待たれた方も驚き!! 6時間待ちでW・キプサング選手に会った「スポーツインオラ」柳田さんの仕事術

先日、このラントリップマガジンの記事「飛騨御嶽高原高地トレーニングエリア」でお伝えした、高地トレーニングのメッカとなりつつある御嶽で、誰よりも多忙なスケジュールをこなしながらも、自らの夢を実現させようとしている人がいます。
御嶽の宿泊施設「スポーツインオラ」ゼネラルマネージャーの柳田主税(やなだちから)さんです。

(前回の記事はこちら)

柳田さんは、自らが切り拓いてきた独自の方法でこの地を「世界有数のトレーニングキャンプに変えていきます。御嶽から、スポーツインオラから金メダリストを輩出します」と力強く語ります。

今回のインタビューでは、柳田さんのこれからの想いや、その想いに到達するまでの経験に裏打ちされたその過程を探ります。

「待たれた方も驚き!! 6時間待ちでW・キプサング選手に会った「スポーツインオラ」柳田さんの仕事術」の画像飛騨御嶽高原高地トレーニングエリアの日和田ハイランド陸上競技場にて

人生の哲学はサッカーから学んだ

–柳田さんは、スポーツインオラの”走る敏腕ゼネラルマネージャー”ですね。そのルーツ、学生時代はどのようなことに取り組んでいたのでしょうか。

私は小学校からサッカーを始めました。
その流れで、中学、高校とサッカーを続けて来ました。
高校は徳島県の富岡東高校という学校で、年明けに行われる「選手権大会」、つまりは国立競技場のピッチに立つ事を本気で目指していました。

もちろんそれだけでなく、勉強にも真剣に取り組みました。
高校時代は徳島県で準優勝が最高実績で、国立競技場への夢は叶わなかったです。
同志社大学に入学してからは、サークルでサッカーを続けました。
サークルとはいえ、紫京杯という京都の学生サッカーサークルのNo.1決める大会では優勝することが出来ました。

–サッカーを通じて学んだ事はどういった事でしたか。

協調性やチームワーク、仲間を励ましたりであるとか、あとは戦術を考えたり、その応用を考えたり。
社会人になっての仕事でもその経験が生かされました。

また、私がサッカーに打込んでいた頃は、中田英寿さんが活躍していた時代でした。
彼の考え方や美学・哲学は、完璧かつ美しいです。
雑誌か何かの対談で、中田さんが“僕は中田英寿をやっているんです”と言っていたのが印象的でした。
そして今、私は“柳田主税をやっています(笑)”。

彼の美学や哲学は、私の仕事術にもですが、人生にも大きく影響を与えました。
私は、同志社大学では文学部英文学科に所属し英語を勉強し、大学1年の時はドイツ留学も経験してドイツ語を学びました。
私は、元よりグローバル志向があって、社会人になって海外で切磋琢磨し、自分自身を成長させたいと考えていました。

人生の転機となったインド駐在

–社会人になってから走り始めたという柳田さんですが、どういったきっかけでマラソンと出会いましたか。

社会人になってもサッカーを続けるんだろうなぁと思っていた矢先、2008年、第2回の東京マラソンに当選しました。
それがキッカケで「ヤバい、走らないといけない!」とこれが走り始めたキッカケです。

最初は独学で走っていましたが、サッカーをやっていた事もあって体力に自信はありました。
独学で練習を積んで臨んだ2008年の東京マラソンを2時間52分04秒で走破。
それからは、もうマラソンの虜になっていましたね。。
駅伝やマラソンに参加していく中で、市民ランナーとしての経験を積んできました。

–初マラソンでサブ3達成、お見事です。それからどのようにしてランナーとして成長されていったのでしょうか。

ランナーとしての成長といいますか、僕の人生での転機が28歳の時に訪れました。
国内のマラソンにたくさん出場して、記録も伸びていきました。

その頃、海外転勤が決まり、生活環境が大きく変わってしまいました。
研修でアメリカ、その後に中国、インドネシアと着実にステップアップしていって、そしてその後、大きな試練が待っていました。私の想像を絶していました。。。

インドで2年間、インド事業の統括を経験しました。
インドでは生活環境も日本人から見たら非常にハードですし、ヒンドゥーもいればイスラムもいます。
そんな中で、一から不動産を借り、従業員を雇用して彼らをまとめ、経理にマーケティング、その他のマネジメント…
私に与えられた予算と時間とミッションがプレッシャーとなり、ゆっくりと寝ている暇など到底無かったです。

相当キツかったですね…
それでも、心折れずにプロジェクトをやり抜き、本当に良い経験をさせていただきました。
どんなに辛くても「ここは自分にとって人生の転機。お金を払ってビジネススクールに行って絶対に学び取るんだ!」という強い気持ちのように、死ぬ気で学び、そして達成する。
本当にこの2年間は辛かったですが、この経験を乗り越えた事でより一層、成長する事が出来ました。

自らの足で世界と向き合う

–柳田さんは今までに、その目でその足で、世界各地のマラソン大会や合宿地を回って来たそうですね。それらは、どういった経緯からでしょうか。

インドでの毎日はとてもハードでしたので、ランニングに対するモチベーションの維持が困難でした。
そんな中、インドだけでなく東南アジアの大会を中心に、意地でも海外のマラソンや合宿地をこの目で見て、様々な経験を積みたいと思っていました。
東京マラソンに出場する為だけに日本へ帰国した事もあります(笑)。

ケニアに行った時は「イテン」という場所で過ごした事がありました。
男子マラソンの世界記録を更新した、ウィルソン・キプサング選手やデニス・キメット選手らと交流をし、世界最高レベルの選手の取り組みを目の当たりにしました。

そして、何より心掛けている事は「ギブアンドテイク」です。
彼らと交流する事は、日本の友人と交流するのと同じように、自然にお互いの事を知っていって、そして段階を経てそれぞれの信頼関係を築いていったのです。

「待たれた方も驚き!! 6時間待ちでW・キプサング選手に会った「スポーツインオラ」柳田さんの仕事術」の画像 男子マラソン元世界記録保持者のキプサング選手(右)と現世界記録保持者のキメット選手(中央)と

「待たれた方も驚き!! 6時間待ちでW・キプサング選手に会った「スポーツインオラ」柳田さんの仕事術」の画像 2016年2月東京マラソン・後にリオオリンピック男子マラソン金メダリストとなるキプチョゲ選手と

–彼らと信頼関係を築いていくうえで、なにかエピソードはありますか。

初めてウィルソン・キプサング選手と会う約束をしていた日に、約束の時間のかなり前に集合場所に行きました。
その後、集合時間になっても彼は現れず、待つ事数時間。。。
それでも、彼は現れず。

普通はそこで、諦めますが…インドで培った忍耐力で耐え抜き…6時間ほど待って、ようやく彼が現れたのです。

僕もビックリしましたけど、彼も相当ビックリしてました。
普通、6時間も経っていたらそこにいないだろ(笑)って。
それで彼らに認められて、気に入られたのかも知れません。

「待たれた方も驚き!! 6時間待ちでW・キプサング選手に会った「スポーツインオラ」柳田さんの仕事術」の画像 2016年3月世界ハーフマラソン選手権・リオでも2冠を達成したイギリスのモハメド・ファラー選手と

スポーツインオラから金メダリストを。

「待たれた方も驚き!! 6時間待ちでW・キプサング選手に会った「スポーツインオラ」柳田さんの仕事術」の画像SPORTS INN HOLA・スポーツインオラ

–特に夏の合宿シーズンは、スポーツインオラも大変賑わいます。ゼネラルマネージャーとして大変な毎日ですね。

「待たれた方も驚き!! 6時間待ちでW・キプサング選手に会った「スポーツインオラ」柳田さんの仕事術」の画像早朝のトレーニングも日課。柳田式メソッドでベルリンマラソンでの快走を狙う

はい。私も9月末のベルリンマラソンに出場するので、今は朝に集中的に走っています。
というか、朝にしか走れません(笑)。

たくさんの方を受け入れますし、食事・配膳の準備もしますので、限られた時間で自分が練習するのは早朝だけです。
睡眠時間が少ないのですが、、もう慣れました(笑)。

–ご自身のランニングにも目標があると思いますが、今後の柳田さんの抱負をお聞かせください。

この御嶽を、高校生、大学生、実業団選手、市民ランナーに限らず、強くなりたい、速くなりたいと願う世界中のアスリートが集う「キャンプ」にします。

練習方法は千差万別です。
それぞれが話し合い「今日は君の練習をやってみよう、明日は君ね」というように、ここに来れば毎日が刺激的で、切磋琢磨して強く逞しくなっていく生活を過ごせる環境を作りたいです。
もう既にある程度のプランは固まっているので、ここからは2020年の東京オリンピックをターゲットにし、戦略をシャープにしていく段階に入ります。

世界中がアッと驚くような仕掛けをしていきますので、皆さん楽しみにしていてください。
そして、スポーツインオラからオリンピック金メダリスト輩出します。

プロフィール

「待たれた方も驚き!! 6時間待ちでW・キプサング選手に会った「スポーツインオラ」柳田さんの仕事術」の画像 柳田 主税 (やなだ ちから)
1984年6月13日生まれ、徳島県出身。スポーツインオラ・ゼネラルマネージャー
同志社大学を卒業後、カゴメ株式会社へ入社。社会人からランニングを始め初マラソンでサブ3達成。2012年、28歳で海外転勤。アメリカ、中国、インドネシアで駐在、その後インド事業を2年間統括。英語、ドイツ語、ヒンディー語も堪能。インド駐在中に世界のマラソン大会に参加。2015年帰国。同年12月カゴメ株式会社を退社。御嶽の宿泊施設“スポーツインオラ”のゼネラルマネージャーに就任。2020年東京オリンピックに向けて御嶽のPRを積極的に展開、国内外のランナーの誘致を行っている。好きなすしネタは“ちらし寿司”。

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