“走る“フリーライター・三河の本棚:vol.3『遙かなるセントラルパーク<上・下>』

走ることの目的は、人によってさまざまです。健康のため、記録のため、あるいは楽しみとして走るという方など。私はと言えば、やはり『走ることを楽しんでいる』という答えになるかもしれません。ときに記録更新を目指すこともありますが、最終的には“楽しい”から走る。皆さんは、いったい何のために走っていますか?

今回ご紹介する『遙かなるセントラルパーク』は、ランニング関連では珍しい小説です。上下巻に分かれて読み応えは十分。その題材となっているのは、ロサンゼルスからニューヨークまで約5,000kmにも及ぶ、北米大陸を自らの脚のみで横断するというマラソンです。

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走ることを通じて繰り広げられるドラマ

5,000kmを走破するなんて、誰が想像できるでしょうか。私は100kmや400kmという大会こそ出場経験を持っていますが、これはその10倍以上にもなる距離。そもそも「5,000km走る大会を開催する」と言われたとして、「よし、出るか!」なんてほとんどの人が思わないはずです。

しかしこの大会、賞金が掛けられたこともあり、実に多くの、そして多様なバックグラウンドを持つ人々が参加します。まさに一攫千金のチャンス。もちろん、中には走破することに栄誉を感じていた方もいるのでしょう。だからこそ、その思いを中心に、大会そして人々を取り巻くドラマが生まれます。

困難に遭って走れなくなったり、レース中に思わぬ出会いが生まれたり。過酷なレースになるほど、その運営にもトラブルの可能性が伴うでしょう。本著の舞台となる北米大陸横断においても、やはり一筋縄ではいきません。3ヶ月間という長い期間では、私たちの想像も及ばないような事態が発生します。

それでも選手たちは、ただひたすらに走るのです。そう、遙か先に待っている『セントラルパーク』を目指して。あまり詳しい内容はネタバレになってしまうので触れられませんが、読み進めるうちに、まるで自分がそこを走っているかのようにさえ感じられる展開が待っているでしょう。

走ることの素晴らしさを感じる

どんな困難があったとしても、自らに誇りを持ち、目標を見失わない限り、人は走り続けることができる。その姿には、たとえランニングを始めたばかりの人であれ、共感と感動を得られるでしょう。やがてランナーの間には絆が生まれ、それが大きな力となっていく。走ることは自分との戦いであると同時に、人と人とを繋ぐキッカケになるのだと思わせてくれます。

「何のために走るのか」

「走るとはどういうことなのか」

ふとすると見失いそうなこうした事柄を、本著は文章を通じて伝えてくれるような気がします。カバンに入れて持ち運びやすい文庫本ですので、通勤・通学などの空き時間にもオススメの1冊。ただし本の世界に引きこまれ、乗り過ごしてしまわないように注意してください。

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上巻下巻

(著:T・マクナブ/訳:飯島宏/出版:文春文庫)

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