初マラソンを「3時間48分」で走り抜けた川内優輝選手の母・美加さん

ランナーの皆さんにはおなじみの川内優輝選手。
先日の福岡国際マラソンでは、怪我を抱えながらも執念の走りを見せて、日本人首位の3位でゴールし、2時間9分台の10回目のサブテンを達成。
「公務員ランナー」としても注目を集め、数々の大会で結果を残してきた川内選手の原点とその素顔に迫るべく、川内選手の母、川内美加さんにお話を伺いました。

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ご自身もマラソンに参加している川内美加さん

–本日はよろしくお願いします。美加(みか)さんご自身もマラソンに挑戦されているようですね?

そうですね、実際は「走らされている」という感じです・・(笑)。
健康のために走ることはいいんですが、自分からレースに出ようとは思っていませんでした。でも、息子たちに“勝手に”フルマラソンに申し込まれてしまうので、大会にも参加しています。

–え!フルマラソンを勝手に申し込むってとんでもないですね(笑)それでも、初マラソン(ゴールドコーストマラソン)のタイムが3時間48分というのは驚きです。

ありがとうございます。
中学・高校のときには800Mや1,500Mを走っていましたが、そんな長い距離は走ったことがなかったので、嫌で嫌で仕方がなかったのですが、やってみたらやれるものなんだなと思いました。

–普段からトレーニングをされているんですか

そうですね、やっぱり大会に勝手に申し込まれてしまうので。
大会がなければ三日坊主で終わってしまうと思うのですが、大会が入っていて日にちが迫ってくると練習しなきゃという気持ちになります。ただ、最初のころは昼間走るのが恥ずかしかったので、夜にこっそり走っていました(笑)。

絶対にレースを欠場しない川内優輝選手

–福岡国際マラソンで優輝選手がサブ10を達成して号泣していたというニュースが取り上げられていましたが、お母様の美加さんから見ていかがでしたでしょうか?

やっぱり、ホッとして涙が出てしまったと言っていましたね。
実際、家族としては怪我をしている状態でスタートラインに立つのはどうなのかなと思いましたし、本人の中ではこれが最後の代表選考レースになるという気持ちがあったので、ここは欠場して東京などの他のレースに臨んだほうが良いんじゃないかと散々言いました。ただ、本人が今までに一度もレースを欠場したことがなくて。

–それは凄い!足を引きずってでも走っていますよね。

はい、なので今までどんな状況でも走ってきたということもあって、これが最後の代表選考のレースとなるとしても、ここで欠場という決断ができなかったみたいですね。

–その「欠場しない」というのは美加さんの教えですか?

いえいえ、私の教えとかでは全くないです(笑)
本人が、百戦錬磨じゃないですけれど、どんな状態でもレースに出てきたので、この一回でそれを壊したくなかったというのがあるんだと思います。
代表を目指すのはこれが最後と言ってはいますが、走るのをやめるということではないので、今回欠場したことがこれからも影響してしまうことを恐れていたのではないかと思います。

川内選手の幼少時代

–優輝選手は小さいころから走ることが好きだったのでしょうか?

本人がランニングを始めた小学生のときには、そんなに好きじゃなかったみたいですね。
そのころは嫌々やっていた、やらされていた感じが強かったです。ただ、中学生に上がるとだんだんと走る楽しさを覚えたみたいで。
そこから高校で挫折などがあってまた走ることが楽しくなくなって、大学に入ってからまた楽しくなって、というように波を乗り越えてきて、現在は自分が好きだから走っているみたい。
誰から言われて走るのではなく、自分で選んで走っているということですね。

–そういえば、NEWSポストセブンの記事で川内鴻輝さん(川内家の三男)が「母が課す練習は、もはや一種の“虐待”でした(苦笑い)。それを最も忠実にこなしたのが長兄の優輝でした。小学1年生の頃から、毎日1500mなどの『タイムトライアル』がある。自己記録更新ができないと罰ゲームでもう1本。2本目以降は別の設定タイムを切るまで繰り返し、そのうちゴールに母親がいなくなる。自宅までの道のり約5kmを走って帰ってこいということです。“巨人の星、陸上版”でした(笑い)」とコメントをされていましたが、これは本当ですか?(笑)

毎回ではないですが、練習メニューができなかった場合には「置いてきぼり」を確かにしたんですけれども(笑)、特に長男(優輝さん)は、設定したタイムをこなせなかったということほとんどなくて、一番できていたと思います。覚えている中では小学校の6年間の中で2,3回くらいしか「置いてきぼり」はなかったんじゃないかな。
下の子たちは要領を覚えて、毎日1秒ずつタイムを更新するような形で上手くこなしてましたが、長男は言われたメニューを黙々とこなすタイプでした。

–優輝選手がどのレースでも大崩れせずに走れているのは、この時の経験が土台になっているんですね。

練習中の川内選手とは?

 

「初マラソンを「3時間48分」で走り抜けた川内優輝選手の母・美加さん」の画像

–大変な練習をされていたようですが、そもそも優輝さんはなぜ走り始めたのですか?

地域の「ちびっこ健康マラソン」に参加させてみたんです。練習もしていない中で5位に入ったので、「これだったら練習すればもっと良いタイムや順位を出せるのかな」と思って練習をさせはじめたのがはじまりです。

–その時に勝手に大会に申し込んだから、今は逆にお母さんが走らされているんですね!(笑)

その時はまさか仕返しにあうとは思いませんでしたが、自分たちも勝手に申し込まれたんだから、ということみたいです。ひどい息子たちですよね(笑)
やらせてばっかりという印象が強いかもしれませんが、やっぱり頑張るにはご褒美も必要だと思ったので、ベストを更新したときにはそのときに食べたいものや飲みたいものを買ってあげたりしましたよ。決して罰ゲームだけではなかったんです(笑)

–優輝さんはいつもカレーを食べている印象が強いですが、やっぱり当時からご褒美はカレーだったんですか?

実はカレーライスは特に好物というわけではないんですよね。同期の高橋和也選手の勝負メシがカレーだったということで、息子も真似してレースの前にカレーを食べたらなんだか良かったらしくて。それからずっとレース前はカレーですね。
ちなみに好きなのはお肉でした。

–え!カレーが好きってことじゃなかったんですか!!

もちろん嫌いなわけではないですが、特に大好物というわけではなかったですね。
インドカレーのようなものではなく、野菜とかお肉がたくさん入っているカレーのほうが好きみたいです。だから海外のレースの時は日本からレトルトのカレーを持っていっています。
でも、今回の福岡国際では、レース前夜に必ず行くカレー屋さんがなくなっていたみたいです(笑)

–怪我を抱えて、しかも前日のカレーも食べられないという状況の中で、サブテンって改めてすごいです・・・。

川内選手の強さの秘密に迫る

–優輝さんがレースの時に行っていることはありますか?

まめにデータを取っていますね。
それも自分自身のことだけではなくて、他の選手のこともかなり調べています。例えば他の選手を見て「今日は身体が絞れているからいけるだろう」なんてことはわかるみたいですね。

–優輝さんは昔からそういう性格だったのでしょうか?

走っているうちにどんどん身についていったんじゃないかなと思いますね。
これまでの練習の中で改善を繰り返して、いい部分だけを積み重ねてきているみたいです。だから指導者についてもらわなくても良いのだと本人も言っています。

–自分で考えてやるんですね。

はい、自分の良いところ・悪いところを見ながら、全員にとって適切なトレーニングではなくて、自分にあったトレーニングを考えてやっています。そういうのを考えるのが好きみたいなんですよね。

–ちなみに優輝さんは陸上以外に好きなことはありますか?

そうですね・・・、あるんですかね・・・(笑)。
最近は仕事に行くか走っているかばっかり。あ、でも旅行は好きなので、色んなところでレースに出ることで旅行をする楽しみはあるみたいです。

–おお!まさに「ラントリップ」!(笑)

レースの前はできないのですが、レースが終わった後はご褒美として時間を見つけて観光に行っているみたいです。
温泉に入ったりとか、それが一番の楽しみになっているようですね。

おわりに

–優輝さんのこれからのオリンピック代表選考が気になるところです

はい、本人は代表選考を目指すのは今年が最後と宣言していますが、走るのが好きなのできっといつまでも走り続けると思います。
怪我をしてしまわないか心配はありますが、やっぱり家族としては応援していきたいですね。

–ぜひ代表入りに期待したいですね!本日はどうもありがとうございました。

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