強制させない……“女子トップ選手”にパパが教えたこと

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前編に引き続き、過去2度の日本代表歴を誇るトライアスリート・藤本泰男さんのインタビューです。後編では、東京マラソン女子日本人トップに輝いた次女の彩夏さんを含め、3人の娘さんをランナーに育て上げた〝子育て論〟を中心に話は進んでいきます。

【前編はこちらから】

毎回恒例、高校卒業記念の「おきなわマラソン」

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――ちなみにお子さんは3姉妹と伺ったのですが、皆さん走られているのでしょうか?

藤本さん えぇ、長女(21歳)は社会人ですが、市民ランナーとして楽しく走っています。高校生までは陸上部に所属していまして、今でも私と一緒にジョギングしているんですよ。成人している娘と一緒に走っている人なんてなかなかいないと思いますけど、やはり父親としてはうれしいですよね。

彩夏が次女(19歳)で、一番下の三女(17歳)は高校生です。今は市立船橋高校(千葉)で新チームのキャプテンを任されています。中学の時は全国大会にも出ていますし、持っている能力は次女より高いかもしれません。でも一番努力家なのは次女ですね。陸上に懸ける思いが人一倍強い。少しでもこの気持ちがあれば、三女の方が伸びるかなと思っているんですけどね……。今度3年生になるので、非常に楽しみです。

――何でも、高校卒業記念で毎回「おきなわマラソン」に親子で出場されているとお聞きしたのですが……

藤本さん そうですね、長女の時は「おきなわマラソンの高校生の部で上位に入ろうよ!」って言って、直前に30㎞走なんかを一緒にやったりしていましたね。確か4時間25分くらいだったかな? レース中は一緒にアドバイスをしながら走り、高校生女子の部で優勝させました。2年後、次女は同じ大会を2時間47分ですからね。とてもじゃないですけど、ついていけませんでした(笑)。次女の時は「一般の部」で出場させて、実業団選手が出ていた中での優勝です。おきなわマラソンってすごくアップダウンがきついんですよ。ここを3時間切れたらすごいなぁと思っていたら、予想を遥かに上回ってくれました。

――また来年もおきなわマラソンに出場することになりますね

藤本さん 三女が高校卒業ですからね。高校生の部だと一番後ろからのスタートになるので、おそらく下の子も一般の部で出場を考えています。3時間は切ってくれるといいかな。

「走る=楽しい」を、親が自然と見せてあげることが大事

「強制させない……“女子トップ選手”にパパが教えたこと」の画像 地元の陸上クラブに所属していた小学生時代の次女・彩夏さん(写真提供=藤本泰男さん)

――3人ともお父さんと同じく陸上をはじめ、ランナーとして活躍されています。これはなかなか珍しいケースだと思うのですが、父親としてどのような教育をされてきたのでしょうか。

藤本さん 他の家庭事情を聞いても、親が子どもに「やろうよ」って話しても、みんな拒否されるそうです。「走るだけなんておもしろくない!」って(笑)。うちの場合は3人とも陸上を始めましたが、こちらから「やれ」と言った覚えはないんです。でも小さい頃から大会に連れて行ったり、家の近くを一緒にジョギングしたりしていたんです。

次女が小学校5年生の時に陸上クラブに入ったので、多分それが良かったのでしょうね。そこで友達との仲間意識も芽生えて、その中で速くなっていきたいという気持ちが出たんだと思います。ちなみに三女も次女を追ってそこのクラブに入りました。

長女の場合は中学から陸上部に入ったのですが、これに関しても私は何も関与していないんです。「陸上部がいいんじゃない?」とは言ったかもしれませんが(笑)。

――強制させなかったこと、自分が走る姿を見せたことが良かったのでしょうか?

藤本さん 強制させても聞かない子は聞かないですからね。反発すると思いますよ。でも確かに、私はマラソンとかトライアスロンの大会に娘たちを連れて行っていましたね。入賞すると表彰台に上がれるので、子どもたちと一緒に写真を撮ったりしていました。

「強制させない……“女子トップ選手”にパパが教えたこと」の画像 3人の娘さんと一緒に表彰台へ上がる藤本さん(写真提供=藤本泰男さん)

そういう仲間と和気あいあいと楽しむ姿を見せてきたので、子どもながらに「走る=楽しい」と思ってくれたんでしょうね。だからなのか、うちの子たちは今でもチームのイベントや集まりがあると普通に来てくれるんですよ。次女と三女はいまだ現役陸上選手ですし、長女は社会人になっても私と一緒に走ってくれます。私が自然と走る楽しさを、子どもたちに見せていたのが大きいのかなとは思いますね。

もう一度ハワイへ! 再びアイアンマンで世界に行くのが目標

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――では最後に、藤本さんの今後の目標を教えてください!

藤本さん トライアスロンでの目標は、一昨年ハワイ(アイアンマン世界選手権)を狙ってあと一歩(年代別4位までが世界選手権代表内定だったが、惜しくも5位)だったので、今年はどこかの大会で狙いに行こうとは思っています。日本では選考レースが行われていないので、海外のどのレースに出るか今から考えています。

家族のことでいうと、次女は順調に練習を積んでいますから、ケガの無いように走ってもらいたいです。あとは三女が今年で高校最終学年なので、駅伝で千葉県代表として全国に行ってもらいたいですね! ぜひキャプテンとしてチームを引っ張ってもらいたいです。

――陸上選手としての活躍が期待される娘さんと、トライアスロンで世界を目指すお父さん。すばらしいご家族ですね! 今後のご活躍を期待しております!

【撮影=佐藤主祥】

プロフィール

藤本 泰男(ふじもと やすお)

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1965年生まれ、福岡県出身。52歳にして現役バリバリのトライアスリート。26歳で競技を開始し、わずか5年で年代別日本代表へ昇りつめる。96年に「アイアンマン世界選手権」、98年には「世界ロングディスタンストライアスロン選手権」に出場した。現在は成田市体育協会自転車競技連盟「インバスター」、トライアスロンチーム「千葉ブレイブ安藤塾」に所属。練習会にて後進の指導にもあたっている。父親として3人の娘をランナーに育て上げ、次女の彩夏さんは今年2月の東京マラソンで日本人トップの2時間27分08秒(4位)をマークした。

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