラソン財団

降りしきる冷たい雨の中、およそ3万8000人のランナーが駆け抜けた今年の東京マラソン。

来年、東京オリンピック・パラリンピックがやって来る東京を走ったランナーには、一人ひとりのドラマがあったことだろう。

そんなランナーたちをサポートしてくれたのが、約1万1000人のボランティアだ。この人たちがいなくては、ランナーのドラマは成立しない。

号砲が響く前日、東京マラソンを支えるボランティアの方に話をうかがった。

初めて会った人同士が仲良く活動できる場所

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「はじめまして」。一気に距離が縮まるような明るい笑顔で挨拶してくれたのは、儀賀(ぎか)亜希子さん。「笑顔が素敵ですね」と言うと、「山ほどあるボランティアの研修では、笑顔が一番大事と教えられるんです」と話してくれた。

儀賀さんの今回の役割は、スタートエリア・出発係の『リーダーサポート』。東京マラソンのボランティアの運営体制は、『メンバー・多言語対応メンバー』(約11000人)、『リーダー』(約700人)、『リーダーサポート』(約90人)に分かれている。

『メンバー・多言語対応メンバー』は、活動ごとに10人から20人を1班として、現場で『ランナーを支える』役割。『リーダー』は研修兼選考を経て採用され、『とりまとめ支える』役割だ。そして、儀賀さんが担当する『リーダーサポート』も研修兼選考を経て採用され、リーダーをサポートし、大会スタッフと現場を『つなぐ』役割を担う。

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儀賀さんが初めて東京マラソンでボランティアを務めたのは、2017年。きっかけは『東京2020』だった。

「わたしは渋谷区在住なんですが、せっかく新国立競技場に近いところに住んでるのだから、オリンピック・パラリンピックを間近で体感してみたいと。ならば、ボランティアをすれば……と思ったんです。まだ応募している段階で、できるかどうかはわからないのですが、2020年にボランティアをするには経験が必要だと考え、東京マラソンのボランティアになったんです」

とはいえ、東京マラソンもまた規模の大きい大会。その前にスポーツボランティアのイロハを学んでおく必要があると、儀賀さんはまず『新宿シティハーフマラソン』のボランティアに。これがスポーツボランティアとしてのデビューになった。それからまだ2年数か月しか経っていないが、儀賀さんがスポーツボランティアをした大会・イベントは、すでに40近くに及ぶ。競技はマラソンが多いが、スーパーラグビーのサンウルブスの試合でボランティアをしたことも。儀賀さんは「もうすっかりボランティアが生活の一部になっていますね」と笑う。そして、こう続けた。

「初めて東京マラソンでボランティアをした時、すぐにボランティアの魅力にはまりました。東京マラソンは、ボランティアの人の熱も違うんです。それと、初めて会った人同士がこんなに仲良く活動できる場所があるということに惹きつけられて。大きな達成感をも味わいました」

ふだん出会えないような人との時間をもらえる

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週末はほぼ、どこかの大会へ。儀賀さんの変化に、周囲は「アウトドア派ではなかったのに……」と驚いているようだ。時に「せっかくの週末なのに、交通費を使って自分の時間を使ってなぜ? 」と言われることも。だが、儀賀さんにとってボランティアは、お金を払って趣味のゴルフに行くのと同じ感覚だという。

「行けば楽しい思いができますし、ふだんの職場やプライベートでは出会えないような人や高校生から70代まで、幅広い年代の人と出会える。私としてはそういう時間をもらっている感じなんです」

もっとも、決して楽しいことばかりではない。今年の東京マラソンのように、悪天候は屋外のスポーツイベントには付きものだし、運営が上手く回らない大会もある。それでも儀賀さんは「無償で奉仕しているんですし、とにかくどんな時も楽しむように、笑顔を忘れないようにしています」。

今年の東京マラソンでは、大学受験が終わった儀賀さんの娘さんも初めてボランティアに。儀賀さんは「たくさんの大人、いろいろな大人に出会えるのは、とてもいい社会勉強の場になるのでは。東京マラソンのボランティアはとてもシステマティックなので、初心者の娘がいきなり入っても安心です」と、歓迎の様子だ。

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儀賀さんは、これからもスポーツボランティアを続けていくという。

「わたしはまだ年数が浅いですし、ベテランの方が大勢いらっしゃるので、ライフワークにしたいと言うのはおこがましいのですが、この活動はわたしにとって、とても大切なものであるのは確かです。お世話するのではなく、スポーツを楽しむように、そして、そこにいることでお役に立てるならという気持ちで、できるだけ長くできれば……そう思っています」

ボランティアになった目的は十人十色

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儀賀さんと同じように、『東京2020』でボランティアをしたいという気持ちから、東京マラソンでボランティアをするきっかけになった常兼智代子さんと橋本麻由さん。ともに大学1年生で、スポーツボランティアをするのは、今回の東京マラソンが初めてだという。2人はフィニッシュ地点の担当になったが、各々、ボランティアをするにあたって明確な行動指針がある。

「大学のオープンキャンパスではボランティアの経験がありますが、それとはまったく違うと思うので、自分ができる範囲でやってみて、できなかったことを今後の糧にできれば」と話してくれたのは常兼さん。一方、「将来は自分の英語力を生かした職業に就きたい」と考えている橋本さんは「他国の人と話す機会があれば、自分の英語力がどれだけ通じるか、是非試してみたいです」と教えてくれた。

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今年の東京マラソンの抽選倍率は、実に12倍。残念ながらスタート地点に立てなかったランナーは多い。そんな中、「自分が走れないのなら、ボランティアとして同じランナーを、ラン仲間を支えたい」とボランティアに回ったのが、田子裕紀子さんだ。ラン歴8年、フルベストは3時間24分と、サブ3.5のランナーだ。club MY☆STAR(クラブマイスター)というランニングクラブに所属しており、月間平均250㎞走っている。

今回の田子さんの担当は、手荷物預かり。6時30分集合と、早朝からの活動だ。田子さんがランニング大会でボランティアをするようになったのは、最近のこと。田子さんは「実際にボランティアをしてみて、その大変さがよくわかりました。特に悪天候の時ですね。雨の日の給水は本当に難しい」と話す。ただ、ボランティアを経験したことで「自分が大会で走れるのもボランティアのおかげ、という思いが強くなりました」。今後も都合がつくときは、自分が出場しない大会のボランティアをしていくつもりだという。

東京マラソンに出場したランナー、一人ひとりにドラマがあったように、東京マラソンを黒子として支えたボランティア一人ひとりにもストーリーがあった。来年も、笑顔でランナーを支えてくれるに違いない。

(写真 倉島周平)

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