「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン」出場のため、ヤマケンが酒・コーヒーをやめた理由

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総距離170km、獲得標高10000mのコースを46時間30分以内に走り抜けるウルトラトレイル・デュ・モンブラン(UTMB)※数字は2016年度。ヨーロッパアルプスの最高峰・モンブランを取り巻く、スイス、フランス、イタリアの山岳路を走るUTMBは、世界中のトレイルランナーの憧れのレースです。

2003年に始まった同レース。フランスのポレッティ夫妻らが創設し、第一回大会のエントリーは711人となりました。しかし、あまりに難しいレースのためゴールしたのは、たったの67人。それが話題となったのか、翌年度からエントリーが殺到するように。日本からも数多くのランナーが参加しています。

そんな中、2009年の初参戦時に8位入賞し、2010年にも10位に入賞したのが、山本健一選手。ヤマケンと呼ばれ親しまれている同選手は、1979年生まれの高校教師。そんなヤマケンが初めてUTMBに参加した頃のことを自著『トレイルランナー ヤマケンは笑う』でふり返っています。

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こういった大レースを前にすると、多くの選手がトレーニングを強化したり、コンディション調整に注意し、特別な準備を始めるもの。

しかし、ヤマケンの場合は少し変わっていて、特別なトレーニングを行うことはせずに、酒を断つことを選びました。そもそも自身の結婚式でビールを50杯も飲んだほどの酒好きだったにも関わらず酒断ち。その後、カフェインもやめることを決意。酒もお茶もコーヒーも無い生活を始めるのです。

なぜ、ヤマケンはこれらを断ったのでしょうか。もちろん内臓への負担を減らすという好影響がありますが、それよりも関心があったのは、「脳や心のコントロール」。

「ビールが飲みたいという欲に引っ張られないようにして、アドレナリンのような脳内物質さえコントロールできれば、より気持ちよく走れるのではないか? そして、もっと純度の高い気持ちよさも味わえるのではないか? はっきりとした実証データがあるわけではないけれど、100マイルを走るために僕が準備したのは、そんな心や脳の扱いだった」と、同書でふり返っています。

170kmも走り、そして入賞するほどの選手です。彼らにとってトレーニングやコンディション調整は当たり前すぎるもの。「肉体よりも先に精神が悲鳴をあげる」と言われる過酷なレースに挑む選手だからこそ、ネクストステージに進むために「脳や心のコントロール」は欠かせなかったのではないでしょうか。自分に勝った自信があるからこそ、本番のレースであともう少しふんばれる。紙一重のところなんでしょうが、このレースを制するためには必要な準備だったのです。

アルコールやカフェインの他にも、白砂糖もやめたというヤマケン。中毒性の高さでは前出のものをしのぐこともある白砂糖をやめることで、どのような変化が起こるのか試していると同書で語られています。

「自分自身に必要かどうか、心の底から判断できるかどうか。目的を明確に持ってそのための判断をすること。決めることさえできれば、次のステップへ進むことができる。それが僕の人生の哲学になっているのかもしれない」(同書より)

レース中は、判断の連続となるUTMB。この場で戦うには、やはり精神の強さが不可欠のようです。今年度のUTMBも8月にフランス・シャモニーで開催されそうです。

 

UTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)開催のシャモニーはどんな街?

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